介護で働きやすい職場とは?職員が快適に働ける環境を整えよう!

日本はすでに超高齢社会に突入し、労働人口の減少が課題として挙げられています。今後も介護サービスの需要増加が予測される以上、介護現場では効率的な人材確保が不可欠です。 多くの業種で人手不足が叫ばれている中で、介護業界に人材を集めるためには、相応の工夫が求められます。まずは、職場環境を見直すことから始めましょう。 今回は職員が働きやすいと感じる職場環境について、重視すべきポイントと活用できる国の制度を紹介します。


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介護の現場で働きやすい職場作りが大切なのはどうして?

介護業界では、さまざまな理由から人手不足が深刻化しつつあります。公益財団法人 介護労働安定センターが行った調査によると、人手不足を感じている事業者の割合は60.8%でした。

とくに深刻な割合となっているのが、訪問介護員と介護職員です。職種ごとの調査結果では、それぞれ下記の割合で人手不足となっています。

職種 「不足している」と答えた割合(職種ごと)
訪問介護員 80.1%
介護職員 66.2%

訪問介護員においては、10事業所のうち8か所の割合で人手不足が起こっている状態です。

また、人手不足が起こる原因でもっとも高いのは「採用が困難(86.6%)」でした。ほかには、離職率の高さや事業拡大にともなう人手不足が理由として挙げられています。

出典:「令和2年度介護労働実態調査」(公益財団法人 介護労働安定センター)

今後の介護業界は、人材の離職を防ぎつつ新たな人材を確保するための工夫が求められます。

介護の事業所・施設で働きやすいのはどんな職場?

魅力ある介護の事業所・施設を作るときの指標となるのが、働きやすさです。多くの職員が働きやすいと感じられる職場環境は、求人への応募数増加や離職率低下につながります。

ただし、理想を追い求めすぎないように注意しましょう。大前提として、誰にとっても働きやすい職場は存在しません。Aさんにとって働きやすいと感じる職場が、Bさんはやりにくいと感じる場合もあります。

介護事業者や採用担当者が自ら働きたいと感じる環境について、明確にしたうえで整備することが重要です。

ここからは働きやすい介護の事業所・施設の特徴6つを紹介します。

事業所・施設に理念がある

事業所・施設が独自の理念を掲げていることは、人材確保の観点からも重要です。

事業所・施設としてどのような方針を目指すのか、方向性を明確に記したものが理念です。経営戦略を立てるうえで重要な指標となるだけではなく、利用者・入居者や職員、求職者に対する約束事でもあります。

理念が明確になっていると、全職員が共通認識をもてます。理念がない、または曖昧な内容では、決断を迫られるときの判断に職員それぞれでブレが生じかねません。

共通認識があれば、日常のケアやサービスで理念をどのように実現していくか考えるようになり、職場に一体感が生まれます。

勤務時間の融通が利く

介護は、変則勤務や夜勤を求められることの多い業種です。見方を変えると、勤務時間の融通が利きやすい職場は大きなアピールポイントになるともいえます。

勤務時間や仕組みを工夫して、融通が利くように雇用条件を整備しましょう。時短勤務できる、休暇を取得しやすいなどメリットがあれば、仕事とプライベート(育児や介護)の両立も可能です。勤務時間を理由にこれまで応募できなかった層を、取り込めるようになります。

人間関係が良好である

職場の人間関係も、離職率や人材獲得に大きく影響する要素です。厚生労働省が行った調査では、2021年時点の退職理由で多いのは、定年などやむを得ない事情を除くと「給料・収入が少ない」と「人間関係」でした。

出典:「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)

人間関係が良好な職場は情報共有や互いへの助力が素早く行われるため、業務効率化も期待できます。とくに介護職は職員同士で協力する場面が多く、チームワークが仕事の出来に大きく反映されます。

職員同士がスムーズに情報共有し、協力し合える職場作りが重要です。職場全体の雰囲気も良くなり、人材が集まりやすくなります。

教育制度が整っている

求人を出しても、必ずしも知識や経験が豊富な人材が集まるとは限りません。人材確保を優先すると、未経験者など幅広い層へアプローチすることも視野に入れる必要があります。どの程度のスキル保有者であってもスムーズに業務を行えるよう、あらかじめ教育制度を整備しておくことが大切です。

教育制度が整っている職場はブランクのある人材も応募しやすく、キャリア形成に取り組みたい層にもアプローチできます。

人材教育の方法は、次のとおり複数挙げられます。

・新規採用者に育成担当者をつける
・業務マニュアルを作成・整備する
・長期・短期の両方の視点で研修を行う

個人の自立と組織の成長を促せるよう、研修制度とともに育成担当者の導入もおすすめです。新規採用者のほか、管理職に昇進するタイミングで、リーダー研修を取り入れる方法もあります。

スキルを身につけてキャリアアップできる

人材がキャリアアップできるよう、スキル取得の支援も必要です。研修の機会を与えるだけではなく、どのようにキャリアアップできるのか基準を明確にすることで、公平性のある評価が行われていることをアピールできます。

ほかにも外部研修の参加や資格取得を応援する制度を用意していると、キャリアアップを視野に入れている人材から注目されやすくなります。たとえば代替職員補助制度によって、職員が研修で欠席中でも問題なく業務を行える環境を整えることも、支援策のひとつです。

メンタルサポートがある

人の日常生活に深く関わる分、介護は精神的な負担も大きくなりやすい仕事です。メンタルサポートへの取り組みが積極的に行われている職場は、職員や求職者に安心してもらえます。

メンタル面のケアにつながる取り組みは、定期的に職員のストレスチェックを行ったり、気兼ねなく相談できる場を設けたりすることが挙げられます。個別面談の時間を取るほか、業務に関する要望を調査して働きやすさを職員と一緒に追求することもおすすめです。

介護の現場で働きやすい職場を作るステップ

前述した働きやすい職場の特徴を考慮しつつ、事業所・施設に反映させましょう。働きやすい職場作りは、3つのステップに沿って行います。

解決すべき課題を明確にする

まずは現状の職場環境を正しく把握し、解決すべき課題を洗い出すことが重要です。職場環境について職員から情報収集を行い、どのような点に不安や不便を感じているか確認します。

直接ヒアリングするほか、面と向かっていえないことも知るために無記名のアンケートをとる方法もおすすめです。

課題を解決するための施策を考える

次は明確になった課題に対して、どのようなアプローチを行えば解決できるのか施策を考えます。ほかの事業所・施設の取り組み事例などを参考にすると、業界関係者ならではの解決策が見つかります。

施策実施後は定期的に振り返って改善する

施策に取り組んだ後は、定期的に振り返って検証することも重要です。当初の課題が解決できているか検証し、必要に応じて施策を微調整します。

たとえば研修の効果が現れていないと感じたら、プログラムや期間を見直してみましょう。一度の施策で職場環境が改善できると思わず、検証と微調整で少しずつ課題を解消していくことが大切です。

都道府県が行っている「働きやすい介護職場宣伝事業」とは

介護業界の人手不足は、行政も重大な問題のひとつとして認識しています。各都道府県で「働きやすい介護職場宣伝事業」へ取り組み、各事業所・施設の人材確保を応援する動きもあります。

「働きやすい介護職場宣伝事業」とは、介護事業者が働きやすい職場作りを行っていることを、都道府県が公表する応援事業です。

介護事業者は、自発的な取り組みを提示して、働きやすい職場作りを行っていると宣言します。宣言した事業所・施設はイメージアップにつながり、求人への応募が増えるなど採用活動への効果が期待できます。

働きやすい職場を作るために国の制度も活用できる!

働きやすい職場作りを実現するためには、採用活動や設備導入など費用がかかる場合もあります。費用面への不安で積極的な改革ができないと悩んでいる方は、国の支援制度を活用してはいかがでしょうか。

たとえば下記の助成金制度が挙げられます。

制度名 特徴
職場意識改善助成金 労働時間や年次有給休暇取得率の改善を目指す企業に対して、取り組み内容に応じて67~100万円を助成する。
中小企業労働環境向上助成金 「介護福祉機器等助成」として介護福祉機器の購入費の半額を上限300万円まで助成する。
キャリア形成促進助成金 キャリア形成のための研修や訓練に対して、賃金の一部を助成する。
キャリアアップ助成金 キャリアアップ計画を作成し、定めた期間内に行った取り組み内容(正規雇用推進など)に応じた額を人数単位で助成する。
子育て期短時間勤務支援助成金 小学校就学前の子(例外はあり)を養育している労働者を対象とした時短勤務制度を設け、利用した場合に助成する。

職場意識改善助成金や、中小企業労働環境向上助成金は、労働環境の改善に取り組む企業を応援する制度です。ICT導入や外部コンサルティングの活用など、さまざまな解決策に利用できます。

キャリア形成促進助成金とキャリアアップ助成金は、研修や訓練、雇用条件の改善などにかかる費用を助成してくれます。職員のキャリア育成をしたいときにおすすめです。

子育て期短時間勤務支援助成金は、所定の労働時間以上働いている対象者が出た際に助成してくれます。子育て中の職員を応援でき、幅広い人材の雇用につながります。

上記のほかにも、取り組み次第で活用できる助成金や支援制度があります。取り組みを検討するときは、事前に国や自治体の支援制度を調べて費用負担を軽減しましょう。

まとめ

介護職の人材不足は、超高齢社会をはじめ多くの要因によって深刻化しています。長く働いてくれる人材を獲得するためには、職場環境の見直しが重要です。現在抱えている事業所・施設の課題を洗い出し、働きやすい職場作りを行いましょう。

国や自治体が取り組んでいる支援制度も活用すれば、事業所・施設の負担を軽減しつつ職場環境の整備ができます。