ケアマネージャーの営業禁止なケースは?公正中立であるための注意点

ケアマネージャーは公正中立な立場であることから、してはいけないことが定められています。利用者に対する直接営業もそのひとつです。しかし、居宅介護支援事業所は経営上利用者を獲得しなければならないので、ケアマネージャーに営業指示を出すこともあるでしょう。 この記事では、ケアマネージャーが営業禁止とされるケースや営業活動の実態、そのほか公正中立であるために、業務でやってはいけないことについて紹介します。


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ケアマネージャーは営業禁止ではないが注意が必要

ケアマネージャーは公正中立の立場であるために、営業禁止というイメージを持つ人もいるでしょう。

しかし、ケアマネージャーは、すべての営業が禁止されているわけではありません。居宅介護支援事業所についての情報提供や、同業者や医療機関、介護事業所・施設とのパイプ作りなど、さまざまな形で営業を行っています。

実際に自主的に営業を行うケアマネージャーが多いほか、所属する居宅介護支援事業所からの指示で営業する人もいます。

また、医療機関などと提携のない単独の居宅介護支援事業所を開設している人も営業を行うことが多いようです。特に新規開設事業所の場合は利用者の確保が難しいため、初めのうちは営業が不可欠でしょう。

ただし、利用者に対する直接的な営業など、ケアマネージャーがしてはいけない営業範囲もあるため注意が必要です。

ケアマネージャーの営業活動の実態

では、営業活動を行うケアマネージャーはどの程度いるのでしょうか。

2006年に実施されたインターネット調査によると、ケアマネージャーの約半数(51.2%)は過去に営業経験がありました。

活動内容として多かったのは、所属事業所の案内(30.1%)やケアプラン作成や施設の空きについての情報提供(20.4%)、併設サービスの案内(16.7%)です。営業方法には訪問営業(32.2%)のほか、パンフレットの配布(28.8%)、連絡会や集会での営業活動(26.4%)などが上位に入っています。

ケアマネージャーの仕事には、ケアプランや介護サービス給付管理表の作成、要介護認定の申請代行などが挙げられます。しかし、民間企業の場合は安定した経営のためにケアマネージャーが営業せざるを得ないケースも多いようです。

なお本来、ケアマネージャーは中立的な立場であるため、ノルマや目標の設定をされ営業を求められることに対して、不満を持つ人も少なくありません。日々の対応を誠実に行っていれば、特別な営業は不要と考える人や、営業そのものが中立性を欠くため好ましくないと考える人も多いです。

居宅介護支援事業所側では、ケアマネージャーに営業活動させることが原因で離職につながるケースもあることを認識しておきましょう。

出典:「ケアマネジャーの営業に関する実態調査」(株式会社日本医療企画『介護ビジョン』編集部・株式会社インターネットインフィニティー)

ケアマネージャーがしてはいけないこと

ケアマネージャーは、介護サービス利用者と介護事業者の間に立つ中立的な存在です。しかし、現実には介護事業所が居宅支援事業所を運営しているケースが多く、公正中立性が確保されていないことが問題点として指摘されています。

例えば、自社の系列サービスを利用することを前提にケアプランを作成するケースなどです。また、本来不必要なサービスを含むケアプランを作成して介護報酬の最大化を狙うという悪質な例も出てきました。

これらの背景を受け、厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室(当時)は、「指定居宅介護支援事業者等の事業の公正中立な実施について」(平成11年事務連絡) において、中立を損なう以下7つの違反行為に対して都道府県に指導を求めています。

・要介護認定調査類似行為の禁止

・要介護認定申請の代行

・居宅サービス計画作成の予約

・居宅サービス利用の予約

・指定居宅介護支援事業者の広告

・要介護認定の認定調査の際の居宅サービス計画作成に係る課題分析の実施

・要介護認定の認定調査の際の営業活動の禁止

結論からいえば、ケアマネージャーは特定のサービスについての利用者の確保を目指すような、介護の勧誘とも取られかねない行為はすべてしてはいけないということです。

ここでは、「指定居宅介護支援事業者等の事業の公正中立な実施について」で扱われている違反行為について具体的な例を交えながら解説します。

要介護認定調査類似行為の禁止

要介護認定の手続きには、居宅介護支援事業者から委託されたケアマネージャーが訪問調査を行います。

そのため、ケアマネージャーは要介護認定調査と誤認されるような調査や訪問を行ってはいけません。利用者が営業なのか本来の認定調査なのかが分からなくなり、混乱するおそれがあるためです。

要介護認定申請の代行

居宅介護支援サービスの利用者獲得などを直接の目的とした、要介護認定申請の代行を勧誘することは禁止されています。

要介護認定申請に対して、介護保険サービスの利用を希望する申込者のほうから申請についてサポートを依頼された場合には、ケアマネージャーは必要な協力をしなければなりません。これは、ケアマネージャーの重要な仕事のひとつです。

しかし、ケアマネージャー側から利用者へ申請代行について勧誘することは認められていないため、注意しましょう。

居宅サービス計画作成の予約

居宅介護支援事業者は、利用者が自由に選べます。

居宅介護支援事業者の利用者獲得を目的として、重要事項説明を行わないまま、先にケアプラン作成の予約を受けることはできません。利用者の選択の自由を侵害します。

居宅サービス利用の予約

ケアマネージャーは、ケアプラン作成開始にあたり利用者のアセスメントを行い、適すると思われる居宅サービス事業者の情報を利用者や家族に提供しなければなりません。そのうえで利用者が納得した事業者を選択します。

居宅サービス事業者についての適正な説明やケアプランの作成を行わずに、先にサービス利用の予約を受けてはいけません。

指定居宅介護支援事業者の広告

指定居宅介護支援事業者についての広告は、あくまでも申込者が事業者選択のために必要な事業内容に関することに限られます。

ケアマネージャーが自分の所属する居宅介護支援事業所の系列事業者について、広告や勧誘をすることは認められていません。また、特定の居宅サービスの利用を指定することも禁じられています。

要介護認定の認定調査の際の居宅サービス計画作成に係る課題分析の実施

すでに居宅介護支援事業者を利用していて利用継続の意思がある場合を除き、要介護認定調査の際にケアプラン作成を目的としたアセスメントを行ってはいけません。営業行為にあたります。

要介護認定の認定調査の際の営業活動の禁止

要介護認定の認定調査は、ケアマネージャーが居宅介護支援事業者から委託を受けて行います。

このとき調査員はあくまでも市町村職員の代行という位置づけです。そのため、申込者に対して調査を公平に行う必要があります。また、事業者の選択について予断を与える一切の営業活動をしてはいけません。禁止行為により、委託居宅介護支援事業者の指定が取り消されることもあります。

居宅介護支援事業者側もケアマネージャーに対して自社系列サービスの勧誘を行わせないようにしましょう。

まとめ

ケアマネージャーは公正中立でなければならないので、営業が禁止されるシーンもあります。ただし、営業行為全般が禁じられているわけではないので、営業をする際は違反行為を犯さないよう、注意して取り組みましょう。

また、営業よりも利用者本位の活動をしたいと考えるケアマネージャーもいることについても留意が必要です。利用者獲得が必要な居宅介護支援事業者は、別途営業担当者の配置を検討しても良いでしょう。