特養のユニットケアとは?介護におけるメリットや課題、具体的な目標の立て方も紹介

入居者一人ひとりに寄り添い、介護職員が小規模単位で生活をサポートしていくユニットケア。従来型の課題を解決するために、ユニットケアを取り入れようとしている特別養護老人ホームの事業者も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、特別養護老人ホームのユニットケアとはどのようなものなのか、目標の立て方や具体例と合わせて紹介します。


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特別養護老人ホームのユニットケアとは?

ユニットケアの考え方や、従来型(多床室)との違いなどを解説します。

ユニットケアの考え方

ユニットケアとは、「居宅に近い居住環境の下で、居宅における生活に近い日常の生活の中でケアを行うこと、すなわち、生活単位と介護単位とを一致させたケア」のことです。

入居者の生活の場として、プライバシーや尊厳を守りながら個別ケアを実現するための手法のひとつです。

入居者のこれまでの生活スタイルを大切にし、個性や生活リズムに合わせて、生活できるようサポートします。

ほかの入居者と部屋を共有することもなく、共有スペースを中心に個室が用意されているのがユニットケアの特徴です。個室で過ごせるため、プライベートを確保しながら自由な時間を過ごせます。

また、1ユニット10名前後で構成され、決められた少人数の介護職員が担当するため、個人に合わせた起床時間や食事提供など、こまやかなケアが可能です。

従来型との違い

ユニットケアと従来型の介護ケアでは、入居者が生活する部屋の構造が異なります。従来型は複数人の入居者で大部屋を共有する多床室である場合がほとんどです。部屋以外に、共用の食堂やトイレがあります。

共用する場所が多く、常にほかの入居者がいる状態で生活するため、プライバシーの保護が難しいのが従来型の課題といえるでしょう。

また、従来型では、食事時間や就寝時間、入浴日などがあらかじめ決められており、スケジュール通りに過ごします。介護職員も担当制ではなく、入居者全員を平等にケアする必要があります。

決められたスケジュールで業務を進めるため効率は上がりますが、ユニットケアのような個別支援は難しい状況です。

ユニットケアの3つの要素

ユニットケアを実現するためには、ハード面・ソフト面・システムの構築などの要素が欠かせません。ここでは、具体的な内容を解説します。

ハード面(環境面の整備)

ユニットケアでは、1ユニット10名程度の個室と共有スペースを効果的に活用できるように考えます。

たとえば、「ユニットごとに入居者同士の交流の場を作る」「各個室に鍵を設置して、プライバシーを守る」「専用トイレや洗面化粧台の整備をする」などです。

また、入居者にこれまでの暮らしを送ってもらえるよう、個室に自分の家具を持ち込んだり、写真や絵を飾ったりすることによって、自宅の生活環境に近づけることが可能です。

ソフト面(生活サポート)

ユニットケアでは、入居者が望む生活スタイルの実現に向けて、担当職員が個別にサポートします。そのため、スケジュールどおりに行動するのではなく、入居者それぞれの生活リズムに合わせた個別ケアをしていく必要があります。

また、入居者同士のコミュニケーションを取りもち、孤立することがないようサポートするのも介護職員の大事な役割のひとつです。人間関係の構築は、社会とのつながりを意識できるため重要な要素といえるでしょう。

システムの構築(運営の仕組みづくり)

ユニットケアでは、理念の共有や介護職員同士の連携、研修などを通じてスキルアップの場を提供するなどの仕組みづくりも重要です。

また、施設長やユニットリーダーを主として行う、「ユニットケアに携わる職員」のマネジメントも随時行う必要があります。このようなシステムを構築することで、一人ひとりの専門性を活かせます。

ユニットケアの目標

希望する生活スタイルに合わせたサポートを実践し、個別ケアを実現することがユニットケアの目標です。介護が必要な方にこれまでと変わらない生活を提供するには、食事や入浴などの基本的な支援が欠かせません。

入居者が望んでいる生活を送れるようにさまざまな角度からサポートする必要があります。

たとえば、ユニット間の入居者同士の交流のほかにも、家族との食事会や地域の美容室を利用するなどが挙げられます。積極的に社会とのつながりを作ることも「普通の暮らし」を支援するうえで大切なことです。

特別養護老人ホームのユニットケアのメリットと課題

ユニットケアには、メリットと課題があります。それぞれのポイントを把握し、より良い介護を目指しましょう。

ユニットケアのメリット

ユニットケアのメリットは、個人に合わせたケアができることです。個室で生活できるため、プライバシーも尊重できます。従来型の施設に比べて、施設内感染のリスクを軽減できるのも個室対応のメリットです。

ユニットケアでは、入居者のケアにあたる介護職員が固定化されます。一緒に過ごす時間が長くなれば、信頼関係も築きやすく、入居者に安心感を与えられるでしょう。

また、少人数対応のため介護職員の目が届く距離で、入居者を見守ることができます。

ユニットケアの課題

ユニットケアの導入事例は増えていますが、なかなか普及には至りません。介護職員の人数が足りず入居者の食事や入浴時間を自由に設定することが難しかったり、ユニットケアのための設備投資が負担になったりする場合があるなど、課題もあるからです。

また、ユニットケアに当たる介護職員は、同じユニットを担当する職員間の連携だけでなく、個人でも自立した正しいケアが求められます。
ユニットケアでは個別ケアを優先するため、時間帯によっては、ひとりで複数の入居者のケアが必要になる場面もあります。

ひとりで判断せざるを得ない状況に対して、やりがいを感じる介護職員がいる一方、責任やプレッシャーを感じる職員もいるようです。

ユニットケアにはさまざまな課題はありますが、今後、特別養護老人ホームが増えていく中で、高齢者の人権擁護や尊厳を維持するためにも、個別ケアの行えるユニットケアは、需要が増えることが予想されます。

ユニットケアで働く介護職員の目標の立て方と具体例

少人数の介護職員がチームとなってケアを行うユニットケアであっても、介護職員一人ひとりが目標をもって介護に取り組むことが重要です。目標をもつことで、介護職員のスキルアップやキャリア形成につながります。ここからは、目標の立て方や具体例を紹介します。

介護職員の目標の立て方

まずは、業務で課題となっていることを把握していきましょう。課題から目標を考えることで、スキルアップなどの前向きな目標設定ができます。たとえば、認知症の方の対応で失敗した経験があれば、認知症についての知識習得を目標にしても良いかもしれません。

さらに、理想のユニットケアに近づけるために、具体的に何をすれば良いか考えましょう。新人であれば、目標とする先輩職員をイメージしながら、具体的な目標設定が可能です。

それぞれの目標に期限を設けて、行動目標にすることもポイントです。「資格取得に向けて、毎日2時間勉強する」「1年後に資格を取得する」など、数値化すれば、行動に落とし込みやすくなります。

高すぎる目標は途中で挫折する原因にもなりかねません。達成可能な目標にして、モチベーションを維持しましょう。

介護職員が立てる目標の具体例

実際にどのように目標を立てていけば良いのか、新人と経験者に分けて具体例を紹介します。

新人の場合

新人の場合は、業務を覚えることを優先します。全体の流れを把握し、知識とスキルを身につけて、1年で自立してユニットケアができることを目標にしましょう。

【具体例】
・入居者の状態を正確に把握する
・安全に介助できる
・職員同士での報告・連絡・相談を迅速に行う
・入居者だけでなく、職員間も積極的にコミュニケーションを図る
・食事・排泄・バイタル・ヒヤリハットなどを介護記録へ正確に記載できる

また、スキルアップのために、介護職員初任者研修などの資格取得を目指すのもおすすめです。

経験者の場合

経験者の場合は、基本的な知識やスキルは身に付いているため、より専門的な知識の習得を目標にすると良いでしょう。

【具体例】
・業務全般を理解し、状況に応じて他の介護職員へ適切な指示が出せる
・入居者の生活パターンを把握し、個別ケアができる
・後輩の成長を促す指導ができる
・職員間のチームワークを意識した環境を整える

実務者研修などを取得すれば、資格を活かしながら仕事の範囲を広げられます。ユニットのリーダー職に就けば、チームをまとめる存在として力を発揮できるでしょう。

まとめ

ユニットケアのメリットは、個別ケアができることです。入居者のプライバシーを確保しながら、今までの生活を継続できるようにサポートします。

ユニットケアは、ハード面・ソフト面・システム構築の要素が必要です。ユニットケアにおいて介護職員の目標を立てる際は、一人ひとりの課題を明確にしたうえで、具体的かつ実現可能な内容を盛り込みましょう。