外国人介護職員の受け入れの現状は?外国人介護職員の人材確保の課題と対策

介護業界の人手不足を解消する目的で、外国人の受け入れに興味を持つ企業や、実際に採用している企業が増えてきました。 この記事では、外国人介護職員の受け入れの現状について、介護業界が抱える外国人介護職人材確保の課題点と今後の対策について解説します。


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外国人介護職員の受け入れが進む介護業界の現状について

日本の介護業界の慢性的な人手不足に頭を抱える事業所・施設は少なくありません。さらに少子高齢化に伴い要介護者は年々増加しており、介護業界の人手不足はさらに深刻化すると予想されています。

そこで、国内のみならず、外国人介護職員の受け入れに注目が集まるようになりました

まずは、外国人介護職員の受け入れを進める介護業界の現状について解説します。

介護業界における2025年問題

「2025年問題」とは、戦後1974年〜1949年の第一次ベビーブームに生まれた団塊世代が後期高齢者・75歳以上に達し、医療や介護など日本社会に様々な影響が生じることを指します

2025年には、全人口の約4人に1人が後期高齢者になり、国全体の高齢化率が高くなります。高齢者が増えるということは要介護者が増えることであり、介護人材や事業所・施設の不足が予想されます。医療・介護・社会保障の負担もいっそう増えるでしょう。

介護業界における2025年問題は、人手不足の深刻化に加えて、介護保険の財源不足、介護保険サービスの利用料や介護保険料の増額も懸念されます。

介護業界が持つ3つのイメージと人手不足

介護業界は、

・給与が安い

・きつい仕事

・汚い・危険な仕事

という「3K」のイメージをもたれやすいです。

実際に、厚生労働省の「令和2年介護従事者処遇状況等調査結果」によると、他業界と比べて給与水準が低いことが示されています。

出典:「令和2年介護従事者処遇状況等調査結果」(厚生労働省)

そのうえ同業他社との競争が厳しく、募集をしても人が集まらない。さらに離職率が高いなど採用の難しさに直面しているのが現状です

とはいえ、世の中のイメージには誤解があることも多いでしょう。

介護は高齢者の方の栄養管理や認知症のケアをとおした自立支援や重度化防止をサポートする責任の大きい仕事です。利用者の方やご家族の方に感謝される機会が多く、やりがいをもって働いている人も多いです。

給与の課題については、政府が介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の仕組みを創設しています。今後も処遇の改善が期待されており、世の中のイメージもだんだんと変わっていくでしょう。

人手不足の解決を考えるなら、「介護の魅力」について改めて考え直したうえで、採用活動に取り組むことが重要です

介護業界で働く外国人介護職員の現状

近年は、介護業界の人手不足を解消するため、国をあげて外国人の採用を進めています。それによって介護業界で働く外国人介護職員は年々増加傾向にありますが、思うように受け入れ数は伸びていません。受け入れ体制が整っている事業所・施設も少ないのが現状です

受け入れ制度は、その要件によってそれぞれ定められた在留期間が異なり、求められる日本語のレベルにも差があります。そのため日本語の習得やコミュニケーション、国家試験で苦戦をする外国人介護職員も少なくありません。

介護職に外国人を受け入れる制度の現状とは?

現在、介護職に外国人を受け入れる制度はいくつかあります。そのうち、主に活用されている4つの制度を紹介します。

1.在留資格「介護」

2.EPA

3.技能実習制度

4.特定技能

それぞれの制度の特徴と現状を解説します。

参考:外国人介護職員の雇用に関する事業者向けガイドブック(厚生労働省)

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、2017年9月に新設された在留資格です。外国人が介護職員として働くための就労ビザです。

取得すれば永続的に働くことが可能で、採用後すぐに現場で介護スタッフとして働けます。ただし、高い日本語力が求められる国家資格のため、ハードルが高いといえるでしょう

EPA

EPAとは日本と経済連携協定を結んでいる発展途上国インドネシア・ベトナム・フィリピンの3ヶ国から、看護もしくは介護の有資格者に「介護福祉候補生」として来日し、介護福祉士資格を取得してもらうことを目的とした制度です。

EPA介護福祉士の合格率は40%前後と言われています。一方、国家資格である介護福祉士の全体の合格率は70%前後。EPA介護福祉士の合格率は決して高いとはいえないでしょう合格できれば在留資格「介護」に移行でき、日本で永続的に就労ができます。

また、受け入れ要件や日本語能力は国によって異なります。

国ごとの受け入れ要件は以下の記事で詳しく説明しています。

介護職員に外国人を採用するには?4つの在留資格の受け入れの仕組みと留意点

技能実習制度

外国人技能実習制度は、先進国である日本から発展途上国への技能移転を目的とした制度です。外国人技能実習制度は以前からあったものの、介護が加わったのは2017年11月です。「技能実習生」として日本に滞在するための在留資格になります。

技能実習生は講習を受けている、または実務経験がある外国人人材にのみ限られます。即戦力として期待ができますが、訪問系の介護には従事できません

在留期間は通常3年ほどで、最長で5年です。実習が終わると雇用できなくなってしまいますが、試験に合格すればより長く日本で働くことが可能です。

特定技能

「特定技能」は就労を目的とし、さらに人手不足を解消するために 2019年に設けられた在留制度です。特定技能には1号と2号があり、介護分野では「特定技能1号」での外国人の受け入れが可能となっています

技能実習生とは異なり、一定の専門性と技能を有し、業務内容を習得していれば、指導員を配置する必要はありません。即戦力としての活躍が期待できます。

しかし、雇用は直接雇用のみです。訪問系の介護サービスなどでは特定技能外国人の雇用はできません。

外国人介護職員の受け入れにおける課題点

外国人介護職員を受け入れる際に起きる問題には下記が挙げられます。

・言葉や文化の壁

・ホスピタリティへの不安

ひとつずつ解説していきます。

言葉や文化の壁

日常会話は理解できても、仕事で求められる専門的な日本語の習得に苦労する外国人介護職員は少なくありません。

文化や宗教の違いから、食生活や時間感覚、仕事に向かう姿勢が異なる場合もあるでしょう

日本語の試験に合格できなかったり、コミュニケーションがとれず人間関係に悩んだりして帰国してしまう外国人候補生もいます。

ホスピタリティに対する不安

外国人介護職員に対して、先入観を持っていたり、ホスピタリティを不安視したりする人も中にはいます。しかし、ポジティブ思考で明るい雰囲気の外国人が職場にいることで、活気がでる場合もあります

特に、年長者を敬い家族を大事にするフィリピン人の価値観は、職場で重宝されやすいです。

また、自分の仕事にプライドを持って取り組む姿勢があれば、良い意味で日本人スタッフの刺激になるでしょう。

外国人介護職員の受け入れと支援対策

外国人介護職員を受け入れ、いきいきと活躍し長く就労してもらうには、支援やフォローが欠かせません

外国人介護職員への支援対策や実例を紹介します。

職場での定着支援

まずは、お互いの理解を深めるため、コミュニケーションを図る機会を増やしましょう。

・外国人職員とのランチ会を定期的に開催

・外国人職員への理解を深めるため、夏祭りやスポーツイベントなどを開催

レクリエーションの機会を設けることで、日本語の上達にもつながります

また、言葉や文化が違えば、言葉の捉え方や表現方法も異なります。日本独特の曖昧な表現などは避け、わかりやすくハッキリと明確に伝えると良いでしょう。

マニュアルや作業手順を指示する際に、写真や実演をしながら伝えるのもおすすめです。

生活基盤を整える支援

外国人介護職員に対し、住宅に関する情報提供や適切な医師の紹介を積極的に行い、生活面のフォローをしましょう

日本での社会的なマナーの指導、外国人が地域に馴染めるような関係づくりは、外国人が長く日本で暮らし、働いていくために重要です。

また、外国人介護職員に日本の文化やルールを教えるだけでなく、日本人スタッフも異文化への理解と尊重に努めましょう。

外国人介護職員のキャリアアップ支援

外国人介護職員にとって働きやすい環境にするだけでなく、仕事にやりがいをもってもらうため、以下のことが実施されています。

・外国人職員のキャリア設計に配慮し、他部署を2年間経験できるトレーニー制度を導入

・日本企業で働いた経験のある外国人を講師とする研修を実施

また、外国語で受験できる資格を含め、業務に必要となるさまざまな資格取得の推奨や資金の支援を行うことも大切です。

入社後の定期的な面談、本人のキャリア意向を確認するなど、手厚いサポートでモチベーションを維持していきましょう。

まとめ

介護業界の人手不足を改善するため、外国人の受け入れを積極的に検討していきましょう。文化や風習の違いはあるものの、人材としての価値に着目することが大切です。質の高い介護を提供したいと思う気持ちは日本人だから、外国人だからという違いはなく、介護の現場で活躍している外国人は多くいます。

受け入れ制度には、主に4つの種類があり、それぞれ在留期間が異なります。外国人人材の雇用を考えている事業所・施設の担当者は覚えておくことをおすすめします。