老人ホームの効果的な営業方法は?具体的なプロセスを解説

今後、高齢者が急増すると推測されていることから、老人ホームをはじめとする介護事業所・施設は、年々増加傾向にあります。しかし、Web広告などを活用して入居者を募っているが、なかなか入居者が増えずに入居率が低下している、という悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。 多くの競合相手がいる中で入居を検討している方に選ばれ、自身の介護への想いを実現していくために営業方法の見直しも必要です。 そこで今回は、老人ホームの現状や営業先を説明しながら、効果的な営業方法、入居率アップのポイントを紹介します。


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老人ホーム数は年々増加している

厚生労働省の調査だと、2055年には65歳以上の高齢者数が3,704万人になるともいわれています。また、介護施設に関する調査では、2020年10月1日時点で、サービス付き高齢者向け住宅を除く有料老人ホーム数は1万5956施設。前年に比べ822施設、5.4%増加しました。

このように、高齢者の増加とともに「高齢者の住まい」を提供する老人ホームは、着々と増えており、同時に介護事業所・施設の機能に対する多様化も進んでいます。

2000年に創設された「介護保険制度」や、2011年の法律の改正による「サービス付き高齢者向き住宅」の制度が創設されたことで、多様な事業者が参入しやすくなりました。これらの背景からも高齢者の住まいを提供する事業所・施設の供給も増加傾向にあるといえます。

出典:「介護分野をめぐる状況について」(厚生労働省)
出典:「社会福祉施設等調査」(厚生労働省)

老人ホームの営業強化はターゲットを明確にすることが重要

高齢者に数多くの介護施設の中から選ばれるためには、あらゆる生活支援のニーズを分析し、適切な営業戦略と活動を実施することが欠かせません。ここでは、営業力を強化するための要素を紹介します。

ターゲットを明確にする

まずは高齢者の生活ニーズを知ることが重要です。当たり前ですが高齢者の個人ごとに求める特有の生活スタイルがあります。不自由なく営まれるためには、どのようなことを満たす必要があるのか、考えることが大切です。

とくに高齢者が老人ホームを選ぶときは、さまざまな入居条件を確認されます。例えば、以下があります。

・要介護度に応じた施設
・認知症の受け入れ体勢
・医療依存に応じた体制
・リハビリなどの機能訓練の設備 など

ほかにも、個人の性格や価値観、生活レベルなどによっても条件は異なります。

・立地
・利用料
・食事
・レクリエーション など

このようにターゲットの属性を明確にし、自身の介護事業所・施設の特徴に一致する人物像を把握しておくことが重要です。

老人ホームの主な営業先

自身の介護事業所・施設のターゲットを考慮したうえで、営業先を考えましょう。老人ホームの主な営業先と、それぞれの営業のポイントを紹介します。

ケアマネージャー

老人ホームの営業先にまず挙げられるのが、ケアマネージャーです。介護サービスを求めている方を紹介してもらえることから、連携は欠かせません。

そのため、ケアマネージャーに対する営業では、相手のニーズに合わせた情報を提供して良い関係を築くことが重要です。

ケアマネージャーは競合からも営業を受けていることがほとんどのため、「施設の強み」「介護への思い」「空室状況」などといった必要な情報を端的に伝えて、良い印象をもってもらいましょう。

地域包括支援センター

身近な地域包括支援センターも、老人ホームの営業先のひとつです。地域包括支援センターでは、主に要支援の方を紹介してもらえます。

要支援の方を対象としていない施設では、すぐに集客には結びつかない可能性はあるものの、緊急時などに紹介が入ることもあります。潜在顧客を獲得するうえで関係性をもっておくと、プラスになるでしょう。

老人ホーム紹介センター

老人ホームの営業をするなら、老人ホーム紹介センターもおすすめです。

老人ホーム紹介センターでは、老人ホームの入居希望者に対し、相談員が希望条件に沿った事業所・施設を紹介する仕組みとなっています。相談員に事業所・施設の魅力をわかりやすく伝えておくと、入居希望者にも紹介しやすくなることから、営業する際はアピールポイントをまとめておくと良いでしょう。

医療機関・MSW

病院をはじめとする医療機関も、老人ホームの重要な営業先です。医療機関に対しては、医療ソーシャルワーカー(MSW)やリハビリスタッフとの接点をもち、良い関係を築く必要があります。

病院からの紹介は緊急性の高いケースが多いため、事業所のリアルタイムな空室情報を提供すれば、目を通してもらいやすいでしょう。

また、退院支援をする際に本人や家族のカンファレンスをするMSWは、医療ニーズに対応できる幅や老人ホームのリハビリ体制に関する情報を必要としています。MSWは多くの相談や営業を受けていることが多いため、簡潔にわかりやすく情報をまとめて伝えましょう。

地域住民

老人ホーム周辺の地域住民との関係構築も欠かせません。老人ホームを利用する人の多くは、身近な地域住民だからです。

地域住民への営業では、老人ホームの存在を広く知ってもらうことがポイントです。介護相談や勉強会、日々の挨拶などをとおして、積極的に地域の方と交流をもちましょう。潜在顧客を獲得するうえで、良い関係性を作っておくことが重要です。

老人ホームの営業方法の種類

営業方法は、相手によっても向き不向きが変わります。ひとつに偏るのではなく、いくつかを組み合わせて、営業の機会を増やしましょう。

ここでは、営業方法の種類を詳しく紹介します。

訪問営業

訪問営業は、老人ホーム紹介センターや営業先のケアマネージャー、病院を訪問し、直接会って交渉する営業手法です。都心であれば老人ホーム紹介センターへの営業が主流で、比較的地方となるとケアマネージャーや病院への営業になるなど、地域によっても訪問先は多少異なります。事前に電話やメールをしたうえで訪問することもあれば、アポ無しで訪問する場合もあります。

訪問営業では、接触回数を増やし信頼関係を築くことが大切です。こまめに接触して営業先と顔見知りの関係になれば、紹介をもらいやすくなるでしょう。

事業所の特徴や取り組みなどをわかりやすくまとめたチラシ、パンフレットを活用して、積極的に営業に出かけましょう。

電話・FAX

電話やFAXを使う営業も有効です。急に空室が出て紹介を受けたいとき、訪問営業の時間が確保できないときに役に立ちます。

ただし、FAXはタイミングが悪いと見てもらえないこともあります。あくまで営業手法のひとつで、即効性の高い方法ではないと心得ておきましょう。

ホームページやSNS、ブログなどの情報発信

近年はインターネット上で必要な情報収集をする人が多いため、ホームページやSNS、ブログなどで情報発信するのも効果的です。Web広告やポータルサイトを活用しても良いでしょう。

ブログやSNSを活用して日々の活動を発信すると、ユーザーに親しみをもってもらいやすく、老人ホームへの好感度アップに期待がもてます。

ただし何ヶ月も更新されずに放置されていると、期待して見に来てくれるユーザーからの評価が低下するため、少なくとも月1回以上の更新を目指しましょう。

利用者本人、もしくは利用者の家族が直接インターネットやSNSで調べた上で老人ホームを決定することも増えています。

介護事業への需要が高まる中、競合も増えていることからインターネットやSNSなどでのプロモーションは欠かせない営業と言えます。

ここまでご紹介した訪問営業や電話などの営業と組み合わせて実施すると良いでしょう。

老人ホームの営業方法で押さえておきたいポイント

最後に、老人ホームの営業のポイントを紹介します。

競合相手が多いときは、戦略が必要です。多くの事業所・施設の中から選んでもらえるよう、下準備として次の3つに取り組みましょう。

同業他社の情報収集を行い分析する

まずは、競合である同業他社の情報収集をしましょう。近隣の老人ホームの特色や営業手法を掘り下げると、相手の戦略が見えてきます。同時に、地域の高齢者が介護ケアを求めるニーズも把握できるでしょう。

具体的な情報収集の手段としては、厚生労働省の「介護サービス公表システム」の活用が挙げられます。サービス内容をはじめとする詳細情報を簡単に収集できます。そのほかで知りたいことは、独自に情報収集を行いましょう。

自身の事業所の強みや特徴を洗い出す

自身の老人ホームの特徴を分析しましょう。営業でアピールすべき、事業所の魅力や特徴を掘り起こします。

競合相手と比較し、競合にない取り組みやサービス、優れた点があれば、それが強みになります。現在、有料老人ホームがターゲットからどのような条件で選択されているのかを把握したうえで、営業で積極的に魅力、メリットをアピールしましょう。

まとめ

老人ホームの需要は高いものの、利用者を増やすには効果的な営業は欠かせません。営業方法を見直して、入居率アップを目指しましょう。

老人ホームの数は年々増加傾向にあるため、営業でも身近な競合相手との差別化が必要です。自社の魅力や強みを掘り起こし、分析して、効果的な営業活動を心掛けましょう。