人材確保等支援助成金とは?介護福祉機器助成コースの受給要件や申請方法を解説

人材確保に苦労している介護事業者は、国の人材確保等支援助成金を活用して働きやすい環境づくりを構築するのも方法のひとつです。今回は、人材確保等支援助成金の内容と介護事業者が利用できる主なコース、申請方法について解説していきます。


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人材確保等支援助成金とは

人材確保等支援助成金は、魅力ある職場づくりを実現するために労働環境の向上などに取り組む事業者または事業協同組合などを助成する事業です。魅力ある雇用創出によって、人材の確保や人材の定着を図ることを目的としています。

介護事業者が利用できる人材確保等支援助成金のコース

厚生労働省の人材確保等支援助成金は、2023年4月1日時点で9種類のコースが用意されています。なかでも、介護事業者が利用できるコースは以下のとおりです。

・雇用管理制度助成コース
・介護福祉機器助成コース
・中小企業団体助成コース
・人事評価改善等助成コース
・外国人労働者就労環境整備助成コース
・テレワークコース

ここでは、上記のコースの特徴や要件などについて簡単に説明します。

雇用管理制度助成コース

雇用管理制度の導入により、雇用管理改善や離職率低下に取り組む事業主を支援するコースです。受給要件である雇用管理制度として認められているものは、諸手当等制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主に限る)になります。

いずれかの制度の導入に関して計画書を作成して、導入や実施を行い、離職率低下の目標値に達した場合に57万円が支給されるコースです。

(※令和4年4月1日以降は整備計画の新規受付を休止中)

介護福祉機器助成コース

介護事業主向けのコースです。対象の介護福祉機器である、移動・昇降用リフト、装着型移乗介助機器、体位変換支援機器、特殊浴槽を導入して運用計画を作成し、適切な運用により離職率を低下させた場合に助成を受けられます。

介護事業所で働く労働者の身体的負担の軽減を目的としたコースで、助成額は導入費用(利子含む)の20%、上限150万円です。賃金要件を満たしている場合は助成率が35%まで上昇します。

受給要件 1.導入・運用計画の作成と労働局長の認定
2.対象の介護福祉機器の導入と適切な運用
3.離職率の低下
(一般保険者の人数による)
1~9人 15%(低下した離職率)
10~29人 10%
30~99人 7%
100~299人 5%
300人以上 3%
受給額 介護福祉機器導入費用・保守契約費・機器使用徹底のための研修費の20%(上限150万円)
※ただし賃金要件を満たす場合は35%

参考:人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)|厚生労働省

中小企業団体助成コース

雇用管理の改善計画を策定して認定を受け、実施計画を実行する中小企業団体を助成するコースです。構成中小企業者が、人材確保や人材の定着に取り組めるよう支援することを目的としています。

助成額は、労働環境向上事業に要した費用の3分の2です。団体の規模に応じて、小規模の場合は600万円、中規模の場合は800万円、大規模の場合は1,000万円の上限があります。

人事評価改善等助成コース

人事評価制度の整備により、生産性の向上や賃金アップを促進し、人材不足を解消する事業所を支援するコースです。

人事評価制度の整備のための計画の認定、人事評価制度の整備と実施、賃金アップ、離職率の低下を要件としています。目標達成による受給額は80万円です。

(※令和4年4月1日以降は整備計画の新規受付を休止中)

外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者に配慮し、職場定着のための就労環境の整備に取り組む事業者を支援するコースです。

外国人労働者を雇用していることはもちろん、雇用労働責任者の選任と社内規定の多言語化に加え、就労環境整備措置(苦情や相談体制、休暇制度の整備など)の実施、実施後の外国人労働者の離職率10%以下を要件としています。

受給額は、賃金要件を満たす場合は対象経費の3分の2(上限72万円)、賃金要件を満たしていない場合は対象経費の2分の1(上限57万円)です。

テレワークコース

良質なテレワーク制度の導入により、人材確保や雇用管理改善において効果を上げた中小企業者を支援するコースです。

対象経費は、就業規則等の作成・変更にかかる費用、外部専門家のコンサルティング料、テレワーク用通信機器の導入費用や運用費、労務管理担当者や労働者の研修費となっていましたが、年々範囲が拡大しています。

2021年12月21日以降はテレワーク用サービス利用料(Web会議のためのコミュニケーションサービス料など)、2023年4月1日以降はテレワーク用端末のレンタル・リース料も対象となりました。

受給額は、機器導入助成が1企業あたり経費の30%、離職率に関わる目標達成助成が1企業当たり経費の20%(賃金要件を満たすときは35%)です。いずれも、1企業あたり100万円または対象労働者1人あたり20万円のうち低い方が上限となります。

人材確保等支援助成金の申請方法

ここまで、人材確保等支援助成金のコースについて説明してきました。各コースで助成を受けるための要件や受給額などは異なりますが、受給を受けるまでの申請の流れは共通です。

基本的には、次のような流れで人材確保等支援助成金の申請を行います。

1.計画書を作成し、各都道府県労働局の職業安定部職業対策課に提出する
2.計画に沿って内容を実施する
3.目標達成できたことを確認する
4.支給申請書を各都道府県の労働局に提出する

申請書の提出後、審査が行われ、支給決定の判断が行われます。事業終了後の2ヶ月以内に助成金が支給されることが一般的です。なお、計画書の提出については期限が設けられていますので、事前に提出期限や申請期限について確認しておきましょう。

また、助成金の受給は、人材確保のための職場環境の整備にかかる経費の負担軽減に役立ちます。しかし、助成金の受給だけを目的とすると、整備が不十分なまま終わってしまう可能性があります。

助成金の活用はあくまでも長期的な人材確保のために活用できる施策のひとつとして捉え、事業終了後も継続して環境の整備を行っていくことが重要です。

まとめ

人材確保等支援助成金は、介護事業者の介護福祉機器の導入を支援するコースをはじめ、さまざまなコースが設けられています。人材確保や生産性向上のための取り組みを進めるにあたってうまく活用したい制度です。

人材確保等支援助成金の活用を検討するとともに、助成金活用後の取り組みにつながるように長期的な視野で整備を進めていきましょう。