新卒で立派な介護職員を育てたいならOJT!その体制と魅力とは

新卒介護職員の早期離職を防ぐためには、OJTの導入が効果的です。OJTの導入により、新人が安心して学べる環境を構築できるうえに、指導者のスキルアップも見込めます。今回はOJTのメリットと成功のポイントを紹介します。


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そもそもOJTとは?

「OJT(On the Job Trainin)」とは、実務を通じて行う研修のことです。OJTは介護現場で活用されることが多く、実際の現場を見ながら必要なスキルを学べるため、新人介護職員のスキルを効果的に向上できます。OJTは以下4つのステップで行います。

・ステップ1:Show(やってみせる)

・ステップ2:Tell(説明する)

・ステップ3:Do(やらせてみる)

・ステップ4:Check(指導する)

まずは指導者が実際の業務をやってみせます。実務を見せることで、新人が仕事のイメージを具体的に掴めます。そのうえで、やってみせた業務について説明しましょう。業務内容だけではなく、その業務の理由や目的についても説明することが重要です。

次に、同じことを新人介護職員に行ってもらいます。ただし、ここでは間違いを指摘せず、「どう間違っているか」「どう指導すれば改善できるか」を考えながら観察しましょう。以上のステップが完了したら、フィードバックと指導を行います。

以上4つのステップを実行すれば、介護現場の業務への理解が深まります。各業務でOJTによる指導を導入すれば、新人介護職員がスムーズに成長していくでしょう。

介護にOJT制度を取り入れる4つのメリット

新人の介護職員の指導にOJT制度を取り入れると、それぞれのスキルに合わせた指導ができるうえに、指導役の介護職員のスキルも向上します。

新人がどのくらいまで技術力が到達したか理解しやすい

OJTを導入すると、新人介護職員が業務内容をどれくらい理解できているか、指導者が把握しやすくなります。全員に一律に教育する手法では、個人ごとの習熟度を把握できないので、理解度が不足している介護職員へのフォローが行き届きません。その結果、「難しい」「わからない」と感じた介護職員が、早期離職するおそれがあります。

OJTでは、指導者が新人介護職員に1対1で対応する機会が多くあるので、「どこを理解できていないか」を把握でき、きめ細やかに教育することができます。わからないことに悩む新人が減ることで、離職率を下げることも可能です。

新人が精神的に楽になる

OJTを導入すると、新人介護職員が安心して業務内容を学べる環境が整います。新人がとくに不安を感じやすいのは、わからないことがあるときや、気軽に質問できないときです。疑問を解消できないと研修や業務についていけず、居づらくなって辞めてしまうことがあります。

OJTであれば、指導者と1対1で接する機会が多いので、すぐに不明点や疑問を解消できます。わからないことが減れば、それだけ気持ちも楽になるものです。先輩との信頼関係も深まるため、新人介護職員が「職場にいやすい」と感じやすくなり、離職率低下にもつながります。

教える側もスキルアップできる

OJTには、指導者側のスキルが向上するメリットもあります。OJTで新人介護職員を指導するためには、指導者自身の業務内容への理解や、わかりやすく教える技術が必須でしょう。新人に「いかにわかりやすく教えるか」を考える過程で、自身の業務を見つめ直す必要があるため、指導者側の知識やスキルもより深まります。

さらに、OJTで新人を指導していく中で、指導者は「手本にならなければ」という責任感や、より念入りな介護をしようという思いが芽生えます。新人のサポートをすることで、指導者が達成感や仕事へのやりがいを感じることも増えるでしょう。

個人に合わせた研修ができる

OJTでは、新人介護職員それぞれの成長スピードに合わせて、現場の業務内容やコミュニケーション方法を指導できます。わからない部分を丁寧にフォローできるため、「研修についていけない新人介護職員が離職を考える」という事態を防げます。

なかには、新人介護職員の士気や競争心が高まり、通常より早く研修を完了できるケースもあるでしょう。また、すべての新人介護職員の技術を高いレベルに引き上げられるので、全体的な業務の質が向上することもポイントです。

OJTで技術力のある介護者を育てるには?

OJTは、基本的な技術をしっかり身につけてほしいからこそ行うものです。「仕事が合わない」「職場が居づらい」と辞めてしまう介護職員を減らす目的もあります。

ここでは、OJTで技術力のある介護職員を育てるために取り入れるべきポイントについて紹介します。

介護技術を丁寧に教える

介護職員の離職理由のひとつに「体調不良」が挙げられます。これは誤った「移乗方法」が原因のものも含まれます。利用者・入居者をベッドから車椅子へ動かす移乗は、正しい手順で行わなければ介護職員の足腰に大きな負担がかかります。こうした指導を丁寧に行うことも、OJTを成功させるコツです。

あいまいな指導や不明確な指示は、新人介護職員の怪我や不満の原因になります。介護業界にはさまざまな専門用語や略語がありますが、新人の多くはほとんど理解できないでしょう。

指導者は「誰でもわかるように教える」ことを心がけ、難しい言葉をかみ砕いて新人介護職員に教えることが大切です。

プリセプター制度を導入する

指導者が新人をマンツーマンで指導する「プリセプター制度(メンター制度)」は、OJTの効果をさらに高めます。プリセプター制度では、業務内容のきめ細かな指導だけではなく、積極的なコミュニケーションで新人のメンタルケアもできることが魅力です。

気軽なコミュニケーションまでできる先輩がいれば、後輩も相談しやすくなるでしょう。信頼関係が深まり、職場の雰囲気も良くなるので、新人が職場に定着しやすい環境が作れます。

目標を細かく定める

「どんな介護職員になってほしいか」「何ができるようになってほしいか」など、目標を細かく定めましょう。指導者側は「できて当たり前」と思っていても、新人にとっては「初めてのこと」ばかり。新人は「これで合っているのか?」という不安を常に感じるので、「何をすべきか」を明確化しましょう。

また、担当者によって教え方や業務手順が異なると、新人介護職員が困惑してしまいます。事業所・施設の指導方針を明確化し、そして指導内容を標準化して、目標とともに指導者・新人介護職員と共有しましょう。

叱るだけではなく、なぜ失敗をしたのか説明をする

新人介護職員がミスをしたときは、叱るばかりではなく、「なぜ失敗したか」「どうすれば良いか」をわかりやすく教えてあげましょう。失敗の理由がわからない限り、その人は同じ失敗を繰り返します。

たとえば、利用者・入居者に「嚥下障害」がある場合、水を飲ませるのにも細心の注意を払わないといけません。しかし新人介護職員は、利用者・入居者が「水を飲みたい」と言ったら、そのまま飲ませてしまうケースもあるでしょう。

そんなとき、ただ頭ごなしに新人を叱るだけでは、なぜ叱られたか理解できず次も同じ失敗を繰り返し、深刻な事態になってしまうかもしれません。

落ち着いてミスを指摘し、なぜそれがダメなのか、具体的にどうすれば良かったのかを教えてあげれば、新人も理解しやすくなります。ときには叱りつけることも必要ですが、そのあとはしっかりフォローしてあげましょう。

まとめ

OJTの導入は、新人介護職員の理解度向上やメンタルケアに役立ちます。結果的に介護職員の離職率が低下し、良質なサービスを利用者・入居者に提供できるようになります。OJTを導入する際は、指導者側が介護技術を丁寧に教え、新人が失敗したときのフォローを心がけるようにしましょう。