デイサービスの稼働率をアップさせるには?7つのステップで徹底解説

稼働率アップを目標に施策を講じているものの、なかなか思うような結果につながらないと悩んでいるデイサービスの経営者の方もいるのではないでしょうか。 今回は、デイサービスにおける稼働率と稼働率をアップさせるのに必要なステップを紹介します。


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デイサービスにおける稼働率とは

デイサービスにおける稼働率とは、事業所を利用できる最大人数に対する利用者の割合を導き出したものです。

稼働率が高ければ経営が安定しますが、稼働率が低いと経営は不安定になり赤字運営に陥るおそれがあります。経営を安定させるには、通常規模型であれば稼働率70%以上が必要です。

平成29年度に独立行政法人福祉医療機構から出されたレポートによると、通常規模型の黒字・赤字別平均の経営状況は、黒字施設の利用率が71.8%で、収益性を示すサービス活動増減差額比率が13.8%と公表されています。それに対して赤字施設の利用率が64.1%、サービス活動増減差額比率は-11.2%です。

参考:「平成29年度 通所介護事業所の経営状況について」(独立行政法人福祉医療機構)

つまり、稼働率が70%以上になるかどうかは、赤字になるかどうかを決めるといえます。稼働率が70%を切ってしまう状況が続くようであれば、問題点を洗い出し、何らかの対策を講じる必要があります。

また、新型コロナの影響で多くの事業所・施設がダメージを受けました。利用控えやキャンセルの増加などによって稼働率が低下し、経営状況が悪化した事業所・施設は多いといわれています。

少しずつ新型コロナ以前の状況に戻りつつありますが、まだ100%とはいえない状況です。介護事業者は、こうしたなかでも工夫して稼働率を上げていくことが求められます。

デイサービスの稼働率の計算方法

デイサービスの稼働率は、以下の方法で算出します。

デイサービスの稼働率=1ヶ月の延利用者数÷(1日の利用定員数×1ヶ月の営業日数)

たとえば、利用定員数が50名のデイサービスで、1ヶ月の延利用者数が800名、営業日数が22日だったとすると、稼働率は以下のように導き出されます。

800÷(50×22)=約73%

この場合、稼働率が70%を超えているのでデイサービスの稼働率は良いといえるでしょう。

しかし、利用定員数が50名のデイサービスで1ヶ月の延利用者数が500名、営業日数が22日の場合は、以下のとおりとなります。

500÷(50×22)=約45%

稼働率が約45%ということは、赤字運営ということでもあります。この場合、早急な対策を講じなければ、運営を続けていくことは難しいでしょう。

デイサービスの稼働率が低くなる原因

デイサービスの稼働率が低くなるのは、どのような原因が考えられるのでしょうか。稼働率が低くなる原因を紹介します。

特徴や強みがアピールできていない

デイサービスは年々増加傾向にあり、利用者がサービスを選べる時代になってきています。競合が増えた現在において、他事業所・施設との差別化が図れていない、ケアマネージャーや地域の方に魅力を認知されていないと、同様のサービス内容であっても、違いを感じる魅力的な事業所・施設を紹介したり、選んだりしてしまうでしょう。

競合がある中でも「このデイサービスを利用したい」と思わせるような特徴や強みをアピールする必要があります。営業方法や宣伝の仕方を工夫して、まずは存在を知ってもらうことから始めましょう。

スムーズな受け入れ体制ができていない

介護職員の間で連携がうまくとれていないと、新規利用者がきてもスムーズに調整できず、稼働率アップが難しくなります。

例えば、利用者の窓口となる相談員が現場の状況をよく知らないと、空きがあるのに待たせてしまうことがあるかもしれません。また、稼働率70%以上という目標を知らないと、現場の状況だけを見て受け入れを渋ってしまうこともあるでしょう。

【7つのステップ】デイサービスの稼働率をアップさせる方法!

デイサービスの稼働率をアップさせるには、段階的な計画が大切です。以下の7つのステップを踏みましょう。

1.現状の問題点を洗い出す

まずは何が稼働率を低くしているのか、原因を分析しましょう。

そもそも利用者自体の人数が少ないのでしょうか、それとも、キャンセルが多いのでしょうか。もしくは、1人あたりの利用回数が少ないのでしょうか。原因がわかると、改善するために何をすれば良いかがわかります。

利用者が少ないのであれば、認知してもらうための工夫をしたり、営業回数を増やしたりすることが稼働率アップにつながるかもしれません。キャンセルが多いのであれば、キャンセルを減らすための対策を講じることで改善が見込めるでしょう。

2.具体的な目標をたてる

具体的な数値目標を立てて、介護職員全体で共有しましょう。例えば、「登録者数95名、キャンセル率10%以下」というように目標を明確にします。

「登録者数をアップする」「キャンセル率を減らす」といった漠然とした目標だと、個々のスタッフもどこまで頑張れば良いのかわかりにくいかもしれません。数字を明確にすることで目標達成に向けて介護職員が一丸となって取り組めるでしょう。

しかし、目標を立てても、現場の介護職員は目標達成に消極的なこともあります。介護職員は収益や集客数を上げるために働いているというより、社会貢献や人のためになること、介護そのものにやりがいを持って働かれている方が多いためです。

そのため、介護職員へ突然目標数などを伝えるのではなく、稼働率を上げること、利用者数を増やすことは、あくまで「介護への想いをより多くの人に知ってもらうため」、「自身の実現したい介護を目指すため」の手段であることを伝える必要があります。

そうすることで、具体的な目標達成が介護職員それぞれの目標ともつながり、モチベーションも高まりやすくなるでしょう。

3.競合分析を行う

利用者を増やすには、競合よりも魅力的なサービスを提供することも必要です。競合となるデイサービスの数を把握し、それぞれのサービス、何を強みにしているかといった情報を徹底的に調べましょう。

競合を知ることで、自事業所・施設の強みや弱みが明確になります。欠けているものを補強し、強みをアピールしていくことで、稼働率アップにつなげられるでしょう。

4.介護職員の離職防止・定着のための取り組みを行う

介護職員が不足していては、いくら頑張っても稼働率を上げることはできません。介護職員の離職を防ぎ、人手を確保するために、働きやすい環境づくりをしましょう。

例えば、賃金や人事評価の見直し、教育制度を充実させるといったことに取り組めるかもしれません。

介護職員が長く続けたいと感じられる職場にすることが大切です。

5.利用者満足度の向上を目指す

自事業所・施設の強みを活かして、利用者のために何ができるかを考えましょう。定期的に以下の事柄を分析するのは効果的です。

・サービスがワンパターンになっていないか

・自信をもって自事業所・施設が一番といえるサービスはあるか

・サービス内容は利用者のニーズに合っているか

少し前は珍しく喜ばれていたサービスでも、今では当たり前のことで利用者が飽きてしまっていることはあります。ニーズは常に変化するものなので、定期的にサービス内容を分析して利用者満足度の向上を目指しましょう。

6.キャンセル対策を行う

キャンセルが多いと、稼働率低下につながります。キャンセルを減らすために、事前連絡をして思い起こさせる、皆勤賞制度を設けるといった対策を講じることができるでしょう。

また、キャンセルが多い利用者については、キャンセル理由の傾向を把握します。理由によっては、キャンセルを見越して定員枠を拡張するなどして対策できるでしょう。

また、キャンセルの連絡があった場合は、「〇日に振替をしませんか?」などと尋ねて、振替利用を促すのもおすすめです。

7.効果的に営業を行う

ただ単に利用を促すだけでは、利用者やケアマネージャーにとって魅力に映りません。

営業の際は、誰に何を伝えたいかを明確にして、適切なツールを用意しましょう。ケアマネージャー営業用のパンフレット、地域利用者に向けたホームページやSNS、老人ホームなどに設置するリーフレットなどです。

営業の要となるのはケアマネージャーなので、積極的に営業をかけましょう。ただし、ケアマネージャーも忙しく活動していることに留意し、訪問のタイミングには注意が必要です。必ずアポを取り、短時間で自事業所・施設のサービスの魅力をアピールできるように工夫しましょう。

まとめ

デイサービスの稼働率を上げると、経営の安定につながります。デイサービスは競合が増えており、サービス内容もどんどん変化しているため、いつまでも同じサービスを提供していては、稼働率が低下してしまうかもしれません。

本記事で紹介した7つのステップを実践し、定期的に競合分析を行い自事業所・施設のサービスを見直して、稼働率アップを図りましょう。