介護職において人事考課が重要な4つの理由
介護職において人事評価が重要な理由は主に4つあります。
・離職率が低下する
・コミュニケーションが取れる
・キャリア形成をサポートできる
・教育側にも責任が生まれる
それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。
離職率が低下する
正しく人事評価を行えば介護職員のモチベーションアップにつながり、離職率が低下します。頑張っているのに評価されないと介護職員は不満を感じ、退職してしまいます。介護業界は慢性的な人手不足が続いており、どの職場も労働力を求めています。自分を正しく評価し、昇給・昇進の機会を与えてくれる職場に長くいようと考えるのは自然なことです。
人事考課制度を導入して、公平・公正に評価する仕組みができれば介護職員の定着率を高められます。少なくとも「仕事の頑張りが評価されない」ことを理由に退職される可能性は減るでしょう。
コミュニケーションを取れる
人事評価がコミュニケーションの活性化につながることもポイントです。介護職員はシフト勤務であるケースが多く、上長と顔を合わせる機会が少ないメンバーもいます。
人事考課制度を導入すれば「具体的な目標は何か」「目標がどこまで進んだか」を上長などと話して決める必要があり、必然的にコミュニケーションが生まれるのです。
コミュニケーションを取る機会が増えると、信頼関係の構築につながり、報連相もスムーズになります。その結果、仕事のミスが減り、組織全体の一体感が強くなる効果も期待できます。
特に介護職はその特性から、ひとつの仕事のミスが利用者・入居者の命に直結する可能性もあります。コミュニケーションが増えて、仕事のミスが少なくなるのは大きなメリットといえるでしょう。
キャリア形成をサポートできる
人事考課は目標の内容や進捗だけを共有するのではありません。どうすれば目標を達成できるのかも話し合います。そして現時点での目標だけではなく、将来的な目標も共有します。
例えば、昇進して管理職になりたいと考えている介護職員がいれば、面談の際に管理職になるためにはどのようなキャリアを積めばいいのかアドバイスできます。
今の仕事が目標達成のためのキャリア形成につながっていると実感すれば、日々の充実感につながるでしょう。
教育側にも責任が生まれる
介護職員を教育する側にも、正しく評価しなくてはいけないという責任が生まれます。そして評価する側として、ふさわしい立ち振る舞いをしなくてはと思うようになります。
介護職員の模範になろうと努力しようとすることで、より仕事の質が高まり、組織全体のミスが減ることも期待できます。人事考課は、若い介護職員はもちろん、ベテラン層にもメリットをもたらします。
介護職の人事考課に取り入れるべき基準
介護職の人事考課には取り入れるべき基準があります。それぞれの詳しい内容について確認していきましょう。
評価制度
まずはどのように従業員を評価するか基準を決めましょう。おすすめは加点方式で従業員を評価していく方法です。
反対に減点主義で評価していく方法もありますが、推奨はできません。低い評価しかされないのであれば、他の職場で働こうと考えるようになるからです。
加点方式では、以下の3要素に対して「できている」と評価すれば加点をします。
要素1:行動
(例)目標を達成するためにチャレンジできているか、上司の指示を守れているか
要素2:役割
(例)目の前の仕事をしっかりと遂行できているか、上司として部下の意識を向上させられているか
要素3:能力
(例)現場で必要なスキル・知識があるか、状況に応じて臨機応変な対応ができているか
各要素については、達成レベルを明確にしておくことが重要です。
ランク制度
ランク制度は介護職員を等級や役職で区分する制度のことです。ただ評価を受けるだけでは、介護職員のモチベーションは上がりません。評価が良ければ重要な役職を与えるなどして、より熱意をもって働ける環境を作ることが大切です。
以下は、介護施設における等級・役職の一例です。
等級 | 役職 | 職能レベル | 所有資格・知識 |
4 | 管理者 | 介護施設に関する運営管理全般ができる | 経営知識 |
3 | サービス提供責任者 | ・介護職員のシフトを組むことができる
・介護職員の指導、管理ができる ・高度なケアにも対応できる |
介護福祉士 |
2 | – | ・必要なケアの全てをこなすことができる | 介護福祉実務者研修 |
賃金制度
人事考課と賃金制度を直結させると、介護職員のモチベーションアップにつながります。先ほどご紹介したランク制度と組み合わせて、2等級から3等級に上がれば+月3,000円、3等級から4等級に上がれば+月5,000円など、昇給額を決める方法が考えられます。
評価と昇給が結びついていると、介護職員が前向きに目標を立てやすくなるでしょう。
人事考課制度を導入する際に大切な4つのポイント
人事考課制度の導入には、以下の4つのポイントが重要です。それぞれの詳細について確認していきましょう。
導入する目的を明確にする
人事考課制度を導入する目的を明確にしましょう。「離職率の低下」「従業員のモチベーションアップ」などが考えられます。
目的がなく、単に評価するだけだと途中で制度が機能しなくなる可能性があります。現在、事業運営の課題となっている部分を整理して、最適な導入目的を決めることが重要です。
経営層や管理職に対して理解を求める
人事考課制度の導入に際して、経営層や管理職にも理解を求める必要があります。逆にいえば経営層や管理職が人事考課を前向きにとらえていなければ、期待した効果が得られなくなってしまいます。
経営層や管理職は人事考課制度を導入しなくても、組織は問題なく機能すると考えているかもしれません。人事考課制度の必要性を説明し、理解してもらいましょう。
情報をスムーズに共有する
人事考課制度は評価をフィードバックしてこそ意味があります。上司や管理職だけが人事考課の内容を把握し、部下は評価の内容を知らないという状態では、組織の活性化を促すことにつながりません。
人事考課を行ったら、なるべく早めに結果や評価内容を共有しましょう。
もちろん、他人の評価については教えてはいけませんが、その介護職員のどの点が評価されたのか、どこを改善すればより高い評価を受けられるのかを詳しく説明しましょう。
公平性を保つ
評価基準は公平でなくてはいけません。特定の介護職員に肩入れして評価していると思われると、他の介護職員からの信頼が薄れ、人事考課制度が効果を発揮しません。結果として制度が形骸化するおそれがあります。
介護職員が不公平感を抱くような制度設計になっていないか、定期的に見直すことが重要です。
まとめ
介護職員の離職を防ぎ、モチベーションを高めるために人事考課制度の導入は欠かせません。介護職員は自らの頑張りを正しく評価されることを望んでいます。
仕事の頑張りが認められない職場で、長く働いてくれることはありません。本記事を参考に人事考課制度を導入し、公正、公平な評価を心がけて組織の充実を図ってみてはいかがでしょうか。