利用者に選ばれるデイサービスになる方法|業界の現状や成功例も解説

日本は2010年に高齢化率が23.0%となり、65歳以上の人の割合が人口の21.0%を超える「超高齢社会」を迎えました。 さらに団塊の世代が75歳を迎えるといわれる2025年には、高齢化率が30.3%になると予測されており、介護サービスの需要が年々高まっています。 しかし、需要が高まっているはずのデイサービスで、利用者が増えず悩んでいる事業者もいるのではないでしょうか。利用者が増えない状態が続けば、最終的に倒産するおそれも考えられます。
そこで今回は、利用者が増えないデイサービスの特徴や、自身の介護への想いをより世の中に広げるためにも、利用者に選ばれるデイサービスになる方法を紹介します。
出典:「平成28年版 厚生労働白書」(厚生労働省)


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デイサービスの現状

後期高齢者が増加し、介護サービスの需要が高まる日本において、デイサービス事業者は安泰だと考える人もいるのではないでしょうか。

しかし、需要が高いということは、参入者が増え競争が激化する可能性があるということでもあります。決して安心できる状況ではありません。

実際に、デイサービスが安泰だとはいえないデータも存在します。まずは、日本におけるデイサービスの現状から見ていきましょう。

デイサービスの事業所数が増加している

日本では高齢化にともない、介護事業者数が増加しています。

厚生労働省発表の「令和2年介護サービス施設・事業所調査」のデータによると、2020年10月時点で通所介護施設の件数は24,087件、地域密着型通所介護事業所は19,667件、合計43,754件でした。

平成24年(2012年)の同調査を見てみると、通所介護施設の件数が34,107件(地域密着型通所介護事業所はデータなし)となっており、2020年10月時点の合計値と比べるとデイサービスが増加していることがわかります。

出典:「令和2年介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)

出典:「平成24年介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)

デイサービスの倒産数も増えている

事業所数を増やしているデイサービスですが、倒産するデイサービスも増加しています。

2022年に東京商工リサーチが行った調査によると、2022年1~9月に倒産した「通所・短期入所介護事業」は45件です。また、デイサービス運営グループ17社の連鎖倒産も起こっています

倒産の原因の約6割は、売上不振(販売不振)です。これらのデータから、「介護サービスは需要があるから安泰」とはいえないことがわかるのではないでしょうか。

出典:「介護事業者」の倒産が過去最多  価格転嫁が難しく、大規模な連鎖倒産も発生」(東京商工リサーチ)

利用者が増えにくいデイサービスの特徴

需要が高いはずのデイサービスで、なぜ売上不振に陥ってしまうのでしょうか。中には、新型コロナウイルス感染症の影響など、回避が難しい理由での倒産もありました。

しかし、それ以外にも利用者に選ばれない理由があります。デイサービスを長く運営していくためにも、利用者が増えにくいデイサービスの特徴を知っておきましょう。

強みや特徴がない

デイサービスの利用者が増えにくい理由として、強みや特徴がないことが挙げられます。競合と比較して力を入れているサービスや、その事業所ならではの特徴がないために、決め手に欠けるのです。

何年もサービスの内容を更新しておらず、時流に合っていなければ、魅力を感じてもらえないかもしれません。

効果的なプロモーションができていない

効果的なプロモーションができていないことも、利用者が増えにくいデイサービスの特徴です。デイサービスも街中のお店と同様に、利用者を増やすためには宣伝活動が必要です。とくに重要なのが、ケアマネージャーへの営業です。

多くの場合、デイサービスの利用者は、ケアマネージャーの紹介によって事業所に訪れます。そのため、ケアマネージャーに自身の事業所を知ってもらわなければ、なかなか利用者が増えていきません。

効果的な広告が打てていないと、そもそも事業所を開業したことすら認知されていないおそれもあります。

利用者に選ばれるデイサービスになる方法

利用者が増えない状態が長く続けば、デイサービスを維持できなくなり、最終的には倒産するおそれもあります。利用者に選ばれるデイサービスになるには、どうすれば良いのでしょうか。

どうすれば利用者に喜んでもらえるかを一番に考える

利用者がなかなか増えない状況が続くと、なんとかして今の状態を脱しようと焦ってしまいがちですが、場当たりで動いても利用者に選ばれるデイサービスになれるとは限りません。

事業である限り売上やコストを考える必要はありますが、これはあくまで手段であることを理解し、一番大切なのは、まず利用者の目線に立ってどうすれば喜んでもらえるか、そのために何をすれば良いのかを考えることです。

自身の事業所ならではの特色を打ち出す

特色を打ち出せていないデイサービスでは魅力が伝わらず、なかなか利用者が増えていきません。選ばれるデイサービスになるためにも、ブランディングを徹底し、競合との差別化を図る必要があります。

「あのデイサービスには優秀な機能訓練指導員がいる」など、利用を検討している人やケアマネージャーに想起してもらえる存在を目指しましょう

ケアマネージャーに周知する

イサービスの利用者を増やすためには、ケアマネージャーへ事業所の特色を伝えたり、どういった思いで介護を行っていたりするのかなども伝えるようにしましょう。

ケアマネージャーと信頼関係を築くこと、事業所ならではの特色や介護への思いを伝えられるよう工夫することが重要です。

広告やSNSで事業所の特徴や強みをアピールする

選ばれるデイサービスを目指すなら、広告やSNSを活用して事業所を宣伝しましょう。デイサービスはケアマネージャーから紹介されるのが一般的ですが、利用者の家族がインターネットなどで情報を探しているケースもあるためです。

ホームページを作成したり、TwitterやLINE、FacebookなどのSNSを活用したりして、事業所の特徴などを積極的に発信しましょう。

見学希望は積極的に受け入れる

見学希望者を積極的に受け入れることも、選ばれるデイサービスになるための方法です。資料やホームページ、SNSなどの情報だけでは、なかなか魅力は伝わり切りません。実際に体験に来てもらえれば、より魅力を実感してもらいやすくなります

利用者に選ばれる人気デイサービス事例

特色を打ち出すことで成功したデイサービスの事例として、以下のようなものがあります。

・スポーツトレーナーによるマイクロジムでリハビリや運動を行う

・お弁当屋やカフェで働いてもらうことで、メンタル面の自立支援を目指す

・有償ボランティア活動に参加してもらい、事業所への実質負担額を軽減する

・日常生活での活動量を見える化し、活動量に応じたリハビリを行う

・時間割や一方的な関係を作らず、「デイサービス兼地域の集い場」を作る

・VRを導入し、全国各地の名所の映像などを楽しみながら散歩運動を行う

これらの事例からわかるとおり、人気のデイサービスは利用者が楽しめるかどうか、利用者の役に立つかどうかに軸を置いています

まとめ

高齢化が進む日本において、デイサービスの需要が高まっていますが、なかには利用者が増えず倒産する事業所もあります。

利用者に選ばれるデイサービスを目指すなら、利用者の目線に立って、今のサービス内容を見直してみましょう。