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介護業界の外国人介護職員採用が増えている理由とは?
なぜ、介護業界で外国人介護職員の採用が増えているのでしょうか。その理由を、日本の社会的背景と、介護業界の採用実態から解説します。
介護業界は人手不足
介護業界で外国人介護職員の採用が増えている理由の一端に、人手不足が挙げられます。
65歳以上の人口は3,619万人。総人口に占める割合(高齢化率)は28.8%となりました。現在の日本は、約3人に1人が高齢者なのです。
また、令和2年の後期高齢者(75歳以上)の人口は1,872万人。総人口の14.9%に上ります。それに比べ、平成2年の後期高齢者の人口は597万人、人数は3倍以上に増えています。
出典:「令和3年高齢社会白書」(内閣府)
後期高齢者が増えることは、要介護者が増えることにつながります。2000年に介護保険法が施行されたときには、要介護(要支援)認定者が218万人でしたが、2020年には、669万人と3.1倍にも増えているのです。
それに伴うよう介護保険料は増加し続けています。介護保険が施行された2000年当時の全国平均は2,911円でしたが、2021年には6,014円と、2倍以上になりました。
介護職の採用が難しい
介護業界の人手不足は、介護職の採用が難しいことも原因です。公共財団法人 介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」によると、90%もの事業所が、介護事務所の人材不足について「採用が困難だから」と答えています。
どうして採用が難しくなっているのでしょうか。理由のひとつに、介護職にネガティブなイメージがあることが挙げられます。介護業界に対して、「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージを持っている層は依然として多いです。
さらに、競争率が激しく、離職率が高いことも原因のひとつです。
職員が不足している理由(複数回答) n=4,602
・採用が困難である…90%
・離職率が高い…18.4%
採用が困難である原因(複数回答) n=1,142
・同業他社との人材獲得競争が激しい…57.9%
・他業種に比べて、労働条件などが良くない…52.0%
出典:「令和元年度介護労働実態調査」(公共財団法人 介護労働安定センター)
平成28年の全職種の有効求人倍率は1.36なのに対して、介護分野の有効求人倍率は3.02です。そしてこの倍率は、平成22年度から年々増加し続けています。同業他社との採用の競争率も高まっているといえるでしょう。
出典: 「介護人材確保対策(参考資料)」(厚生労働省)
外国人介護職員を採用するメリットと課題
外国人介護職員の採用は、人手不足の解決法として有効です。
ただし、実際に雇用を受け入れるには、課題も発生します。ここからは、外国人介護職員を採用するメリットと課題について解説していきます。
メリット
外国人介護職員を採用する大きなメリットは、人手不足の解消です。
外国人が介護福祉士として働くため、2017年に介護ビザが設けられました。入管法に設けられた就労ビザのひとつです。介護ビザを取得すると、外国人は在留期間中の更新回数が無制限になります。人材不足が解消されるため、長期的な雇用が実現できるのです。
また、職場に活気が出ることもメリットのひとつです。日本で介護職員として働くには、厳しい語学力試験をパスしなければいけません。
ほかにも試験なしで職員の受け入れをしている国があるなか、来日される方は大変意欲的です。
仕事や日本語を覚えるために熱心に勉強する姿は、ほかの職員に刺激を与えます。
課題
一方で、外国人の介護職員を雇用するためには、課題もあります。
ひとつは言葉や文化の壁です。実際の業務や要介護者とのコミュニケーションには、相応の日本語能力が必要になります。先ほどメリットとして職場に活気が出ると述べましたが、日本語力の不足によって周りとうまくコミュニケーションが取れず、帰国する外国人の介護職員がいることも確かです。
文化の違いが外国人の介護職員にとって大きなストレスになることもあります。さらに、初期コストや教育に時間を要します。研修を行う体制が整っていること、教育にかかるコストを負担できる体力が必要になることが、外国人の介護職員を雇用するための課題です。
外国人介護職員を受け入れやすい事業所・施設の特徴
ここまで、外国人介護職員を受け入れるメリットと課題をお伝えしてきましたが、どのような事業所・施設であれば、外国人介護職員を受け入れやすいのでしょうか。その特徴を3つのポイントに分けてご紹介します。
受け入れる準備が整っている
外国人介護職員を雇用するにあたって従業員や利用者に理解を得ることが、従業員・利用者・外国人介護職員にとって重要です。下記の内容を、事前に自社の介護職員へ伝えておきましょう。
・外国人介護職員がどのような立場で従事するのか
・外国人介護職員に対して、どのような業務指導が行われるのか
・外国人介護職員にどのように接すれば良いのか
介護福祉士養成施設から、事前に外国人介護職員の人柄や価値観を伝えてもらうのも良いでしょう。また、外国人介護職員が何かに悩んだとき、信頼関係を築いている養成施設の職員がいれば相談相手としても適切です。
外国人介護職員の指導者やサポーターがいる
介護職員のサポート体制を整えることで、長期的な雇用が期待できます。現場における人手不足の解消や、労働環境の改善にもつながるでしょう。
一方でサポート体制が整っていないと「外国人介護職員を採用してもすぐに辞める」という悪循環に陥るおそれがあります。外国人の介護職員を採用する場合、即戦力を求めるのではなく、一から育てることができる環境を用意しましょう。
・職員の高齢化が進んでいて、若い世代の職員を育てる意欲がある
・外国人介護職員に関わらず、OJTなどの教育システムがある
このような事業所・施設であれば、外国人介護職員を受け入れやすいです。
また、よりやりがいを持って働いてもらうために、キャリアアップの支援も必要です。事業所や施設でどのように働いていくか、ヒアリングをするサポーターを設置すると効果的です。
介護ビザを取得すれば永続的に勤務することが可能なため、外国人介護職員のキャリアアップは、長期的な雇用にもつながります。
外国人介護職員の生活もサポートできる
日本で働く意欲があっても、言葉の違いや文化、風習の違う土地で働くには、不安や不自由さを感じる場面も多いでしょう。生活のサポートがあることで、外国人介護職員のストレスを軽減できます。
たとえば、行政上の手続きや住まいの契約手続きをサポートしたり、地域に馴染めるよう地域社会活動への参加を促したりすることも工夫のひとつです。
さらに、一緒に暮らす家族のサポートをすることもできるでしょう。カウンセリングや感染症対策もあると、外国人の介護職員も安心して来日できるはずです。
外国人介護職員の採用のコツと注意点
ここでは、実際に外国人介護職員の受け入れをすると決めた際、どのように採用していけば良いのか、採用前から採用後までのフローを解説していきます。
自社の方向性と求める人材像を明確にする
まずは、どのような人材を求めているのか、方向性と人材像を明確にしましょう。ターゲットとなる層を想定するだけでなく、ペルソナまで設定できると良いです。ターゲットは、年代、性別、既婚未婚など、単純な分類で絞ることができますが、ペルソナは、その人の目的や家族構成など、より具体的に人物を想定します。
外国人の労働者の中には、「日本でずっと働きたい」と考える人もいれば、「日本で介護を学んで、自国に技術を持ち帰りたい」と考える人もいます。事前に介護事業所・施設が方向性と求める人材像を具体的にしておけば、雇用した後のお互いのミスマッチを防げます。
外国人介護職員が要件を満たしているか確認する
外国人介護職員の受け入れには、主に4つの方法があります。
1.在留資格「介護」
2 .EPA
3.技能実習制度
4 .特定技能
それぞれ要件が異なり、就労できる期間も決まっています。いずれにしても、永続的な勤務には、介護福祉士の資格取得が必須です。
それぞれの詳しい説明は、以下の記事で解説しています。
外国人介護職員の受け入れの現状は?外国人介護職員の人材確保の課題と対策
採用後は外国人介護職員のサポートを徹底する
採用にも相当の労力とコストがかかります。離職率を下げるために、外国人介護職員のサポートを徹底しましょう。
困っていることや不安をすぐに相談できるような、話しやすい職場づくりをする必要があります。また、自身のキャリアプランを立てるため、ヒアリングの機会を設けることも重要です。これからどのように働いていきたいのか、どんなキャリア目標があるのか、その希望にできるだけ応じたステップアップを用意できると良いです。
さまざまな工夫で、外国人介護職員が長く働ける環境を整えましょう。
まとめ
国の違い、文化や風習の違いによって、サポートが必要になることは確かです。しかし労働者としては、外国人だからといって日本人と本質的には変わりません。
少子高齢化が進む中、外国人の介護職員を積極的に採用していくことは、介護業界の人手不足の解消や、労働環境の改善につながります。
採用を強化するには、以下のポイントを押さえておきましょう。
・外国人介護職員は、厳しい語学力試験や介護福祉士の資格試験をパスして日本に来るため、勉強熱心であることが多い
・受け入れ体制を整えることで、長期的な雇用につながり、人材不足を解消できる
・採用後のミスマッチを防ぐため、採用の方向性やペルソナを設定する
介護業界は長年、人手不足が大きな課題となっています。外国人の介護職員をうまく採用できれば現場のスタッフにも余裕が生まれ、ケアの質向上にもつながるでしょう。