【2025年問題】介護業界の人材不足の現状と原因、解決策

介護業界は人材が不足しているといわれています。なぜ、人材不足に悩む介護事業者が多いのでしょうか。今回は、介護業界における人材不足の現状と原因、改善に向けた取り組みについて紹介していきます。


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介護業界の人材不足の現状

介護業界は人材が不足しているといわれていますが、実際のところどうなのでしょうか。2025年問題や介護事業所全体における人材不足の現状について見ていきましょう。

2025年には約37.7万人の介護人材が不足する

介護人材の今後については、いわゆる2025年問題があります。人口の多い世代が後期高齢者となり介護需要は高まるものの、供給が追いつかないという問題です。

厚生労働省の需給推計によると、2025年の介護人材の需要が約253万人見込まれるのに対して、介護人材の供給は約215.2万人といわれています。その差は約37.7万人です。需要に対して供給が十分に行われない可能性があることが問題視されています。

出典:「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」(厚生労働省)

人材不足は改善傾向にある

介護事業者の人材不足について2025年問題を取り上げましたが、あくまでも過去の試算になります。人材不足が続いてはいますが、改善傾向が見られるようになってきたのも確かです。

介護労働安定センターの調べによると、令和2年度の介護事業所全体の人材不足感は60.8%であることがわかりました。まだまだ高い水準ではあるものの、令和元年は65.3%であったことから、少しずつ改善していることが見て取れます。

出典:「令和2年度 介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)

介護業界で人材不足が起きている原因

介護事業者の人材不足感は徐々に減少しているものの、依然として多くの介護事業者が人材不足を実感しています。介護業界でなぜ人材不足が起きているのでしょうか。原因としては、介護人材の採用が困難になっていること、離職率が高いことが挙げられます。

介護人材の採用が困難

介護労働安定センターの調査によると、86.6%の介護事業者が、人材が不足していることの理由として採用が困難であることを挙げていることがわかりました。

出典:「令和2年度 介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)

採用が困難というのは、介護事業者が募集をかけてもうまく人材が集まらないということです。

採用が困難な理由としてはさまざまな要因が挙げられます。まず、少子高齢化の問題があるでしょう。日本は少子高齢化により生産年齢人口が年々減少しています。人材が必要でも、母数である生産年齢人口が減ってきていて、うまく人材が集まらないのが人材不足の一因です。

加えて、多くの介護事業者が介護サービスの提供に乗り出したことも関係しているでしょう。介護業界は競合他社との人材獲得競争が激しいことから、採用が困難になっている面もあります。

離職率が高い傾向にある

人材が不足している原因として、「介護人材の採用が困難」に次いで多かったのが、18.2%の「離職率の高さ」です。近年、介護職の離職率は低下してきていますが、依然として定着率は低い状態にあります。

離職の原因のひとつとして挙げられるのが、介護業界の相対的な給与の低さです。調査によりますと、無期雇用の月給制である介護事業者で働く一般労働者の所定内賃金は平均243,135円であることがわかりました。

出典:「令和2年度 介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)

給与・賞与ともに年々改善してきてはいますが、人材の定着にはまだまだ十分とはいえません。求められる知識、肉体的負担や精神的な負担など、業務に対して十分に給与に反映されていないと感じる人も少なくないためです。

ほかにも、離職理由としては、職場の人間関係が要因のものも多く見られます。介護職は、ほかのスタッフとの関わりのほか、介護者や介護者の家族など、多くの人と関わる仕事です。人間関係にストレスを感じることが多くなると離職の原因にもなります。

人材不足の解決に向けた取り組み

介護業界の人材不足の原因には、競合他社との競争激化や定着率の低さなど介護業界特有の理由だけでなく、生産年齢人口の減少や介護の需給も関係しています。

介護サービスの需給については今後の大きな課題になることから、国も改善のためにさまざまな見直しを行ってきました。

ここでは、介護人材の不足を解消するため、国を挙げて行われている取り組みを3つ紹介します。

介護事業者の認証評価制度

人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」は、人材育成や就労環境改善などにつながる取り組みを都道府県が評価を行い、基準を満たした介護事業者の認証評価を行う制度です。

認証評価制度により、介護事業者の人材確保や育成についての取り組みが見える化されるようになります。これにより期待されるのが、介護業界全体のイメージアップ、業界全体の労働環境の整備、介護職の人材確保や離職防止などです。

介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算」は、2019年10月から新設された制度です。介護職員の賃金向上のために、「介護職員処遇改善加算」という制度がありますが、これに上乗せされて介護報酬が加算されるようになりました。

介護職員処遇改善加算は、キャリアパス要件と職場環境等要件を満たす事業所に加算が行われる制度です。新設された介護職員等特定処遇改善加算は、介護職員処遇改善加算を受けている事業所で、職場環境等要件などを満たす場合に加算が行われます。

これにより、経験や技能のある介護職員が、ほかの産業と比較しても遜色のない賃金を受けられるように改善が図られています。

介護職員処遇改善支援補助金

介護職員処遇改善支援補助金」は、コロナ克服や新時代開拓の経済対策で盛り込まれた補助金制度です。処遇改善加算を取得している事業者のうち、賃上げ効果の継続が期待される取り組みを行う事業者を支援する制度になります。

対象は、令和4年2月から9月までの賃金引上げ分です。介護職員1人あたり月額平均9,000円の賃上げ相当分に対して、介護職員数や事業所の総報酬などに応じた交付率が補助されます。

令和4年10月以降は、介護職員等ベースアップ 等支援加算の名称に置き換わり、支給されることになります。

人材不足の解決に向けて事業者ができる取り組み

ここまで説明してきたように、介護サービスの需給の問題や介護職の賃金の問題に関しては、国を挙げた取り組みが行われています。介護職員の人材確保のためには、国の制度をうまく活用すると良いでしょう。

しかし、介護事業者の人材確保は競争が激しいため、国の制度を利用するだけでは不十分な面もあります。事業者自身の取り組みも必要となるでしょう。ここでは、人材不足解決に関する事業者自身の取り組みを紹介します。

IT導入による業務効率化を図る

介護人材不足の解消には、ITの導入が役立ちます。これまで職員が行っていた作業をIT化することで、特定の作業に多くのリソースを割く必要がなくなるためです。

現在の人員でも仕事が回せるようになるほか、職員をほかの仕事に従事させることができるようになるでしょう。業務効率化にもなります。

例えば、日報や介護記録などの介護書類の作成、勤怠管理、給与計算、データ共有などの自動化やIT化を検討してみると良いでしょう。

職員の資格取得を支援する

事業所によっては、資格取得支援制度を導入しているところもあります。給与向上などの施策として、資格取得の支援も検討してみると良いでしょう。

介護職員の資格取得は、介護報酬にも関係しています。資格取得者が増えれば、結果として介護報酬を増やすことができ、職員に還元することが可能です。

シフトの関係上、資格取得が難しい面もありますので、資格取得の費用だけでなく、出張型の講義を取り入れるなど、資格取得をしやすい環境の構築も検討していきましょう。

まとめ

多くの介護事業者で人材不足を感じている現状があります。人材不足の問題を解決するためには、自社での取り組みについて見直しを行うほか、必要な情報を常に取得できるようにしておくことが大切です。

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