介護職員に外国人を採用するには?4つの在留資格の受け入れの仕組みと留意点

人材不足が深刻化している介護業界では、国をあげて外国人人材の受け入れを進めています。 しかし、「外国人採用の具体的な方法がわからない」「外国人の介護職員を採用することに不安がある」という採用担当者も少なくないでしょう。 この記事では、介護職に外国人を採用するための主な4つの在留資格、外国人の採用方法の流れと注意点を解説します。


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介護職員に外国人を採用する主な4つの在留資格

外国人が介護職員として働くための在留資格は、主に以下の4つです

・在留資格「介護」

・EPA

・技能実習制度

・在留資格「特定技能1号」

在留資格の種類によって、受け入れの仕組みや要件も異なります。

まずは、4つの在留資格の特徴と受け入れ要件を、それぞれ解説します。

在留資格「介護」

在留資格「介護」とは、2017年9月に新設された在留資格で、外国人が介護職員として働くための就労ビザです。

在留資格「介護」を取得するには以下の条件を満たす必要があります。

・「介護福祉士」の資格を取得していること

・日本の会社(介護施設)と雇用契約を結んでいること

・職務内容が「介護」または「介護の指導」であること

在留資格「介護」の受け入れ方法はふたつです。

1.介護の専門学校等の養成施設を卒業しながら介護福祉士の資格を目指す『養成施設ルート』

2.技能実習生として入国し、介護施設で働きながら介護福祉士の取得を目指す『実務経験ルート』

介護福祉士の試験は国家資格であり、すべて日本語で行われます。外国人の介護職員は、日本語能力も高く即戦力としての活躍も期待できます

さらに在留資格「介護」の資格者は、家族(配偶者・子)の帯同が可能であり、在留期間更新に回数制限がありません。定年まで働くことができ、長期雇用が見込めます。

EPA

EPAとは、日本と経済連携協定を結んでいるインドネシア・ベトナム・フィリピンの3ヶ国に住む介護(もしくは看護)の有資格者に、介護福祉士資格を取得してもらうことを目的とした制度です。国によって要件や就労までの流れが異なります。

フィリピン

日本語能力試験N5程度以上あり、次のいずれかの条件を満たしている者

・4年生大学卒業かつフィリピン政府による介護士の認定をされていること

・フィリピンの看護学校を卒業

インドネシア

日本語能力試験N5程度以上あり、次のいずれかの条件を満たしている者

・大学もしくは高等教育機関の修了証書Ⅲ以上の取得者で、インドネシア政府による介護士の認定をされていること

・看護学校の修了証書Ⅲ以上の取得者もしくは大学の看護学部卒業者

ベトナム

・3年制もしくは4年制の看護過程を修了した日本語試験N3以上の者

企業側のEPAの受け入れ要件は以下の通りです。

・法令に基づく配置基準を満たしている定員30名以上の施設

・常勤介護職員の4割以上が介護福祉士を有する職員である

・適切な研修体制が確保できる

・候補者の宿泊施設が用意できる

・候補者の帰国費用の確保など帰国担保措置を講じることができる

EPAは在留資格「特定技能」の創設に伴い、4年間EPA介護福祉候補者として就労・研修に従事した人は、技能試験・日本語試験免除で「特定技能」への移行も認められます。さらに、最長5年間、引き続き就労が可能です。

技能実習制度

外国人技能実習制度は、先進国である日本から発展途上国への技能移転を目的とした制度で、「技能実習生」として日本に滞在するための在留資格です。

外国人技能実習制度は以前からあったものの、介護が加わったのは2017年11月になります。在留期間は通常3年ほどで、最長で5年さらに試験に合格すればより長く日本で働くことができます。

介護事業所が技能実習生を受け入れる要件は以下です。

・訪問介護施設では受け入れは不可

・事業所設立から3年以上経過している

・看護師、あるいは職務経験5年以上の介護福祉士を指導員としてつける

・指導員の人数は実習生5人につき1人以上

技能実習生となるための要件は以下のとおりです。

・実習生は自国や介護施設や障がい者の日常の世話、機能訓練などの実務経験がある

・看護過程を終了したか、看護師資格を持っている

・介護士認定などを受けた

ただし、国によって介護という職種がない場合もあります。その場合は類似する職業や経験が認められているようです。

また、日本語の能力については、来日した際に「日本語能力検定試験でN4」「基本的な日本語を理解できる」レベルが必要です。

介護の技能実習生の受け入れ手順は以下の通りです。

(1)管理団体への申込み

技能実習制度は「団体監理型」と「企業単独型」の2つの受け入れ方法があります。多くの企業が採用している受け入れ方法は「団体監理型」です。

団体監理型の場合、管理団体へ雇用条件確認書、就業カレンダーなどの必要書類を提出し、申込む必要があります。管理団体へ申込むことで、技能実習生の受け入れに必要な手続きや対応を代行してくれたり、サポートしてくれたりします。

一方、「企業単独型」の場合は、海外の視点や関連する企業へ直接、受け入れ側の日本企業が手続きなどを行う必要があります。そのため、海外企業とのつながりのある日本企業でなければ、企業単独型での技能実習生の受け入れは困難でしょう。

(2)実習希望者の募集及び面接準備

事業協同組合が、送り出し機関をとおして実習希望者を募集します。

(3)面接の実施

実習希望者に対して企業が面接を行います。近年は現地面接やオンライン面接など多様化しています。

(4)採用する外国人に対して講習を行う

入国前に、約2ヶ月以上に及ぶ日本語や介護についての講習を受けます。

介護分野で従事経験がない場合は6ヶ月以上または320時間以上、教育機関にて介護職に関する教育課程の受講が必要です。

(5)実習実施に向けて人員を配置する

受け入れる企業は、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員をそれぞれ1名以上配置します。

技能実習生の受け入れはルールが多いので手続きに注意が必要です。アフターフォローがあり、信頼できる監理団体を選ぶのもポイントのひとつでしょう。

在留資格「特定技能1号」

「特定技能」は就労を目的とし、さらに人手不足を解消するために 2019年に設けられた在留制度です。

介護分野では「特定技能1号」のみが取得できます。特定技能「介護」では、更新をしながら通算5年就労ができます

「特定技能1号」を取得するには、以下の3つの試験に合格しなければなりません。

1.介護技能評価試験

2.国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上

3.介護日本語評価試験

ただし、元EPA や元実習生は試験が免除になります。

企業側の特定技能「介護」の受け入れ要件は以下の通りです。

・ひとつの事業所に対し、常勤の介護職員の数が上限

・外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に介護技能分野特定技能競技会に加入する

・派遣やアルバイト、訪問介護系はNG

特定技能外国人への就労・生活支援も必要です。実際に受け入れる前は、出入在留管理長に支援に関する計画書を提出しなければなりません。

今回ご紹介した4つの在留資格において当然ではありますが、外国人だから、日本人だからといって賃金に差はありません。同様の介護業務を行うのであれば、同等の賃金の支払いが必要です。

介護職に外国人を採用する際の流れ

外国人を採用するには、基本的な採用フローに加えて、在留資格やビザの確認、資格取得に必要な書類作成などが必要になります。以下に、外国人を採用する際の流れをまとめました。

採用する外国人の在留資格・条件や経歴を確認する

在留資格「介護」の場合は、ハローワークや求人サイトに募集要項を掲載して募集します。採用候補者の現在の在留資格や、在留資格「介護」を取得できる条件・経歴が満たされているか確認しましょう。

採用後に必要な手続きを行う

​​労働条件を記した内定通知書や雇用契約書の作成をします。在留資格が「留学」の場合は、採用する外国人に、「介護」へ変更してもらってください。また、ハローワークへの届け出も必要になります。

介護職に外国人を採用するときの注意点

外国人介護職員には日本の労働法が適用されます。また、採用後は文化の違いにも配慮が必要です。

保険・年金の加入

外国人を採用した際は、社会保険や労災保険など忘れずに加入手続きを行いましょう。また、住民票やマイナンバーの登録・発行もされます

納税義務があり、年金手帳の発行もされるので、年金手帳発行手続きを忘れないようにしてください

「介護」に関するビザの取得

外国人を採用する際、在留資格や「介護」に関する就労ビザを取得していることが必須条件です。

資格と業務内容が不適切だった場合「不法就労」と見なされ、雇用主が罰せられる場合があります。採用候補者の所有資格と業務内容が一致しているか、在留期間が過ぎていないか注意して採用活動を行いましょう

ある程度のコストが必要

外国人介護人材の確保は、人手不足の現場で積極的に検討すべきでしょう。ただし、採用にはある程度のコストがかかります。人材紹介会社や人材派遣会社を利用するとなると、手数料も多くかかるでしょう。

また、先述のとおり「同一労働同一賃金」は、外国人にも適用されます。日本人の介護職員と同じ業務を任せる場合には、雇用形態にかかわらず同等の賃金を支払う必要があります。加えて、制度上、監理費や支援委託費といった日本人にはかからないコストも必要です

明確な採用計画を立てた上で、実施を検討することをおすすめします。

宗教や文化の違いに対しての配慮

国によって宗教や文化、生活習慣が異なります。食生活や時間感覚、仕事への姿勢も日本人とは異なる点もあるでしょう。

そこで、外国人介護職員の生活環境や職場でのフォローは欠かせません。日本独自の価値観や慣習を伝えながら、外国人介護職員の文化や風習も尊重するようにしていきましょう。

まとめ

外国人が介護職で働くことができる方法として主に4つあります。受け入れ要件や採用方法もそれぞれ異なるため、自社のニーズに合う採用方法を選びましょう。

採用後は文化の違いにも配慮して、適切なアフターフォローを行ってください。外国人受け入れの制度の仕組みや目的を理解し、双方にとって有益な採用活動を目指しましょう。