介護におけるICTとは?事例やメリット・デメリットを徹底解説!

多くの分野で業務のICT化が進むなか、介護の現場にもICT化は注目を浴びています。介護業界では、アナログでの作業が主流であり、ICTへの理解が及んでいない方も少なくありません。 そこで今回は、介護分野におけるICT化の意味や必要性、メリット・デメリットなどについて解説します。


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介護分野におけるICTとは

「ICT」とは、情報通信技術のことです。「IT(情報技術)」に、コミュニケーションの要素が絡んだものと考えると良いでしょう。

介護の分野においては、紙媒体をなくしたり、ビックデータを蓄積して質の良い介護サービスを提供したりするために、ICTが活用されています。

介護業界でICT化が必要なのはなぜ?

厚生労働省は「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」において、介護分野における業務効率化・業務負担軽減の一環として、ICTの活用を推進しています。

介護分野でICT化が必要とされる背景として、少子高齢化による要介護者の増加と、介護職の人手不足が挙げられます。

日本では人口の多い団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる、「2025年問題」を抱えています。後期高齢者が大幅に増える一方で働き手は減っているため、需要に供給が追いつかず、介護分野でも人手不足が深刻化すると考えられているのです。

ICT化を進めれば、業務効率や生産性が向上するため、人手不足を補える可能性があります。そのため、介護分野において積極的にICTを活用する動きが活発化しています。

出典:「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(厚生労働省)

介護にICTを取り入れるメリット

ここでは、介護にICTを取り入れるメリットを紹介します。

介護サービスの質が向上する

介護にICTを取り入れるメリットのひとつが、介護サービスの質の向上です。なかでも、介護現場のペーパーレス化は、介護職員への負担を軽減すると同時に、質の良い介護ケアを実現するのにつながります。

たとえば、紙媒体で利用者・入居者の情報を管理している場合、情報共有するにあたってコピーの作業が入るなど手間がかかる場面も多いでしょう。

しかし、利用者・入居者の情報をデータ化し、事業所・施設内のどこからでもタブレットなどで情報を閲覧できるようにしておけば、必要な情報がすぐに手に入ります。

こうして情報共有が容易になれば、利用者・入居者の状態を把握したうえで適切なケアをすることが可能になり、自ずとサービスの質も上がっていくでしょう。

業務を効率化できる

介護業務を効率化できることも、介護にICTを取り入れるメリットです。

たとえば、介護職員への負担がかかる業務のひとつに、事業所・施設内の見回りがあります。

できるだけ効率的に見回っても、ある程度の時間がかかるでしょう。しかし、見守りセンサーを導入し、利用者・入居者が転倒したらアラートが入るようにすれば、見回りにかかる時間を削減できます。

ICT化によって事務作業の時間が削減されれば、本来の業務である介護サービスに時間を割けるでしょう。業務効率化によって介護職員の負担が軽減できれば、離職率の低下などにも役立つ可能性があります。

データを取得することで介護記録が充実する

介護にICTを取り入れるメリットは、介護記録が充実することです。

介護記録を手書きで書くのは手間と時間がかかります。そこで、ICT化によって音声での入力やバイタルの自動転送ができるようになれば、こまめに記録がつけられるようになるでしょう。集めたデータを分析すれば、利用者・入居者それぞれに合った介護計画を立てるのにも役立ちます。

介護のICT化にはデメリットもある?

介護サービスの質の向上や業務効率化など、ICT化は介護分野にさまざまなメリットをもたらします。その一方で、いくつかデメリットがあることも知っておきましょう。

導入コストがかかる

介護にICTを取り入れるデメリットのひとつが、導入コストがかかることです。業務をICT化するには、パソコンやスマートフォン、タブレットを購入したり、インターネット環境を整えたりする必要があります。

ICTを導入する際は、初期費用が大幅にかかることを視野に入れておきましょう。

介護職員への教育が必要

ICT化にあたり、介護職員への教育も必要です。どれだけ良いシステムやロボットなどを導入しても、介護職員が使いこなせなければ意味がありません。使い方を理解していないと、かえって業務効率が落ちる可能性もあります。

そのため、スムーズに端末などを使えるよう研修する必要があります。可能であれば、事前にシステムや端末のテストをしてみて、スタッフが使いこなせるかどうかを確認しましょう。

導入コストを減らせる!ICT導入支援事業とは

介護にICTを取り入れたいとは思っているものの、導入コストが高額で躊躇している方もいるでしょう。そんなときは、「ICT導入支援事業」の補助を受けてみてはいかがでしょうか。

ICT導入支援事業とは、厚生労働省が実施している補助金事業です。介護事業所・施設が記録や情報共有、請求業務などの簡素化を実現できるよう、介護ソフトやタブレットなどの端末、インカムなどの導入を支援しています。

補助の対象になるかなど、詳しいことを知りたい場合は、各都道府県に問い合わせましょう。

出典:「ICT導入支援事業の概要」(厚生労働省)

何ができるの?介護のICT化の事例を紹介!

ここまで介護分野におけるICT化について解説してきたものの、具体的な取り組みについて詳しく知らない方も多いでしょう。ここでは、介護のICT化の事例を紹介します。

見守りシステム

見守りシステムとは、利用者・入居者の見守りをサポートするシステムです。センサーを活用して利用者・入居者の睡眠時間や呼吸数などを測定したり、利用者・入居者がベッドから離れたことを検知してアラートを出したりすることができます。

データを解析し、適切なタイミングでトイレに誘導したり、モーニングケアを実施したりすることも可能です。複数名を同時に見守ることもできるので、利用者・入居者の様子を確認しやすくなるでしょう。

情報共有システム

情報共有システムは、オンラインでデータを収集してリアルタイムで情報共有できるシステムです。

事業所・施設のなかには、ケアプランや請求書などを別々のソフトで作成し、必要に応じて転記するなど手間がかかる作業をしていることもあるでしょう。

そこで、異なるソフトで管理しているデータを一括管理できるようになれば、転記の作業を削減することが可能です。手作業が減ったり、なくなったりすることで、転記漏れなどのミスも減るでしょう。

介護システム

介護システムとは、介護分野での事務作業を効率化するためのシステムのことをいいます。

給与計算や勤怠管理機能、介護保険の請求書作成・送付機能などが利用でき、システムによっては、利用者・入居者の状況などの記録を残すことも可能です。

システムの種類によって機能が異なり、使える機能が多いほどコストも高くなる傾向にあります。また、あまりに多機能すぎると、スタッフが使いこなせなくなることもあるでしょう。

導入する際は、予算と必要な機能を考慮したうえで、事業所・施設の状況に合った介護システムを選ぶことが大切です。

まとめ

要介護者の増加や介護職の人手不足が課題となっている介護分野において、業務の効率化に役立つICT化が注目を浴びています。

介護にICTを取り入れることは、介護サービスの質の向上や要介護者の自立などにも役立つので、できる範囲でICT化を進めてみてはいかがでしょうか。