介護施設の退職者が続出する前に知っておきたい5つの離職防止策

一部の介護施設では、職員が立て続けにやめていく状態が続いています。とくに中堅の介護職員が退社すると、モチベーションが低下した部下までもが次々に辞めていくおそれもあります。 この記事では介護職員が辞める主な理由を取り上げ、離職防止のための解決方法について紹介します。


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せっかく育ててもすぐ退職…介護施設の退職者が続出する理由5つ

夢を持って介護職に就いたのに、なぜ退職者が相次ぐのでしょうか。まずはよくある離職の理由をご紹介します。

職員同士の摩擦が起きがち

スタッフ間のコミュニケーションが適切にとれていないと、質の良い介護を提供することが難しくなります。たとえば、何かトラブルが発生した際に、責任逃れする職員が多くいる場合は要注意です。お互いのことを思いやれず、信頼関係が壊れている可能性もあります。

また、度重なる事故にはもちろん注意が必要ですが、トラブルに対して怒られるだけでは職員も委縮してしまいます。

本音を話せない現状に「現場のことを理解してくれない」「あんな上司のもとで働きたくない」と気持ちが離れ、やる気が削がれていくおそれもあります。

利用者・入居者のケアに負担を感じる

施設内での仕事は、日々の決まった業務に加えて利用者・入居者の状況に応じて刻々と対応が変わっていきます。迅速な対応が必要であるにも関わらず、思うように対応できないことも多々あれば、介護職員はそれを負担に感じてしまいがちです。

たとえば、介護職員の人数が少なく対応が遅れることや、看護師(看護師が常駐している施設の場合)との意思疎通がうまくいかず対応が遅れることも負担になります。

ケアプランの見直しができておらず対応できない、ご家族の意向を無理に容認したために現場での対応が難しいなど、施設全体で意思疎通が不十分なケースもあるかもしれません。スタッフへ無理のある指示をしていないかを上司はこまめにチェックし、介護職員の声に耳を傾けておく必要があります。

介護施設の方針と自分のビジョンが合わない

介護施設は、利用者・入居者とその家族にはなくてはならないものということもあり、介護職員は、「社会のために貢献したい」と高い志をもって仕事についている人が多いです。

介護施設は、母体となる企業や病院などが経営を意識しながら運営しているため、なかには、利益を追い求めて消耗品の使用制限を厳しく指示するような施設もあります。

介護職員は施設独自のルールに従いながらケアするため、苦痛に感じるケースもあるようです。

介護に希望を見出せない

介護施設の利用者・入居者は、生涯を施設で過ごすという方も少なくありません。介護職員は最期の日に接触する機会も多いでしょう。とくに新人の介護職員は立ち直るのに時間がかかってしまうケースも見られます。

給料に不満がある

給料が上がらないことに不満を抱いている職員は少なくありません。仕事に充実感があっても、生活していくためのお金が不十分であると、モチベーションが上がらないでしょう。

自分のいる職場の給料が今後も伸びる可能性がないと感じた場合、やる気を失う介護職員もいます。

介護職員のモチベーションが下がらないように、マネジメント層は夜勤や残業手当などがきちんと支給できているかしっかり把握し、処遇改善加算の制度を活用していくことが大切です。

退職者続出を何とかしたい!今からできる解決方法5つ

「自分の職場は退職者が続出しても仕方ない」とあきらめてしまうと、介護職員は「退職」という道を選んでしまうでしょう。一人の退職によって業務負担が大きくなってしまい、次々と退職者が出てしまう「連鎖退職」のリスクも高まります。

ここでは、退職者続出を防ぐためにできる5つの解決策をまとめてみました。

キャリアの長い介護職員を異動させる

介護施設で働くスタッフの中には、専門職の資格などを持っていない未経験者が入ってくることも多く、一人ひとりに技術差が出て業務に支障をきたすことがあります。

大切なのは、未経験者をいち早く戦力にすることですキャリアが長い介護職員を異動させて未経験者の様子を見ながら、効果的な指導を行うのも有効でしょう。

成長に時間がかかりそうなら、一時的に派遣で人員を増やすなどして未経験者の仕事にゆとりを持たせることで、成長が早くなる可能性もあります。

定期的に個別面談を行う

個別に面談を行うことで、事業所・施設内における問題点が見えてくることがあります。

また、介護職員のなかには、子育てや親の介護などプライベートな事情を抱えている人もいるでしょう。働きやすさを実現するには、できるだけ個々の事情を理解しておく必要があります。

また、どのような介護をしたいのかをヒアリングすることで、働きやすい環境づくりのヒントが得られるかもしれません。なお、個人面談の際には一方的に質問するだけでなく、介護職員側の話もしっかり聞くよう心がけましょう。

ケアプランを見直す

施設にケアマネージャーが在籍している場合、職員の不満の中で「ケアプランに無理がある」といった声がよく聞かれます。無理な介護を現場に押し付けていないか、管理職やケアマネージャーの立場ではなく現場目線でのモニタリングが必要です。

個人面談でのヒアリングも有効活用できるでしょう。現場とケアマネージャーとともに問題点を洗い出してケアプランの再検討を行い、適切なプランを見つけていきましょう。

相場と比べて給料が低くないかをチェックする

「介護現場は仕事の内容に比べて給料が低い」という声も聞かれます。優秀な人材ほど別の事業所・施設へ流出しやすくなるため、そうなる前に対策を立てることが大切です。

介護施設で活用できる加算制度には、以下があります。

・介護職員処遇改善加算

・介護職員等特定処遇改善加算

・介護職員等ベースアップ等支援加算(旧・介護職員処遇改善支援補助金)

また、離職率の低い施設のマネージャーの講演や勉強会などがあれば積極的に参加して情報収集することをおすすめします。

新人教育や人員配置を見直す

新人が入ったとき、介護のやり方を見よう見まねで覚えるよう、指導しているところもあるでしょう。これでは、介護の技術にバラつきが出てしまうおそれがあります。

新人教育をする際は、だれが見てもわかる作業手順のマニュアルを細かく作成しましょう。

マニュアルを作ることで、介護職員の質の向上につながり、忙しいときでも指導者の手が空くのを待つ必要がなくなります。

新人がある程度成長するまでは、多くの業務を割り振ることは避けましょう。たくさんの業務を任せるとキャパオーバーとなってストレスを抱えたり、ときには退職につながったりするおそれがあります。

どうしても職員が足りないときは、清掃やリネン交換を手伝ってもらうボランティアや臨時スタッフの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

給料以外にも?介護施設の退職者を減らすコミュニケーション方法3つ

介護職員の退職理由のなかで給料や待遇面とともに、人間関係の不満も大きな影響を与えます。ここでは、人間関係を改善するための方法を紹介します。

定期的に飲み会や遊ぶ機会を設ける

居心地の良い職場を作るには、職員同士のコミュニケーションを活性化させることが大切です。

たとえば、勉強会や意見交換会、お茶の時間などを設けてみると良いでしょう。ほかにも、共通の趣味を持つ人たちでのサークル活動やボーリング大会といったレクリエーション、施設外での飲み会なども本音を話せる機会になります。

子育てや親の介護で夜の外出が厳しい場合には、夜勤明けの朝食会やランチ会といった形で集まりを計画してみるのもおすすめです。

現場のスタッフに率直に退職したいと思ったことがあるか聞く

個別の面談などで率直に退職したいと思ったことがあるか、その理由は何かを聞き出すことで問題点が見えてくるでしょう。ただし、どうしても職場の上司には本音が言えないといった職員がいるケースもあります。

その場合はただ放置するのではなく、外部に委託してのアンケートやストレスチェックなどで情報収集し、職場環境の改善に役立てましょう。

現場の職員を褒め合う

介護職員のなかには、日々の業務でうまくいかないことがあると、「この仕事は自分に合わないかも…」と辛さを感じて退職を検討してしまう人もいるようです。また、介護の業務を頑張っているのに労いの言葉がないと、職場への不満を積もらせてしまうこともあります。

モチベーションを低下させないためにも、うまくいったことについては、感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。褒められると介護職員に自信がつくようになり、職員同士の士気も上がります。

まとめ

介護施設で退職者が続出する理由にはさまざまあります。それは個人の課題ではなく、施設全体の問題であることも少なくありません。まずは、現状把握から努めてみてはいかがでしょうか。

定期面談や給料の見直しによって、少しずつ改善が見込めるため、できることから始めてみましょう。