介護の現場でIoTはどう役立つ?メリットや活用例をチェックしよう

超高齢社会の日本において、介護業界では深刻な人手不足が続いています。そこで注目されているのが、IoTの活用です。IoT技術は介護者の負担を軽減できるだけでなく、介護の質の向上も実現できます。 この記事では、介護でIoTを活用するメリットや、実際の活用例、導入に利用できる補助金について解説します。


この記事は約7分で読み終わります。

介護におけるIoTとは

まず、介護分野におけるIoTとはどのようなことか解説します。

そもそもIoTとは

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されています。簡単に言うと、自動車や家電などの「モノ」をインターネットにつなぐ技術で、ネットワークを通じて情報のやりとりや制御ができるようにすることです。

似た言葉で、ICTという言葉があります。ICTとは「Information and Communication Technology」のことで、日本語では「情報通信技術」のことです。

IoTはインターネットを通じてモノが繋がる技術、ICTは人と人が繋がる技術です。

例えばスマートフォンで人と人がコミュニケーションをとる技術がICTで、スマートフォンなどのデバイスを通じて機械を操作する技術がIoTです。

介護分野でのIoTとは

IoT市場は急速に成長しており、介護分野でもIoTの活用が進んでいます。

たとえば、IoTを搭載した機器を通じて、離れた場所から要介護者の状態や異変を素早く察知することで、介護者への通知や緊急対応ができます。

また、対応履歴をもとにした日常記録の自動化や、介護事業所・施設における在庫管理や発注など、関連する事務作業の自動化も可能です。近年普及が図られている介護ロボットにも、IoT技術が活用されています。

介護にIoT技術を活用するメリット

介護にIoT技術を活用するメリットは、介護職員の負担を軽減しながら、介護の質の向上が実現できることです。また、収集したデータを利用者・入居者の自立支援にも活用できます。

介護職員の負担を軽減できる

IoTの活用により、介護記録作成など負担となっていた事務作業やルーティンワークを減らし、生産性の向上が期待できます。本来取り組むべき介護の重要な業務に時間を充てられます。

また、介護事業所・施設の場合、離れたところから要介護者の状態を確認できるので、夜間の見回りなどの体力的な負担を軽減できることもメリットです。負担軽減は介護職員の定着率向上にも寄与します。

介護の質が向上する

介護職員の負担が軽減されれば、業務にも精神的にも余裕が生まれます。その結果、利用者・入居者に寄り添った介護が実現できるようになるでしょう。

IoTの強みは人が認識できない部分もデバイスが感知できることです。人為ミスの防止につながるでしょう。また、緊急時の対応も迅速に行えます。

IoTは介護職員間の情報共有にも役立つので、チームによるより良い介護の追求にも役立つでしょう。

利用者・入居者の自立を支援できる

介護にIoTを取り入れることは、利用者・入居者の自立支援にもつながります。

IoTを活用することで、利用者・入居者の身体データを参考にして一人ひとりにあった介護メニューを作成できます。その結果、個別介護計画に基づいたケアで自立支援することが可能です。効果の見える化もできるので、職員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

介護現場で活用されているIoT技術の例

ここからは、実際に介護現場で活用されているIoT技術と導入例を紹介します。

見守りサポート

見守りサポートは、各種センサーなどを利用して、離れた場所にいる要介護者をリアルタイムで見守るシステムです。起床や移動など規定の動作が行われたとき、介護者に通知できる機能が付いています。

複数の要介護者を同時に見守れるため、見回りなどにかかる介護職員の負担を大きく軽減できます。また、トラブルの際の録画機能もあるので、事故防止にも役立てられるでしょう。

介護事業所・施設だけでなく、在宅介護でもスマートカメラやセンサー機器を活用した見守りシステムの活用が進んでいます。

遠方の家族が状態を確認できるだけでなく、異常がある際に介護者や家族と連絡を取ったり、駆け付けを依頼したりできるサービスも登場しています。

IoTベッド

IoTベッドは、センサーを付けることで、要介護者の睡眠状態や呼吸数・心拍数などを計測できるベッドです。職員による測定の手間を削減できるだけでなく、離れた場所にある端末からデータを一覧で確認できます。

ベッドからの転倒・転落の防止や、睡眠を含めた健康管理にも役立ちます。

IoTベッドはすでに医療現場で活用されており、電子カルテなどとの連携も実現済みです。将来的には介護事業所・施設でのケアプラン作成にも活用されるようになるでしょう。

介護ロボット

介護ロボットにも、IoT技術が活用されているものがあります。具体的な例をいくつか紹介します。

・移乗介助:介護者の意思に応じた動作アシストや、要介護者の脚力に応じたサポート
・排泄支援:センサーで膀胱の状態をクラウドで解析。トイレに行くタイミングの通知や、排尿の傾向をデータで管理
・入浴支援:ロボットによる入浴支援、入浴状況の通知など

介護ロボットは、介護者・要介護者双方の身体的な負担を大きく軽減することが可能です。また、要介護者にとっては、自身の有する能力を活かして生活ができるため、ADLの向上にもつながるでしょう。

IoTを導入するなら補助金制度を利用しよう

IoTの導入には多大のコストがかかります。しかし、導入時には補助金を利用することも可能です。近年は、介護分野の補助金の対象事業が拡大される傾向が見られます。

補助金は公募期間があり、毎年政策によって実施要項が変更になるので、活用したい場合にはスケジュールと最新の情報を確認しましょう。

ICT導入支援事業

地域医療介護総合確保基金を通じた補助金で、都道府県が主体となって実施しています。ICTを活用した介護サービス事業所の業務効率化を通じて、介護職員の負担軽減を図ることが目的です。

補助の対象は介護ソフトや情報端末、情報通信機器などです。補助額上限は職員数によって最大260万円、補助率は一定の要件を満たす場合は3/4、それ以外の事業所は1/2を下限として都道府県が決定します。

介護ロボット導入支援事業

介護ロボットについても、地域医療介護総合確保基金を利用した導入支援事業が行われています。介護ロボットを活用し、介護事業所の生産性を向上させることにより、ケアの質の維持・向上や職員の負担軽減などを図ることが目的です。都道府県主体で実施されています。

補助額は移乗支援・入浴支援で1台あたり上限100万円、それ以外は上限30万円です。

また、見守りセンサーについては1事業所あたり上限750万円で、補助率は一定の要件を満たす場合は3/4、それ以外の事業所は1/2を下限とし、都道府県の裁量によって決定します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者などが課題やニーズに合ったITツールを導入する際に活用できる補助金です。介護業界に限らず、どの業界でも利用できます。

補助対象は、パッケージソフトの本体費用やクラウドサービスの導入・初期費用などですが、補助金事務局に登録されたツールであることが要件です。

通常枠(A類型・B類型)とデジタル化基盤導入枠があり、それぞれ補助率や補助額が異なります。

また、デジタル化基盤導入枠では、事業で購入したソフトウェアを使用するためのハードウェア購入費も補助対象になっています。詳しくは、ソフトウェアの販売会社に確認しましょう。

まとめ

IoTは介護現場でも有効活用でき、介護者の負担軽減や介護の質の向上に役立ちます。業務の効率化も図れるので、現場の人手不足をカバーするのにも有効です。導入費用がネックになる場合でも補助金が活用できるので、介護事業所・施設の課題に応じて導入を検討してみましょう。