質の高い介護サービスを提供するためには?必要なことをまとめて紹介!

65歳以上の人口が全体の21%以上を占めている状態を「超高齢社会」と呼び、日本は2007年から超高齢社会に突入しており、今後も高齢者率は高くなると予想されています。 このような背景から、介護業界ではサービスの質を高める取り組みが注目されるようになっています。 介護の質を高めることは、利用者・入居者に満足してもらえるだけでなく、介護事業所・施設の経営にも不可欠です。そこで今回は、介護事業者が質の高いサービスを提供するために必要なことを紹介します。


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質の高い介護サービスが求められているのはどうして?

まずは、質の高い介護サービスが求められる理由を具体的に紹介します。

利用者・入居者のQOLを向上させるため

超高齢社会を迎え、介護が必要な人のQOL向上は重要な社会的課題でもあります。

高齢になると、身体的機能の低下や、それに伴うストレスで、自立した生活を過ごすのが難しくなります。そこで、質の高い介護サービスを提供できれば、自立した生活を営むことをサポートできます。

そのため、介護事業所・施設は利用者・入居者のニーズを的確に把握し、満足度の高いサービスを提供することが求められています。

介護事業所が安定した経営をするため

介護事業には、さまざまな団体や企業が参入しています。その中で経営を安定させるためには利用者・入居者への、質の高い介護サービスの提供は不可欠です。利用者・入居者から選ばれる事業所・施設になれば、経営の安定につながります。

人手不足でも一定の質の介護サービスを提供するため

超高齢社会に突入したことにより、介護事業所・施設へのニーズは急増しています。一方で労働人口は減少の一途をたどっており、介護人材の確保は介護事業所・施設の大きな課題となっています。

このような人手不足の中でも利用者・入居者が満足のいく日常生活を送れるようにサポートする必要があります。そのためには、介護職員一人ひとりの介護サービスの質を高めることが求められています。

質の高い介護サービスを提供するにはアセスメントが重要!

質の高い介護サービスを提供するためには「アセスメント」と呼ばれる過程が重要です。この過程はさまざまな分野で利用されています。ここでは、介護におけるアセスメントの重要性や具体的な方法について紹介します。

アセスメントとは

アセスメントとは、「評価」「査定」を意味する言葉です。人や物事などの対象を客観的に分析・評価する際に用いられます。

介護におけるアセスメントとは、介護サービスを提供するうえで、利用者・入居者にとって「どのような介護が必要か」を把握するために、家族や交友関係、生活サイクルなどを調べることを指します。

アセスメントが重要な理由

質の高いサービスを提供するためには、利用者・入居者に応じた「ケアプラン」や「介護計画書」の作成が必要です。そこで利用者・入居者を取り巻く環境を正確に把握することで、質の高いケアプランや介護計画書を作成できます。

加えて、介護サービスを提供する介護職員は、ケアプランや介護計画書の意図を理解しなければ質の高いサービスは提供できません。利用者・入居者の生活課題が明確になることで、一人ひとりに応じた適切なサポートをすべての介護職員が行えるようになります。

結果として、利用者・入居者の満足度向上につながるため、アセスメントは重要な過程と言えます。

アセスメントを実施するプロセス

まずは利用者・入居者の望む生活を把握することが基本です。利用者・入居者の要望を踏まえて、心身の状況や生活歴などの情報収集を行います。情報収集では、偏った情報になることを避けるためにも、利用者・入居者本人と、その家族から聞き取りをしましょう。

得られた情報は、国際生活機能分類(ICF)の視点から分析します。ICFは健康状態と生活機能、背景因子から構成されており、以下の6要素から成ります。

・健康状態
・心身機能、身体構造(生活機能)
・生活(生活機能)
・参加(生活機能)
・環境因子(背景因子)
・個人因子(背景因子)

これらの視点から利用者・入居者が望む生活を阻害する要因を分析し、専門的な視点から課題を明確にします。そして、実際のケアプランや介護計画書に落とし込むのが一連のプロセスです。

質の高い介護サービスを提供するために必要なことは他にもある!

質の高い介護サービスを提供するにあたり、アセスメント以外にも介護事業者が行えることも数多くあります。

職員個人の介護に対する姿勢

介護職員が仕事に対する高いモチベーションを持っていれば、質の高いサービスの提供が可能です。人の知識や能力、技術だけでなく、仕事に対する取り組み方が、サービスの質を決める要素となります。

職員個人のモチベーションアップには、事業所・施設内外での研修を設けて職員のスキルを高めたり、働く環境を整えたりするなどの取り組みが効果的です。

チームケア・多職種連携

介護助手などの人材投入や、外部コンサルタントを活用したリーダー職の育成などを通じてチームケアの実践を推進することが、質の高い介護につながります。

また、医師やリハ専門職、歯科医師などと連携してより専門的なケアを提供し、利用者・入居者が安心できる環境を整えることも大切です。

地域連携

医療や介護、予防、生活支援などを一体的・継続的に提供する地域包括ケアシステムの構築も、質の高い介護サービス実現に有効です。住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けることができます。

特に介護予防においては、地域のNPOやボランティア、老人クラブなど地域支援ネットワークとの連携が重要です。

自立支援・重度化防止の取り組み

利用者・入居者の尊厳を保持し、有する能力に応じて自立した生活を送れるよう支援することで、要介護状態の軽減または悪化防止を目指すことも重要です。QOLの向上は、利用者・入居者の満足度にも直結します。

科学的介護の導入

科学的介護とは、科学的な裏付け(エビデンス)に基づく介護のことです。

2021年度より運用が始まった科学的介護情報システム「LIFE」を活用して利用者・入居者のデータを収集・蓄積し、PDCAを回すことで、一人ひとりに適切なケアを提供できるようになります。介護サービスの生産性向上や、家族への理解にもつなげられるでしょう。

これまで介護サービスの質は個人の経験やスキルに頼りがちでした。しかし、科学的介護を導入すれば、どの介護職員も同等に介護サービスを提供できるようになり、結果的に質が上がります。

質の高い介護サービスを提供するためにはICTの導入も検討しよう!

質の高い介護サービスを提供するには、ICT(通信情報技術)の導入も有効です。

ICTは、コンピューターによる単独での情報処理のみならず、ネットワークを活用したコミュニケーションも含んだもので、介護現場での活用も進んでいます。実際の活用例を紹介しましょう。

介護ソフト

介護ソフトを用いれば、これまで紙ベースであった利用者・入居者情報の管理やアセスメントの作成、ケアプランの作成・管理をコンピューターで一元管理できます。

また、請求書作成や給与管理などの事務作業を効率化できるものなどもあり、業務効率化を図れることがメリットです。

関連業務における介護職員の負担が減少することで本来やるべき介護サービスに尽力できるようになるため、サービスの質の向上につながります。

情報共有システム

介護サービスの提供にあたり、職員間での情報伝達は欠かせません。タブレット端末などを導入して業務記録を行い、職員間のデータ共有を容易にすれば、引き継ぎ時の伝達ミスや漏れを防げます。

データを用いることで、より良いサービスの提供も可能になるでしょう。

また、従来紙媒体で行われていた介護事業者間の情報共有も、ICTによるデータ連携が進んでいます。厚生労働省の「ケアプランデータ連携システム」の運用開始にともない、さらに情報共有システムの活用は重要になると考えられます。

介護ロボット

介護サービスの質の向上には、情報を感知して判断し動作する「介護ロボット」の導入も有効です。ロボット技術により、利用者・入居者の自立支援や介護者の負担軽減が可能になります。

現在、以下のようなロボットが介護現場で活用しています。

・移乗介助ロボット
・排泄支援ロボット
・コミュニケーションロボット
・寝返り支援
・見守りシステム

介護ロボットの種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考になさってください。

介護ロボットにはどんな種類がある?導入する方法や利用実態も解説

まとめ

質の高い介護サービスの提供には、核となるアセスメントのほかにも、多職種や地域との連携などさまざまなアプローチが可能です。

近年では、科学的介護やICT技術などの活用も進んでおり、質の高いサービスを提供するとともに生産性の向上も実現できます。利用者・入居者から選ばれる介護事業所・施設になるためにも、職場に合った方法やツールの利用を検討してみましょう。