介護業界の離職率14.9%は高い?離職防止のための4つの対策

介護業界はほかの業界と比較して、離職率が高いイメージをもたれています。今回は介護業界の離職率を深掘りしつつ、ほかの職種と比べて本当に離職率が高いのか、詳しく紹介します。あわせて、介護職員が離職に至る主な原因を3つ解説しますので、介護人材の不足に悩まれている介護事業者の方はぜひご参考ください。


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介護職の離職率は14.9%

令和2年に実施された調査によると、介護職員の離職率は14.9%だと分かりました。高く見えるかもしれませんが、平成17年からの推移で見るとこれは過去最低の離職率です。

特に平成28年以降から、介護職員の離職率は右肩下がりになっています。

出典:「令和2年度 介護労働実態調査結果」(公益財団法人介護労働安定センター)

ほかの産業と比べても、介護職員の離職率は決して高くありません。令和元年における全業界の平均離職率は15.6%です。同年の介護職員の離職率が15.4%だったことを考えれば「介護業界=離職率が高い」とはいえないことがわかります。

出典:「2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)

離職率が高い業界の仕事は、大変そう、厳しいといったイメージをもたれてしまうことが多いです。しかし、前述のとおり介護業界の離職率は徐々に改善しています。離職率の低下とともに、職場環境も改善している可能性が高いといえるでしょう。

介護職員が離職する主な3つの理由

続いては、介護職員が離職する理由を3つ紹介します。

理由1.人間関係の悩み

介護職員の離職の理由のひとつとして、人間関係に関する悩みが挙げられます。介護の現場では、職員同士の連携が欠かせない仕事が多くあります。一人だけで仕事をこなすのは難しいため、人間関係が良くないと、仕事の効率が下がってしまうこともあるのが実情です。

仕事を円滑に進めるためには、職員同士のコミュニケーションも欠かせません。コミュニケーションが不足した結果、施設の入居者へのケアが行き届かないような事態になれば、施設全体の問題にもなってしまいます。

理由2.結婚・出産・育児などのライフスタイルの変化

結婚や出産などのライフスタイルの変化により、介護職の仕事とプライベートを両立させるのが難しく、やむを得ず離職してしまう人もいます。原因として、施設や事業所で産休や育休といった各種制度が整っていないことが理由のひとつに挙げられます。

介護では力仕事が多く、夜勤や早番・遅番など、勤務体系が不規則であることから、体力的な負担がかかりやすく、出産や子育てに支障をきたしてしまうおそれがあります。

仕事を続けたいと思っても、職場に産休や育休制度がなければ、プライベートと両立させるのは難しくなるでしょう。さまざまなライフスタイルにあわせた支援制度を設けなければ、施設や事業所で必要とされる人材を確保することが困難になります。

理由3.施設や事業所の経営方針が合わない

介護職員の中には、職場の経営理念や方針が自分の価値観と合っていないことを離職理由として挙げる人も少なからずいます。

たとえば、ある介護職員は時間をかけて入居者と向き合いたいと思っているのに、職場は効率を最優先して業務に取り組む方針をもっていると、介護職員自身はストレスを感じてしまいやすいでしょう。

介護職員が抱えている不満を事業所が汲み取れなければ、知らず知らずのうちに職員が離職してしまうかも知れません。

介護職員の離職を防ぐために施設や事業所でできること

介護職員の主な離職理由に対し、適切な対策を図ることで、職員の離職率を下げることにつながります。ここでは職員の離職を防ぐために、施設や事業所としてできることを紹介します。

コミュニケーションの機会を増やす

人間関係の悩みは、コミュニケーション不足から生まれることも少なくありません。日頃から職員同士の面談やミーティングの機会を増やし、コミュニケーションが取りやすい環境を整えておけば、職員の悩みも減る可能性があります。

相談しづらい職場環境になっていると、介護職員は常に不満や不安を抱えた状態になってしまい、結果として離職という選択をしてしまうかもしれません。

仕事のことはもちろん、気軽に声を掛け合える職場づくりをし、離職率の低下を目指しましょう。

産休や育休制度の充実

介護職員のライフスタイルの変化に対し、柔軟にサポートできるよう、産休や育休制度などを整える必要があります。介護職員の中には、出産や育児・介護を理由に、一時的に職場から離れざるを得ない状況にある人もいます。職場の制度が整っていないと、簡単に復帰することが難しくなるでしょう。

ライフスタイルの変化により職場を離れた職員が、以前と同じように戻ってこられる職場を作ることが大切です。

なお、制度が整っているだけでは、状況が改善するとはいえません。「制度があるのに使えない」「申請したいけど相談しにくい」という職場環境では、介護職員にとって不満要素となるでしょう。産休や育休の制度を整えるにあたっては、職員が相談しやすい仕組みや体制づくりも合わせて行いましょう。

労働時間の見直し

介護職員の負荷を減らし、モチベーションを維持しながら働いてもらうためには、労働時間を見直すことも重要です。介護事業者は職員の労働時間をきちんと把握し、適正な給与を支払う必要があるものの、なかには実行できていない職場も少なくありません。

介護職員の仕事には入居者のケア以外にも、以下のような仕事を行っています。これらの仕事が労働時間として取り扱われていないケースも見られるため、事業者はきちんと労働時間として管理しましょう。

・業務報告書の作成
・シフトを交代する際の職員間での引き継ぎ
・打ち合わせ
・研修 など

また、時間外労働や深夜労働を見直すことも課題のひとつです。介護職員の私生活に支障をきたしてしまうようなシフトでは、離職率の増加を助長させてしまうでしょう。

育児・介護休業法には、家族の育児や介護にあたっている労働者から申請があれば、所定外労働や時間外労働、深夜労働をさせてはならないという法律もあります。介護事業者はこれらの法律を守ったうえで、制度の活用を促進させ、介護職員の負担軽減に努めることが重要です。

従業員のキャリアサポート

介護職員の中には、仕事をしながらスキルアップも目指したいと考える人もいます。毎日同じ仕事を淡々と続けるだけでは刺激がなく、モチベーションも下がってしまううえ、職員の中に将来への不安が芽生えてしまうかもしれません。

介護事業者はスキルアップを目指す介護職員に対し、成長できる環境を提供しましょう。たとえば、資格取得の支援体制をつくり、介護職員のキャリアパスをサポートできるような環境を整えることが挙げられます。

介護施設で働く職員は、介護支援専門員(ケアマネージャ-)や、介護福祉士といった職業の資格取得を目指すケースが多いです。資格を取得できれば、学んだ知識を現職で活かすこともできるため、職員のモチベーションアップや業務効率の向上にもつながります。

成長により仕事へのやりがいを見出す介護職員が増えれば、職場全体の活性化が期待できるでしょう。

まとめ

介護職といえば離職率が高いというイメージをもたれることが多いです。しかし、現在では離職率は徐々に低下し、ほかの業界と比べても高いわけではありません。

ただし事業者として、もし介護職員の離職率の高さに悩んでいるなら、職場環境の見直す必要があります。職場内のコミュニケーションの機会を増やしたり、労働時間を見直したりするなどして、介護職員にとって働きやすい職場づくりを目指しましょう。

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