介護職員が辞める…その前にできる業務改善のアイデア6選

介護業界の離職率は高く、人手不足が問題になっています。最初から辞めたいと思って働く方は少ないでしょう。辞める理由は人によって異なりますが、日々の忙しさや、やりがいを感じられないなどで、離職につながってしまうケースが多いです。 介護職員の離職を防止するには、事業所・施設内でちょっとした工夫をすることが大切です。職場環境を改善することで、人材を引き止められる可能性があります。 今回は、介護現場における問題点を洗い出し、改善すべきポイントについて紹介します。


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介護業界の離職率が大きな社会問題に!介護職員が辛いと感じる理由4つ

「人の役に立ちたい」という気持ちをもって介護職員を目指す方は多いでしょう。しかし、実際、介護職員になってから離職する人が多いのも実情です。職に就く前と、実際に働きだしてからのギャップを感じるのが大きな理由のひとつだと考えられます。

そこで、離職を考える人が辛いと感じる問題点についてまとめてみました。

人間関係

介護職員をやめる多くの理由は、人間関係です。施設の場合、チームで介護をしているからこそ、時にそれが摩擦を生みます。

訪問介護などの事業所では一人でケアすることが多いため、人間関係によるトラブルが起きにくいイメージがあるでしょう。しかし、職員同士のつながりが強いと人間関係に悩まされるケースも多いようです。

利用者・入居者との相性が合わない

利用者・入居者とうまくコミュニケーションが取れないことも、辛いと感じる理由になりえます。

介護は人と直接関わる仕事なので、日々のやりとりにストレスがあると、大きな負担になります。担当している利用者・入居者に嫌われたと感じると、ショックを受けることもあるでしょう。

関係を良くしたい、信頼関係を構築したいと思っても、うまくいかないこともあります。自分に落ち度がなくても、どうしても相性が合わず、お互いにストレスを抱えてしまうのが、この問題の難しいところです。

給料が合わない

仕事に慣れて中堅になり、新たな仕事を任されるようになると、さらにやりがいが出てきます。しかし、その一方で昇給がないと、「自分は本当に評価されているのか?」と疑問に感じるでしょう。

努力を認めてもらえないと不信感が生まれ、仕事にやる気を出せずモチベーションが下がってしまう可能性があります。

介護業務以外も担っている

介護職員の仕事は多岐にわたりますが、例えば掃除など、介護職の免許がなくてもできるものもあります。

清掃だけのスタッフを入れていることも多々ありますが、そのような事業所・施設は決して多くはありません。

従来型の事業所・施設ではない場合、清掃業務をし続けることが辛いと嘆く介護職員もいます。清掃は意外と時間がかかるうえ、清掃業務とあわせて利用者や入居者の様子を的確に判断することは容易なものではありません。

ほかにも食器を洗う、炊事をするなども介護職員が担っている場合が多くみられます。生活リハビリを含めたグループホームや在宅介護では必要なことですが、それ以外の事業所・施設では、介護職員が行う必要がありません。

「利用者・入居者の役に立ちたい」と思って介護職に就いたのに、ケア以外の仕事が多く、一人ひとりに向き合えない環境を不満に思う介護職員がいるのも現状です。

そもそも介護業務の改善は可能?チェックすべきポイント

働きやすく離職率の低い職場にするためには何が必要か、何ができるのかを考えてみましょう。

介護職員の知識や技術

つらい思いをしているときに、その思いを上司や同僚に共有できないと、つらいと感じることはさらに増えるでしょう。介護職員一人ひとりのつらさや問題点などを共有し、対応策や改善策を一緒に考える時間を作って辛さの軽減に努めましょう。

また、課題や悩みの解決に向けて寄り添う姿勢も大切です。事業所内・施設内での勉強会や外部の講習会で学ぶ機会を設け、介護職員のスキルアップを図ることで改善されることもあります。

例えば、腰痛に悩む介護職員には「腰痛になりにくい介護方法を学ぶ研修」へ参加してもらうようにすると良いでしょう。

問題の大小にかかわらず、「常に考えて改善する」空気がある事業所・施設は、働く人にとっても、利用者・入居者にとっても居心地の良い空間となりえます。

その際、「勉強の時間はあくまでも業務時間内」と考え、残業代や休日出勤扱いなど勤務時間として配慮しておきましょう。

介護職員の人数

介護の現場では、中堅やリーダークラスが離職して介護の質が低下してしまうことも課題といわれています。離職理由として職場環境だけでなく、子育て、親の介護などのプライベートな事情が関わっていることもあり、すべて解決することは難しいのが現状です。

子育てや親の介護をしている職員がいれば、忙しい期間は日勤だけの勤務にし、夜勤を派遣社員で補填してみることも検討してみましょう。

コミュニケーション量

介護施設の場合、さまざまなスタッフが利用者・入居者と関わります。コミュニケーションがしっかり取れていないと、トラブルにつながるおそれがあるので注意が必要です。

看護師が在籍している施設では、介護職員と看護師で連携が取れていないということもあります。医療の現場と介護施設ではルールに違いがあり、なかには新人介護職員が看護師から注意を受けるということもあります。

そのようなときに、ケアマネージャーがサポートできれば理想的ですが、家族の意向を聞くことに精一杯という状況もあるでしょう。現場の声をなかなか聞くことができず、介護職員が辛い問題に直面することになってしまうこともあるようです。

このようなことにならないためには、利用者・入居者とご家族、医師・看護師(在籍している施設の場合)、介護サービスを実際に提供する担当者など、関係者間で連携を深めていくことが重要です。

一人あたりの業務量

介護事業所・施設の中には、一人当たりの業務量がキャパオーバーしているところもあります。介護職員一人あたりの業務量が多いことで、利用者・入居者の話を十分に聞いてあげられなかったり、様子を把握しきれなかったりすることもあるでしょう。

そうなると、利用者・入居者との信頼関係の構築が難しくなり、そもそも介護職員へ体調の変化や悩みを話してくれなくなることもあるでしょう。場合によっては、突然の体調不良など、アクシデントへ発展する可能性もあります。

日々のケアの中で、利用者・入居者とのコミュニケーションが図れていれば、ある程度事前に体調不良などのアクシデントに備えた準備や心構えができます。しかし、事前の備えができていない状態であれば、その分、把握すべきこと、対応すべきことなど、仕事量が増えてしまい、悪循環になりかねません。

介護職員の現状の業務量を把握し、働きやすい環境を整え、日ごろからスケジュールにゆとりを持たせるなどの配慮が必要です。

今日からできる介護業務の改善アイデア!

介護業務の負担が改善されるためのアイデアを紹介します。

ボランティアを募集する

介護職員だけで業務を回すことが難しい場合は、SNSでボランティアを呼びかけるのも手段のひとつです。

ボランティアでは、主に以下の業務をおまかせすることになります。

・介護職員の補助業務(ベッドメイキング、食事の配膳、清掃など)

・利用者・入居者個人への対応(話し相手になる、お出かけの付き添い、新聞や本の朗読など)

・複数の利用者・入居者への対応(レクリエーションのサポート、書道や楽器の習い事など)

介護職員以外のボランティアと交流することで、利用者・入居者にとっても楽しい時間となるでしょう。また、介護職員しか行えない、専門的なスキルが必要なケアに当てる時間を確保しやすくなるでしょう。

業務の一部をIT化する

介護の業務を効率良く行うのであれば、IT化も検討してみましょう。

介護業務のIT化とは、機器を用いて転倒リスクの高い方にアラートを設定したり、呼吸数や心拍数など、健康状態の管理や睡眠状況の把握をしたりなどです。

効率化の例として、睡眠状況の把握をIT化したとします。これにより、利用者・入居者の睡眠を妨げず、睡眠状況の把握のための介護職員による見回り回数を軽減するなどです。

他にも、食洗機やロボット掃除機、リフト浴、機械浴なども、介護職員の負担を大幅に減らせるでしょう。

2023年4月からは、介護事業所において「ケアプランデータ連携システム」の本格稼働が予定されています。

ケアプランデータ連携システムでは、居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間で、ケアプランの一部情報をデータ連携できるシステムの導入を推進していきます。オンライン上で他法人の事業所とケアプランのデータ連携が可能になり、サービス提供票の内容をデータで取り込むことができます。

参考:「介護現場におけるICTの利用促進」(厚生労働省)

そのほか、介護記録をスマートフォンやタブレットで行うことで、手書きよりも作業時間の削減が期待できます。

ケアプランを見直す

利用者・入居者のケアプランは、定期的に見直すのが理想です。利用者・入居者の状況や、ご家族の要望、目標に対する達成度を確認し、必要に応じて課題や目標の更新を行いましょう。

介護職員と医師・看護師のコミュニケーションの場を設ける

医師や看護師が常勤している事業所・施設の場合は特に、現場の介護職員と医師・看護師が情報共有し合える時間を捻出しましょう。看護師の人数を増やして現場を見にいく機会を多く作ってもらうなどの対応も必要です。

普段からコミュニケーションの取りやすい環境を整えることで、利用者・入居者の日常の様子を医師や看護師にすぐにみてもらえたり、怪我などの対応による往来数を減らせたりできます。

医師や看護師が事業所・施設に常勤していない場合も連絡を取りやすい環境を整えてもらうようにしましょう。

離職を食い止めて、職員のモチベーションを高める

利用者・入居者や介護職員との関係が良好な職場でいれば、長く勤めていきたいという想いが強くなります。介護職員の気持ちに寄り添うことで、働きやすく、利用者・入居者が心地良いと思える環境が生まれるでしょう。

まずはマネジメント層が率先して、現場の意見を聞くよう心がけることが大切です。

現場の本音を聞く一対一のミーティングの時間を設けたり、介護職員が協力して課題に対する解決策を提案したりするなどして、できることから実践していきます。

利用者・入居者やそのご家族、あらゆる立場の人とコミュニケーションをとりながら定着率が高い介護現場を作っていきましょう。

まとめ

介護職員に長く働いてもらうためには、職場内で起きている問題を解決したり、業務効率化を図ったりすることが大事です。

マネジメント層が常に現場の声を聞く姿勢を見せることで、介護職員のモチベーションを維持することができ、働きやすい職場を作ることができます。