新人介護職員の教育に役立つチェックシートを作成しよう!おすすめの内容とは

新人介護職員の教育に悩んでいる施設も多いでしょう。現場ではイレギュラーな事案が発生するほか、利用者・入居者の状況に応じて適切なケアをする必要があります。どのように介護職員の新人教育を進めていけば良いのでしょうか。今回は、チェックシートを用いて、新人介護職員を教育する方法について紹介します。


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新人介護職員の教育に役立つチェックシートを作成しよう

介護業界では深刻な人材不足が問題視されています。新人教育が疎かになり、せっかく採用した人材がすぐに退職してしまっては、教育した時間や経費が無駄になってしまいます。そうならないために介護業務に関するチェックシートを活用しましょう。

新人教育チェックシートとは、新人職員のスキルを可視化するためのチェックシートのことです。新人教育の際に新人職員がどこまで理解してできているのか、何度も同じミスをしていないかなど教育係と新人職員がお互いに共有することが大切です。

業務のチェックシートを作成し活用することで、新人職員の苦手なことや理解できていない部分も把握しやすく、教育係にとっては指導しやすくなります。

教育係が教えたことやできるようになったことをチェックして新人職員に伝えることで、新人職員の「できた」「できるようになった」という自信にも繋がり、仕事への取り組みや意欲も高まりやすいです。

新人教育チェックシートの内容は事業所・施設によって異なる

どこの事業所・施設にも、介護業務に応じた『マニュアル』が存在します。内容は事業所や施設によって異なり、事業所や施設の規模、利用者様の傾向に応じた指導方法の工夫も大切です。

指導方法の工夫ができるようになる

チェックシートを活用することで、新人職員のできること、できないことが把握しやすくなります。新人職員の苦手に応じた指導ができるほか、介護職員のレベルに合わせた指導ができるようになります。

ほかの介護職員にも共有できるため、業務中に様子をうかがったり、フォローしたりすることができます。

新人教育シートでよく取り入れられる項目

新人教育シートのチェックリストで欠かせない項目は、基本的な介護技術についてです。新人教育シートについてよく取り入れられている項目を5つ紹介します。

介護技術

基本的な介護技術としては、『食事介助』『排泄介助』『入浴介助』『移動介助』『更衣介助』の5つがあります。事業所・施設によっても異なりますが、利用者に対して快適な介護サービスを提供するために必要なスキルです。これら5つの評価項目について紹介します。

食事介助

利用者・入居者のなかには、自分で食事することが難しい人も少なからずいます。食事介助ではそれぞれの利用者・入居者に対して、安心・安全に適切な食事ができるようサポートします。

また、適切なタイミングで配膳ができているかなどをチェックすることも欠かせません。

高齢者は嚥下(えんげ)の能力が低下していることもあります。そのため、しっかりと飲み込めているか、詰まっていないか、利用者・入居者の飲み込み速度にあわせた食事介助ができているかも、新人教育ではしっかり見てあげましょう。

排泄介助

排泄介助も、利用者・入居者の状況に合わせた対応ができるかどうかのスキルが求められます。

介助中の利便性ばかりにとらわれて、トイレのドアを開けっぱなしにするのはNGです。プライバシーの保護がきちんとできているかもチェックしてみましょう。

また、ケアする際に適切な声かけができているかも重要なポイントとなります。とくに排泄介助では利用者・入居者側も「申し訳ない」「恥ずかしい」という気持ちがあります。そのことを配慮した上で、いきなりズボンを下げたりするのではなく、安心できる声かけをしているかもチェックしましょう。

新人がオムツ交換に入る際は、オムツにシワができていないか、しっかりとパッドが陰部に当たっているかを確認してください。オムツをしている利用者・入居者は、自分でトイレに行くことができず、ヨレを直すことが難しいためです。

とくに寝たきりの利用者・入居者の場合は、オムツのしわが臀部(でんぶ)に当たって刺激を起こしてしまうことがあります。このことがきっかけで褥瘡(じょくそう)が発生することもあるので、とくに新人教育ではチェックしたい重要なポイントです。

尿漏れや便漏れをした際に、どう処理するかを把握していない新人も多いです。その際は、ベテランの介護職員が実際に処理の仕方を見せることが大切です。

入浴介助

浴室は滑りやすく、利用者・入居者と介護職員共に転倒に気を付けなければなりません。また、温度の変化により体調急変が起きやすい環境であり、脱水症状や溺れてしまうおそれがあるため、細心の注意を払う必要があります。

入浴介助では、安全面に配慮したうえで行動できているかが重要です。たとえば、利用者・入居者に「滑るから気をつけましょう」など声かけをできているか、などが挙げられます。さらに認知症の方は不安の感情が大きく、後ろから急に触ったりうえから腕をつかんだりしてしまうと恐怖を与えてしまうので注意して行うことが大事です。

また、新人の介護職員が未然に事故を防げるように動いているかもポイントです。新人のうちはうまく移乗ができないことも多いので、どのようなボディメカニクスを使えばスムーズにいくかもしっかりと教育します。

入浴の際は、洗髪介助や洗身介助も行います。利用者・入居者ができる場合は自分でやってもらうことを促す声かけも必要になるでしょう。

また、入浴時には利用者・入居者の身体を観察することも大切です。この際、引っ掻き傷などがないか確認しましょう。認知症の方の場合、「皮膚がかゆい」といった、身体の症状をうまく伝えられないこともあります。入浴後は薬を塗布するなどができるよう、きちんとサポートしていきましょう。

移動介助

移動介助では転倒や骨折などの介護事故を起こさないよう、適切な移動補助具の扱い方を知っておくことが重要です。

主な移動補助具として『車いす』『歩行器』『杖』『シルバーカー』などの種類があります。これらの使用方法を理解し、一つひとつの動作できちんと声をかけ、確認しながら進めることが大切です。

また、ブレーキがどこにあるのか、収納方法を理解しているかもしっかり確認しておきましょう。利用者・入居者がブレーキをかけ忘れていた場合、介護職員がそれに気づけば事故にはつながりません。

そのほか、片麻痺の症状が見られる利用者・入居者には、寄り添って支えてあげることが大切です。

注意点として、利用者・入居者が動かせる部分まで介助してしまうと、もともと備わっていた筋力が衰えてしまうおそれがあるので、本人の身体能力を踏まえた上で適切な介助をしましょう。

更衣介助

更衣介助では、朝や入浴時などの着替えをサポートします。適切に行えないと利用者・入居者に痛みやストレスを与えてしまいます。

利用者・入居者の中には麻痺がある人もいれば、朝だけ拘縮(こうしゅく)をして着せにくい人もいます。利用者・入居者の状態を踏まえた上で、丁寧な介助を行いましょう。

また、更衣介助では、動くことが多くあります。とくに貧血の利用者・入居者の場合は、朝に立ちくらみを起こし、予期せぬタイミングで転倒につながるおそれもあります。その際にしっかりと利用者・入居者を支えられるような動作をしているかもポイントとなります。

そのほか、急な温度変化についていけない利用者・入居者もいるため、更衣介助の前には空調を整えるようにしましょう。

そして、更衣介助の際には、内出血の跡を見つけることがあります。その際に看護師に報告したり、利用者・入居者本人に聞いたりなどして、しっかり対応をとっているかチェックしておきましょう。

さらに、プライバシーをしっかりと守るためには、カーテンを開けっぱなしにしていないか確認する必要があります。

認知症の方への対応

認知症は、認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態を指します。ご本人や引き起こされる疾患によっても、その症状はさまざまです。治療や投薬によって進行を遅らせることはできますが、認知機能障害や生活障害自体を完全に治すことは困難です。

また、認知症の方は「これまでできていたことができなくなった」といった焦燥感や不安を抱える方も多いです。そのため、認知症の方が、その人のもつ能力の中で自立した生活ができ、希望をもって暮らせるようなサポートをすることが介護職員の役割になります。

正しい知識を身につけ、適切な対処を取るには、以下のような学習が必要です。

・認知症を取り巻く状況

・医学的視点からみた認知症の基礎知識と健康管理

・認知症に伴う心と体の変化

・認知症の方の日常生活

・家族への適切な支援

認知症ケアはマニュアルどおりには行かず、臨機応変さも多く求められるものです。そのときの状況を冷静に判断し、最適な対処ができるスキルがポイントになります。

マナー

介護現場では、基本的な介護技術のほかにも接待マナーが重要です。利用者・入居者との適切な接遇マナーは、主に『言葉遣い』『身だしなみ』『あいさつ』の3つです。それぞれについて紹介します。

挨拶

挨拶は、コミュニケーションの基本です。相手と目を合わせて笑顔で挨拶すると、話しやすい雰囲気が作れます。利用者・入居者と話す際には、ゆっくりはっきりと話すように心がけましょう。

また、車椅子の方には、目線の高さを合わせて挨拶することが大切です。

言葉遣い

利用者・入居者に対して、親しみをもって話すことは大事です。とはいえ、あまりフランクすぎず、丁寧な言葉遣いで接しましょう。また、誰にでもわかるような言葉で話すことを意識するのもポイントです。

身だしなみ

介護の現場では利用者・入居者との距離も近くなるので、清潔感がある身だしなみをしているかも重要です。直接体が触れることも多い介護職にとって、爪が伸びていないか、適切な髪型をしているかなども重要な項目となります。

新人教育シートに取り入れておきたい項目

ここでは、新人教育シートを作成する場合、取り入れておきたい項目について紹介します。

経営理念や方針

新人教育するにあたり、事業所・施設の経営理念や方針を伝えることは重要です。組織としてどんな介護を目指しているのかを浸透させることで、新人職員の主体性も促すことができるでしょう。

また、いつでも事業所・施設の方針を見返せるよう、行動指針を簡潔に記したクレドカードなどを作っておくと良いでしょう。

介護の仕事をする上での心構え

介護の仕事をするうえで、介護職員は利用者・入居者の尊厳を守り、向き合う心構えを持っておかなければなりません。教育係は、介護職の基本の心構えを態度や行動で示しましょう。

また、新人職員のメンタル面についてもケアが必要です。相談相手を配置したり、ときには休養を進めたりして、新人職員のメンタルをサポートします。

具体的な1日のスケジュール

事業所や施設によって1日のスケジュールや業務は異なります。新人職員は指導者と業務をすることで流れをつかめるようになるので、教育係がマニュアルやルールをしっかりと説明しましょう。

利用者・入居者との関わり方

介護現場では新人のうちから基本的なマナーを身につけることが重要です。利用者・入居者に対して失礼のないよう接することも心掛けなくてはいけません。

また、不穏時の対応方法についても伝える必要があります。誤った方法で接すると相手を怒らせてしまうこともあるため、利用者・入居者の状態を確認したうえで、どのように接していくべきか指導していきましょう。

介護現場に起こりがちな事故

多くの介護の現場では転倒や誤嚥、介助中の事故など危険性が常に潜んでいます。新人には事前の準備と対応で事故の発生率を最小限に抑える指導などが重要です。

緊急時の対処法などをしっかり伝えておくことで、不安や悩みを軽減できるでしょう。業務に慣れるまでは、指導者と一緒に業務を行うことが大切です。

人数が多い日にやっておきたい作業

手が空いたときにやることや、一週間で達成すべき業務(リネン交換や、コップの漂白など)もあらかじめ共有しておきましょう。

自発的にできたら「すごい!」と褒めるなどし、新人職員のできることを増やしていくことも教育係のサポート範囲です。

物品の所在

新人のときはどこに何があるのかわからないので、教育係が説明しても、つい忘れてしまうことがあります。そんなときは覚えるまで何度も教えましょう。

物品の所在を記したリストを共有しておくと、業務の効率化にもつながりやすいです。

これからの新人教育に取り入れるべき内容

これからの新人教育には、今注目されている「自立支援・重度化防止」や「科学的介護」についても取り入れていく必要があります。これらについて説明します。

自立支援・重度化防止

自立支援・重度化防止とは、高齢者の個々の能力に応じて、自立した生活が送れるよう支援したり、高齢者個人のニーズに応じた支援体制の強化や充実を図ったりすること。また、生涯の健康づくりや介護の予防、重度化を防止する取組を推進する制度です。

令和3年度の介護報酬改定により、自立支援・重度化防止の取り組みに関しても、科学的に効果の裏付けがされたサービスが提供できるよう推進されました。

自立支援・重度化防止では、以下の項目が重点課題として取り上げられています。

1.リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化

2.介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進

3.寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進

これらの点を踏まえ、今後は医師やリハ専門職、歯科衛生士や管理栄養士など多職種による連携が必要不可欠となるでしょう。

また、介護職員は利用者・入居者がどのような生活を望んでいるのか、本人の意思を尊重していく必要があります。中には、利用者・入居者が自立に対して消極的な意向を示すケースもあるでしょう。その場合は、自立に向けて意欲が喪失している理由を明らかにし、どうすれば意欲を高められるかを考えた上で、一人ひとりに合ったケアをしていくことが重要です。

新人教育の際には、チームケアが重要であること、利用者・入居者一人ひとりに合ったケアが必要なことを伝えましょう。介護職員が利用者・入居者の変化を見落とすことで、命に関わる事故が発生しかねないため、しっかりと指導していくことが大切です。

科学的介護

自立支援・重度化防止のための取り組みとして、「科学的介護の推進」があります。科学的な効果の裏付けに基づく介護のことで、効果的で質の高い介護サービスの提供に向けて普及と実践が望まれています。

数字データなどの客観的なエビデンスによって認められた介護サービスを意味し、厚生労働省では『科学的に自立支援の効果が裏付けられた介護サービス』とも説明されています。

新人は褒めて伸ばそう!シート以外に取り入れるべきアクション3つ

実際に新人教育を行う際にどのようなことを意識すればいいのか。教育係が持っておきたい考え方や意識するべき点について3つのことをまとめました。

その人だけがもっている魅力を引き出す

教育係の担当者は新人職員の長所や魅力に気づき、その人にしかできないことを仕事で活かしてあげましょう。例えば新人の趣味が山登りなら、利用者・入居者で山登りが好きな人の話し相手になってもらう、などが挙げられます。

たとえミスが多い新人であっても、利用者・入居者に優しく丁寧に接したり、笑顔で対応できたりする人なら、そのポイントをどう生かせるか考えることができます。うまく長所を伸ばすことができれば、新人職員にとっても自信につながりやすいです。

感情的に怒らない

新人職員と教育係がお互い良いコミュニケーションを図るためにも、感情的に怒らないことが大切です。新人のうちはミスをする可能性が高いです。そんなときは「なぜそのような行動に至ったか」に目を向けて、適切なアドバイスをするようにしましょう。

褒めて伸ばす

誰でも最初はわからないことだらけなので、とにかく褒めて伸ばすことが重要です。自然と新人と先輩でいい関係が生まれます。

どのようなところが良かったのか、具体的に言語化するのがおすすめです。実際のエピソードをふまえて褒めると、自分のことをしっかりと見てくれていると感じられます。良好な関係が築けるよう、小さなことでもほめることが大切です。

まとめ

新人教育では、現場での振る舞い方や基本理念を学ぶ重要な機会です。その際にベテラン介護職員でも新人の教育に悩むことがあるでしょう。そんなときは、ぜひ新人教育のチェックシートを取り入れてみてください。新人に伝えるべきポイントをしっかりとまとめておけば、教育の進度に悩むことも減るでしょう。