デイサービスの現況と今後
デイサービスは、在宅介護を支える介護事業のひとつで、自立支援や家族のレスパイトケアなどの重要な役割があります。団塊の世代が75歳以上になる2025年問題や、2018年度の介護報酬改定などにより、需要はますます高まりました。
しかし、2012年からデイサービスの数も激増しており、サービスを提供するだけでは生き残れない状態になっています。
厚生労働省の調査によると、2012年のデイサービスの数は34,107件でしたが、2020年には43,754件まで増加しました。需要が高いとはいえ、急激な事業所の増加により飽和状態の地域もあるほどです。そのため、今後はデイサービスも積極的な営業活動が重要になると考えられます。
出典:「令和2年介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)
出典:「平成24年介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)
デイサービスの営業先
デイサービスが営業を行う際に、訪問すべき営業先について解説します。
ケアマネージャー
デイサービスの利用者は、ケアマネージャーを通して紹介されることが多いです。また、ケアマネージャーの業務であるケアプランの作成がなければ、デイサービスの利用ができません。
ケアマネージャーは、介護事業にとって連携が欠かせない存在です。営業先としては「居宅介護支援事業所」が主で、在籍しているケアマネージャーにデイサービスの情報を伝えます。
ケアマネージャーは業務で外出していることも多いため、あらかじめアポをとっておくとスムーズに営業できるでしょう。また、事業所のパンフレットを用意し、短時間で魅力を伝えるよう工夫することも大切です。
事業所によっては、複数のケアマネージャーが在籍している場合もあるため、直接話ができなかった人にも伝わるように、資料や名刺を多めに用意しましょう。タイミングが良ければ、その場で紹介してもらえる可能性もあります。
そして、ケアマネージャーへの営業で最も大切なことは、コンサルティング営業の視点で自事業所が要介護者に対し、どのような効果や目的にそったケアサービスが行えるかを伝えることです。単なる売り込みではなく、具体的にケアマネージャーに、ケア内容が要介護者のケアプランにフィットするイメージをもってもらう必要があります。
利用者を紹介してもらえた後も、担当者会議やケアプラン変更などで接することが多いので、信頼を得られるように丁寧な連絡を心がけましょう。
ケアマネージャーへの営業方法や注意点などは、下記の記事でも紹介しています。
「ケアマネージャーへの営業方法は?準備すべきことや注意点も解説」
地域の住民
デイサービスを利用する可能性の高い地域の住民も、関係構築に動いておくと良い相手です。実際に利用した住民から良い口コミが広がると、知名度が高まりさらに集客も見込めます。
営業方法としては、パンフレットやチラシのポスティング、無料の見学会や体験会の開催などがあります。まだ利用するつもりはなくても、どのような事業所か気になっている人は多いものです。
デイサービスの企画として、利用者と地域住民が気軽に交流できるイベントも、認知度を高める効果があります。
また、普段から見学しやすいオープンな雰囲気づくりも大切です。「見学できます」「ご相談は無料」といったのぼりを立てるなど、気になっている人が入りやすい工夫をしましょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者や介護者のさまざまな相談を受ける役割があります。デイサービスに対して、主に要支援の方を紹介してもらえるので、総合事業を実施している場合には重要な営業先です。
地域包括支援センターは介護関連で多くの人が相談に来る場所なので、パンフレットの配布で効果が得られる可能性もあります。
医療機関
高齢者が病気や怪我で医療機関に入院すると、退院時には介護が必要になることがあります。そのため、退院後も安心して生活できるように、さまざまな介護事業所と連携を図っているところが多いです。
退院調整が行いやすいよう、スムーズな受け入れ態勢が整っている介護事業所が求められています。
主な営業先は医療機関にある「地域連携室」のメディカルソーシャルワーカーです。医療機関によってはリハビリスタッフに営業を行う場合があります。
回復期リハビリテーション病院は、在宅復帰に向けてリハビリや退院後の生活調整を行う役割があるため、特に営業効果が高いといわれています。
介護老人保健施設
介護老人保健施設とは、病院から退院した後に体調や環境を整えるための一時的な入居施設です。
在宅復帰が目的なので、医療機関同様にスムーズな受け入れ態勢を重視しているところが多いです。
デイサービスの利用者を増やすための営業方法
ここからは、デイサービスの利用者を増やす営業方法について解説します。
訪問営業
訪問営業は、短時間訪問が基本です。営業先によっても異なりますが、特に連携の欠かせないケアマネージャーへの営業は、事前のアポなどは設定せず、訪問したタイミングにケアマネージャーがいれば営業をするスタイルが良いでしょう。
なかには事前にアポイントを求められたり、訪問時にケアマネージャーの不在が何度も続いたりすることもあります。そのような場合は、事前にアポイントを設定すると良いでしょう。営業するケアマネージャーによって、アポの有無はかわってきます。
そして、短時間で自事業所の特徴や魅力が伝わるよう、パンフレットを持ち込み、事業所をアピールするのがおすすめです。事業所の方針や雰囲気を理解してもらえるよう、パンフレットを作る際は図や写真を入れたり、文章のサイズを大きくしたりするなどして工夫しましょう。
内覧会・見学会
新規事業所の場合、内覧会や見学会を実施して多くのケアマネージャーや地域住民に認知してもらうことが重要です。ケアマネージャーや地域住民が来やすいスケジュールに調整し、数日間開催することで訪問者を増やせます。
訪問者用のパンフレットと名刺も事前に準備して、事業所の特徴や強みを直接説明できるようにしておきましょう。事業所の見学や無料体験は、いつでも受け入れられる態勢を整えておくことが大切です。
HPやSNSでの情報発信
近年は、HPやSNSで事業所の情報を確認している方も多いため、認知度を高めるために有効です。誰もが見やすいように、下記のような情報を取り入れるのがおすすめです。
・営業時間
・サービス提供時間
・1日の流れ
・特徴
・レクリエーションの例 など
画像や動画を一緒に掲載することで、より伝わりやすくなります。
1日の活動記録のような、利用の様子が分かるブログやSNS投稿をすると、すでに利用している方の家族にも安心感を与えられるでしょう。
注意点として、情報発信する際は利用者や関係者のプライバシー保護に十分配慮しなければなりません。
勉強会
事業所内で介護に関するカジュアルな勉強会を主催すると、参加したケアマネージャーと新しいつながりが作れます。事業所のデイサービスがどうなっているかをアピールでき、研修にも力を入れている事業所なのだと好印象も与えられるでしょう。
ただし、勉強会の案内や講師の確保など準備にも時間が必要です。主催するのが難しい場合は、ほかの事業所で開催される勉強会に参加することでも、つながりを作る機会が得られます。
まとめ
近年デイサービスの数が急増し、利用者を増やす方法として営業活動が重要になりました。利用者を増やすためには、事業所から関係者に対し、積極的な営業活動をすることが必要不可欠です。
訪問営業時にはアポを取るようにして、事業所の強みや魅力を分かりやすく伝えられるよう入念に準備しましょう。また、事業所の認知度を高めるために、HPやSNSで情報発信したり、内覧会や勉強会を開催したりするのもおすすめです。