介護ロボットにはどんな種類がある?導入する方法や利用実態も解説

介護事業所・施設の人手不足解消や、介護職員の肉体的、精神的な負担を軽減させるためにも、介護ロボットを導入する事業所・施設は増えています。 また、近年はロボット技術が着々と進化しており、さまざまな介護ロボットが開発されています。今後は、介護ロボットがますます普及していくでしょう。 そこで今回は、介護ロボットの概要や種類、役立つ場面を解説します。あわせて、導入に至るまでのプロセスも紹介するので、ぜひ参考にしてください。


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介護ロボットとはどんなロボット?

まずは「ロボット」の定義を解説します。厚生労働省では、3つの要素技術をもつ機械システムを「ロボット」としています。

・情報を感知する(センサー系)

・判断する(知能・制御系)

・動作する(駆動系)

介護ロボットは、3つの技術を活用し、要介護者の自立支援や介護者の負担軽減を目的に開発されたロボットのことを指します。

今後も介護ロボットの開発は積極的に進められるでしょう。2008年に厚生労働省が提言した「安心と希望の介護ビジョン」でも研究開発を推進することが提言されています。

出典:「介護ロボットの開発・普及の促進」(厚生労働省)

出典:「安心と希望の介護ビジョン」(厚生労働省

介護ロボットがなぜ必要とされているのか

介護ロボットが必要とされている理由として、介護職員の人手不足が挙げられます

国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」では、日本の総人口は減少過程に入ると推計されています。また、同調査では2025年から人口の多い団塊世代が75歳以上になると見込まれているため、後期高齢者人口が急増します。

後期高齢者人口が増える一方で、労働人口は減少していくため、介護職員の数が不足すると予想されています。このような背景から、今後訪れる労働人口の減少に備えて介護ロボットの導入を検討している事業所・施設は少なくありません。

6つの重点分野における介護ロボットの種類

介護ロボットは、介護職員の負担が大きい6つの分野と13の項目を「重点分野」として、開発・実用化されています。

分野1移乗支援

分野2移動支援

分野3排泄支援

分野4見守り・コミュニケーション

分野5入浴支援

分野6介護業務支援

この項目では、各分野と項目に合わせた、介護支援ロボットを紹介します。

1.移乗支援の介護ロボット

介護者にとって負担が大きい車いすやベッドへの移乗を支援するための介護ロボットです。移乗を支援するために用いられる介護ロボットには、「装着型」「非装着型」の2種類があります。

装着型

「装着型」は、介護者が自分の体に装着し、力を増幅させて移乗の負担を軽減するパワーアシスト型の介護ロボットです。自動で補助を行うモーター式、水場でも使用可能な空気圧式があります。

非装着型

「非装着型」は、ベッドや車いすなどに機器を取り付けることで、移乗の負担を軽減する介護ロボットです。マットレスの一部を車いすとして使用する、シーツごと抱え上げるなど、さまざまなタイプがあります。

2.移動支援の介護ロボット

要介護者が立ったり歩いたり、座ったりする動作を補助する介護ロボットです。移動を支援するための介護ロボットには「屋内型」「屋外型」「装着型」の3種類があります。

屋内型

「屋内型」は要介護者がトイレに行くなど、屋内での立ち座りや歩行を支援する介護ロボットです。トイレ内で姿勢を保つのにも役立ちます。

屋外型

「屋外型」は、要介護者の外出をサポートする介護ロボットです。上り坂では推進、下り坂ではブレーキをかけるなどの機能があります。また、屋外に放置しても壊れないよう防水対策が施されているロボットも開発されています。

装着型

「装着型」は要介護者が自分の体に取り付けることで、歩行をサポートしたり転倒を防止したりする機能をもつ介護ロボットです。要介護者の外出をサポートし、自立した活動ができるよう支援できます。

3.排泄支援の介護ロボット

介護業務のなかでも介護者の負担が大きい、排泄処理を支援する介護ロボットです。排泄処理を支援する介護ロボットには「排泄物処理」「排泄予測」「動作支援」の3種類があります。

排泄物処理

「排泄物処理」は、排泄物を検知して自動で処理を行う介護ロボットです。自力でトイレに行けない要介護者を対象としています。

排泄予測

「排泄予測」は、排泄のタイミングを予測し、トイレに誘導する機能をもつ介護ロボットです。オムツを着用せずに生活するのに役立ちます。

動作支援

「動作支援」は、トイレでの衣類の着脱や立ち座りなどの動作をサポートする介護ロボットです。要介護者が1人、あるいは介護者が1人立ち会うことで使用できるため、双方の負担を軽減するのに役立ちます。

4.見守り・コミュニケーションの介護ロボット

センサーや外部通信機能を利用して、要介護者の変化を察知する介護ロボットです。介護ロボットには「施設型」「在宅型」「生活支援型」の3種類があります。

施設型

「施設型」は介護施設に設置される見守り・コミュニケーションロボットです。赤外線カメラで夜間の要介護者の様子を確認するなど、介護職員の負担軽減に役立ちます。

在宅型

「在宅型」は、在宅介護にて使われる見守り・コミュニケーションロボットです。転倒検知センサーなどの機能があり、在宅介護を受ける要介護者を支援します。

生活支援型

「生活支援型」は、要介護者とのコミュニケーションをサポートする見守り・コミュニケーションロボットです。要介護者の様子を検知し、異変が見られた場合はアラートで通知します。

5.入浴支援の介護ロボット

要介護者の入浴を支援する介護ロボットです。浴槽に出入りする際の動作をサポートできるため、転倒などのリスク防止につながります。

6.介護業務支援の介護ロボット

「介護業務支援ロボット」は、介護業務に必要な情報の収集・管理・分析ができる介護ロボットです。業務内容をわかりやすく、かつ手軽に共有できるため、介護業務の見直しや改善に役立ちます。

介護ロボットの導入プロセスは?

それでは実際に介護ロボットを導入するまでのプロセスを解説します。

1.体制を整える

まずは事業所・施設内の体制を整えましょう。担当者を決めてプロジェクトチームを結成します。

次に事業所・施設における課題を洗い出します。介護職員にヒアリングするなどして現状の課題を明確にしましょう。ただし、日々忙しい状態で勤めていると、「あたりまえ」という考えが根付いている場合があります。

正確な課題を特定するためにも、プロジェクトチームは、ヒアリング内容を踏まえて、議論することがおすすめです。

2.ロボットの種類を選ぶ

事業所・施設内の体制が整ったら、洗い出された課題が解決できるロボットは何かを考えましょう

介護ロボットの導入にはコストがかかるので、補助金の対象になるかチェックしておくことも大切です。

下記の記事では、介護ロボット導入における補助金をいくつか紹介していますので、こちらも参考ください。

介護ロボット導入に活用できる補助金がある!国の支援策を徹底解説

3.導入計画を立てる

介護ロボットの導入計画を立てましょう介護ロボットの導入のために、業務が滞らないようにすることが大切です。忙しい曜日や時間帯を避けたうえで、導入日程や設置場所を決定しましょう。

4.使用しながら改善していく

介護ロボットの導入が完了したら、介護職員同士で情報共有し、問題がないかを確認しましょう。マニュアルを作成する、効率的な使い方を共有するなど、常に改善を図っていくことが重要です。

介護ロボット導入の現状と課題は?

介護の負担を軽減できる介護ロボットですが、実際に介護の現場でどこまで活用されているのでしょうか。ここでは、介護ロボット導入の現状と課題について解説します。

介護ロボット導入の現状

介護ロボットは厚生労働省と経済産業省によって、導入・活用が支援されている技術です。多くの分野で活用できるロボットの研究開発も進められており、補助金制度も用意されています。

しかし、2021年度時点の「事業所における介護労働実態調査結果報告書」を見ると、介護ロボットを導入していない事業所・施設が80.6%と、導入が進んでいないことがわかります。

出典:事業所における介護労働実態調査結果報告書」(介護労働安定センター

介護ロボット導入の課題

介護ロボットの導入が進まない理由として、導入コストの高さが挙げられます介護の負担が軽減できるとわかっていても、高額な費用がかかるとなると、なかなか導入に踏み切れない現場も多いでしょう。

また、ロボットの扱いに慣れておらず使いこなせない、介護をロボットに任せることに不安を感じるという介護職員がいることも、導入が進まない原因となっています。

とはいえ、介護ロボットは国を挙げて推進されているため、今後これらの課題が解消できる施策が検討されていくことでしょう。

まとめ

介護ロボットは、現状ではコストの高さやマイナス意識、導入後の手間もあり、普及が進んでいるとは言えません。

ただ、限定的ではありますが、技術の革新とともに、人手不足の解消や生産性の向上に寄与する介護ロボットも着実に開発されてきています。

そこで大切になるのは、活用できるロボットがあるかどうかをしっかりと見極めることです。

今後、益々活用できるロボットが増えてくることに期待を持ち、常々検討する意識を持っておくと良いでしょう。