介護ロボット導入に活用できる補助金がある!国の支援策を徹底解説

見守り型のロボットや移動支援型のロボット、介護業務支援型のロボットなど、介護に関連するロボット技術の開発が進んでいます。介護需要の拡大が見込まれる中、いかに介護職員の負担を減らしてコアな業務に注力ができるかが課題のひとつではないでしょうか。 介護ロボットの導入においては、事業所・施設の導入による負担を軽減するためにさまざまな制度が用意されています。今回は、介護ロボットに関連する補助金・助成金制度、金融支援、税制措置について見ていきましょう。


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介護ロボットの開発・導入を国が支援している

平成25年に閣議決定された、ロボット介護機器開発5ヵ年計画を含んだ「日本再興戦略」を含め、日本では、官民ともに生産性の向上が期待できる介護ロボットの研究開発や導入支援が進められています。

導入支援とは、介護ロボットの導入にかかるコストの負担軽減のために設けられた、助成金や補助金などの支援のことです。しかし、補助金を整備するなどして積極的な支援の準備を整えたものの、普及しているとはいえず、導入実績は多くありません。

このような現状を踏まえ、補助金や助成金制度の拡充のほか、介護ロボット普及に向けて、国は金融支援や税制措置も設けています。

出典:「ロボット介護機器開発5ヵ年計画について」(経済産業省・厚生労働省)

介護ロボットの導入支援として実施されている補助金・助成金

介護ロボットの導入支援となる、国の補助金や助成金を4つ取り上げます。

地域医療介護総合確保基金

地域医療介護総合確保基金は、消費税増収分等を活用して平成26年度から各都道府県に創設された財政支援の仕組みです。地域の実情に合わせた介護サービス体制の整備を支援する取り組みで、3つの事業に区分されます。

介護事業所に対する業務改善支援事業

生産性向上のためのコンサル経費や、地域のモデル施設育成に必要な経費の一部を補助する事業です。

介護ロボット導入支援事業

介護ロボット導入のための通信環境の整備も含め、介護業務の効率化や負担軽減になるものを対象に補助します。

ICT導入支援事業

記録や情報共有、勤怠管理などを一括管理できる介護ソフトを使用するための端末、Wi-Fi設置費などを対象に補助します。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

介護福祉機器導入によって、介護事業主が離職率の低下に取り組み、離職率の改善が実現された場合に受けられる助成金です。移動・昇降用リフト(立位補助器や非装着型移乗介助機器を含む)、装着型移乗介護機器、体位変換支援機器、特殊浴槽の4種類の介護福祉機器の導入が対象となります。

受給要件は、対象の機器を導入し、導入・運用計画の提出から1年間のうちに離職率が一定以上低下した場合です。達成目標となる離職率の低下率は、施設の雇用保険一般被保険者の人数で異なります。

助成額は、上限150万円で、利子を含む介護福祉機器の導入費や保守契約費、機器使用のための研修費のうち、20%(生産性要件を満たす場合は35%)です。

出典:「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」(厚生労働省)

業務改善助成金

中小企業者や小規模事業者の生産性向上を図りつつ、事業場での最低賃金を引き上げる取り組みを支援する助成金です。事業場規模が100人以下の場合で、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業場が対象となります。

受給にあたって、賃金引き上げ計画を策定して事業場の最低賃金の一定以上の引き上げを実行することのほか、生産性向上のための取り組み(機器や設備投資、教育訓練、コンサルティングなど)を実行しなければなりません。

助成金の対象は、介護ロボットの導入など生産性向上に資する取り組みにかかった費用の一部です。事業場内の最低賃金の額、最低賃金の引き上げ額、引き上げた労働者数によって助成率や上限額は変わります。

出典:「業務改善助成金について」(厚生労働省)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

2020年4月から中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されたことから設置された助成金です。時間外労働の削減、年次有給休暇等の取得の促進に向け、生産性向上などの環境整備に取り組む中小企業者を支援します。

支給対象となる取り組みは9つあり、労働能率を上げる設備や機器導入・更新なども対象です。助成額は成果目標の達成状況で決まり、対象経費の一部が助成されます。

出典:「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」(厚生労働省)

介護ロボット導入における金融支援

介護ロボット導入に利用できる金融支援を2つ取り上げます。

独立行政法人福祉医療機構の優遇融資

独立行政法人福祉医療機構では、介護ロボット導入による金融支援として、次のような優遇を行っています。

・介護施設等の介護ロボットやICT機器導入における無担保貸付
・無担保融資の上限額を300万円から3,000万円に引き上げ(平成29年度から)

介護ロボットの導入経費については、介護職員の負担軽減に寄与するものであることが融資の条件となります。

経営力向上計画の認定を受けた事業者向けの金融支援

介護ロボットの導入による業務負担の軽減について取り組むことを記載した、経営力向上計画を策定して厚生労働大臣の認定を受けた場合、以下に挙げる金融支援の対象となります。

日本政策金融公庫の低利融資

日本政策金融公庫は、長期固定金利で中小企業者に融資を行っていますが、経営力向上計画の認定を受けていると、基準利率よりも低金利の特別利率で融資を受けられます。

商工中金の低利融資

商工中金は、国や地方公共団体の施策に基づき独自の融資制度を設けており、経営力向上計画の認定で低金利により融資を受けられます。

信用保証協会による追加保証や保証枠の拡大

金融機関からの融資の際に、信用保証協会が債務保証する信用保証の制度があります。経営力向上計画の認定を受ければ、別枠設定による追加保証、限度額引き上げによる保証枠の拡大を図ることが可能です。

中小企業投資育成株式会社からの投資

中小企業投資育成株式会社とは、中小企業の自己資本の充実を促し健全に成長できるよう、中小企業への投資事業を目的とした株式会社をいいます。中小企業投資育成株式会社の通常の投資対象は資本金3億円以下の株式会社です。

ただし、経営力向上計画の認定を受けている場合は、資本金が3億円を超える中小の株式会社も投資を受けられます。

独立行政法人中小企業基盤整備機構の債務保証

経営力向上計画の認定を受ける場合、保障額最大25億円の債務保証を受けられます。一定以下の規模の中堅企業などが、経営力向上計画を実施する際に必要となる資金が対象となります。

介護ロボット導入支援のための税制措置

介護ロボット導入で利用できる2種類の税制措置を紹介します。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業(資本金1億円以下の法人など)や個人事業主のその年の法人税または所得税を軽減する税制措置です。令和3年の税制改正により、商業・サービス業・農林水産業活性化税制が中小企業投資促進税制に統合されました。

対象業種は幅広く、対象設備は、1台160万円以上の機械および装置、1台120万円以上の測定工具や検査工具、1つ70万円以上の一定のソフトウェア、などです。

個人事業主と資本金3,000万円以下の中小企業は、特別償却30%(通常の減価償却のほか取得価額の30%を減価償却費の限度額として上乗せできる)と税額控除7%(ただしその事業年度の税額20%相当が限度)のいずれかを選択できます。資本金3,000万円超の対象中小企業は特別償却30%のみ適用可能です。

経営力向上計画の認定を受けた事業者向けの税制措置

介護ロボットの導入による、業務負担の軽減について取り組むことを含んだ経営力向上計画を策定して厚生労働大臣の認定を受けた場合、以下に挙げる税制措置を受けられます。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制により、中小企業が生産性向上やデジタル化などに資する一定額以上の設備(機械装置、ソフトウェア、器具製品・工具、建物附属設備)を取得した場合の税制措置です。

即時償却(その事業年度に取得価額の全額を減価償却できる)、または、最大10%の税額控除(資本金3,000万円超の中小法人は7%)を受けられます。

固定資産税の特例

先端設備等導入計画に基づいて、一定額以上の設備を中小企業等が取得した場合に受けられる税制措置です。対象の資産について、3年に渡って市町村の定める固定資産税率(ゼロから2分の1の間)に負担が軽減されます。

まとめ

補助金をはじめ、介護ロボット導入にあたって活用できる金融支援や税制措置にはさまざまなものがあります。いずれも介護事業者の負担軽減や資金調達の円滑化につながるものなので、導入前に要件をよく確認しておくと良いでしょう。