介護職員の離職理由ランキング|離職を防ぐために施設・事業所ができる取り組み

介護サービス業は、さまざまな業界の中でも離職率が高い業界として知られています。高齢化社会が進み、介護サービスの需要が求められる中、介護人材の定着に悩みを抱えている介護事業者もいるでしょう。 今回は、介護職員の離職理由をランキング形式で紹介します。介護人材の離職防止として、国や自治体が行っている取り組みや、職場としてできることも解説しますので、介護事業に携わっている方はぜひご参考ください。


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介護職員の離職理由ランキング

ここでは、「令和2年度介護労働実態調査」で発表された結果をもとに、介護職員の主な離職理由をランキングで紹介します。トップ5までまとめましたので、ぜひご覧ください。

出典:「令和2年度介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)

1位:結婚・妊娠・出産・育児のため

介護施設のなかには、産休や育休といった休業制度が十分に整備されていない職場が見受けられます。妊娠や出産といったライフスタイルの変化にともない、仕事とプライベートの両立が難しくなると、やむなく離職をする職員が出てしまうのが実情です。

中には、産休や育休、時短勤務制度を活用することによって、職場に迷惑がかからないか懸念する職員もいます。産休や育休から復帰した後、職場で孤立を感じてしまい、離職してしまうこともあるようです。

2位:人間関係に問題があったため

介護の現場では、職員同士のコミュニケーションが必要不可欠です。さまざまな職種と協力しながら業務を進めなければならないため、人間関係に問題があると壁にぶつかりやすくなってしまいます。

職場でコミュニケーションが円滑に進められないと、入居者に対して丁寧なケアを行うことが難しくなります。また、施設入居者はもちろん、その家族とコミュニケーションを取る機会もあり、ときにはストレスに感じることもあるでしょう。

周囲に相談しづらい環境になっていると、職場に対する不満や悩みが募ってしまい、離職をしてしまうこともあります。

3位:将来の見込みが立たなかったため

介護職員としての将来設計が難しく、キャリアプランを立てられないといった場合もあります。とくに、適切な評価を受けられていない場合、職場に対して不満を持ってしまい、離職を選択してしまうケースもあります。

ただし、介護職員はステップアップのできる仕事です。リーダーや施設長などキャリアアップを目指すだけでなく、資格を取得しケアマネージャーとなるなど、仕事の幅を広げることも可能です。そのぶん、スキルアップになかなか興味を持てない場合には、見込みが持てないと感じることもあるかもしれません。

4位:収入が少なかったため

介護職は労働条件や求められる仕事内容に対し、給与が安い傾向にあります。そのため、給料が見合っていないと感じる人は多いようです。

介護の仕事は肉体的に負担がかかりやすく、労働時間が不規則にもなりやすいため、人によってはきついと感じるでしょう。仕事内容のわりに給料が安いと感じてしまえば、モチベーションを保つのは難しくなります。

ただし、現在では政府が処遇の改善に取り組んでいます。介護関連であれば、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員処遇改善支援補助金(令和4年10月以降は介護職員等ベースアップ等支援加算)が受けられます。この3つを算定し分配することで、月間数万程度の所得が加算されます。

このような支援を受けている事業所を選ぶことで、所得の不安を払拭することも可能でしょう。

5位:ほかに良い仕事・職場があったため

介護業界には人材不足の施設や事業所が多く、同業他社間での人材獲得競争も激しくなっています。よって、いまの職場より良い条件の職場が見つかれば、前向きに転職を考える職員もいるでしょう。

転職者を受け入れる職場としても、経験者を受け入れるメリットはたくさんあります。転職が有利に進み、さらに待遇も良くなるとなれば、現在の職場から離職せざるを得なくなります。

介護職員の離職を防ぐための国や自治体の取り組み

介護職員の離職を防ぐために、国や自治体ではさまざまな取り組みを行っています。ここでは、主な取り組みの事例を紹介します。

助成金・補助金の支給

まずは、職員の離職防止を図る取り組みを行った際に、介護事業者が受け取れる助成金や補助金について解説します。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

介護施設や事業所に介護福祉機器を導入することにより、離職率の低下を目指した事業者に支給される助成金です。

職員の離職を防ぐには、職場の環境を整えることも重要です。助成金の対象となる介護福祉機器は以下4種類になります。

・移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む)
・装着型移乗介助機器
・体位変換支援機器
・特殊浴槽

両立支援等助成金

介護職員が仕事と家庭を両立できる職場づくりに取り組んだ場合に、事業者に支給される助成金です。複数のコースがあり、職員それぞれのライフスタイルの変化に応じた取り組みをした場合に、助成金を受け取ることができます。

助成金を受け取るための条件として、以下のような例が挙げられます。

・職員が育児休業をスムーズに取得でき、休業後の職場復帰も叶う職場環境を整える
・女性が出産や育児を理由に退職しない環境を整備する
・不妊治療のために利用できる休暇制度を整え、取得できる環境づくりを行う
・介護休業を取りやすい環境づくりに取り組む
・男性職員が育児を目的とした休暇を取りやすい職場風土の構築を行う

ICT導入支援事業 補助金

介護施設や事業所にデジタル機器を導入し、職員の負担軽減に努めた事業者に支給される補助金です。介護業務支援システムを導入した場合に、導入費用の一部が補助金として支給されます。

入居者の管理や請求業務など、システムで管理できる業務はデジタル化により格段に効率が上がる可能性が高いです。ICT化の費用面に懸念があって二の足を踏んでいる事業者の方は、補助金の利用も含めてICT化を検討してみてはいかがでしょうか。

介護事業者の認証評価制度の実施

介護職員の離職防止や、介護職に対するマイナスイメージ払拭のための取り組みを実施した事業者に対して、認証が付与される制度もあります。

認証が付与される基準は、介護の職場における人材育成の環境づくりや就労環境の改善を図る取り組みを行い、それを見える化することです。

取り組みの一例は以下のようなものになります。

・給与体系を明確にする
・職員の負荷低減を目指して業務の省略化に取り組む
・職員の資格取得を支援する

介護職員の離職を防ぐための施設・事業所の取り組み

ここでは、介護職員の離職防止のために、職場として実施できる対策を4つ紹介します。

職員間のコミュニケーションの改善

人間関係に悩み、離職を決める介護職員は少なくありません。人間関係の悩みを減らすために事業者側でするべきことは、積極的なコミュニケーションの機会づくりです。

面談で個々の職員の悩みを聞き、ミーティングで職員同士が関わる機会も設け、コミュニケーション不足による人間関係の悩みを解消できる環境を提供しましょう。

介護の仕事は職員同士の連携が欠かせません。人間関係に起因して業務に支障が出るような事態を避けるべく、事業者が率先して職員とのコミュニケーションを図ることが重要です。

産休や育休制度の充実

結婚や妊娠、出産を機に離職してしまう職員の離職防止を図るのであれば、休業制度の充実を図りましょう。ただ制度を整えるだけではなく、職員が産休や育休を取得できる環境づくりも合わせて行う必要があります。

制度の内容を職員に周知し、利用手続きの方法などの情報を提供し、相談窓口も設けましょう。職員のライフスタイルの変化に柔軟な施設や事業所であれば、職員も長く働きたいと思えるでしょう。

適切な評価制度の導入

職場から適切な評価を受けられていないと、職員は今後の将来性を感じられず、離職をしてしまうかもしれません。

どのように職員を評価したら良いかわからないのであれば、厚生労働省のホームページにある「職業能力評価シート」を参考にすると良いでしょう。職員の能力を見える化することで、キャリアパスをサポートすることにもつながります。

参考:「職業能力評価シートについて」(厚生労働省)

業務効率化

業務の効率化は、職員の負担軽減が期待できます。日々の業務をタイムテーブルで図式化してみると、重複していた業務が見つかるかもしれません。業務に無駄な手順があるなら、積極的に削りましょう。

ICTを活用する取り組みも、業務効率化に効果的です。事業者は職員の働きやすい環境づくりを最優先に、定期的に業務の見直しを行いましょう。

まとめ

介護職員の離職理由を見て、自分の職場にも当てはまりそうだと感じた事業者の方もいるかもしれません。すぐに改善できそうなことには早急に取り組み、職員が不満なく、長く働ける職場づくりを目指しましょう。

全国介護事業者連盟では、介護事業者の方に役立つ情報を発信しています。介事連の設立趣旨や、過去に配信したメルマガの内容も掲載していますので、ぜひ参考にしてください。