介護福祉士実務者研修とは?
介護福祉士実務者研修は、「介護職員初任者研修」の上位資格であり、介護福祉士国家資格を受験するにあたり、必須の資格とされています。
また、介護福祉士は介護の専門家であり、利用者・入居者の身体的・精神的なケアや支援において高度な技術や知識を備えています。介護福祉士が適切に配置されている介護事業所・施設は、利用者・入居者からも信頼を集め、社会的な評価も高まるでしょう。
ここでは、介護福祉士実務者研修の概要について詳しく解説します。
カリキュラムの内容・期間
介護福祉士実務者研修を修了するにあたり、トータルで20科目、450時間の研修が必須とされています。
カリキュラムの内容と受講時間は、主に以下のとおりです。
分野 | 科目 | 受講時間 |
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 5時間 |
社会の理解Ⅰ | 5時間 | |
社会の理解Ⅱ | 30時間 | |
介護 | 介護の基本Ⅰ | 10時間 |
介護の基本Ⅱ | 20時間 | |
コミュニケーション技術 | 20時間 | |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 | |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 | |
介護過程Ⅰ | 20時間 | |
介護過程Ⅱ | 25時間 | |
介護過程Ⅲ | 45時間 | |
こころとからだのしくみ | 発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 | |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 | |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 | |
障害の理解Ⅰ | 10時間 | |
障害の理解Ⅱ | 20時間 | |
こころとからだのしくみⅠ | 20時間 | |
こころとからだのしくみⅡ | 60時間 | |
医療的ケア | 医療的ケア | 50時間 |
合計 | 450時間 |
引用:「実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について」(厚生労働省)
介護過程Ⅲと医療的ケアでは、座学に加え、演習(スクーリング)も実施します。
無資格・未経験の方が介護福祉士実務者研修を受ける場合、規定のカリキュラムを450時間受ける必要があります。そのため取得までに最低6ヶ月程度かかるとされています。ただし、介護職員初任者研修を修了していれば、450時間のうち、130時間分のカリキュラムが免除されます。
受講要件
介護福祉士実務者研修は、介護未経験者でも受講することができます。介護現場での実務経験も問われないため、無資格からでも取得することが可能です。
ただし、介護福祉士実務者研修では、プロの介護職員としてのより深い知識が求められます。そのため、介護初心者にとっては、内容を理解するのが難しいケースもあります。
介護職員のキャリアアップを考える上でも、まずは初任者研修の受講を推奨し、介護の基礎を身につけることをおすすめしましょう。初任者研修を受講した後は、実務者研修も受けられるよう事業所・施設がサポートしていくことが大切です。
取得にかかる費用
介護福祉士実務者研修では、受講するカリキュラムに応じた費用が必要となります。受講費用は養成スクールによって異なりますが、おおよその金額は以下の通りです。
保有資格 | |
無資格 | 10~25万円 |
介護職員初任者研修修了者
ホームヘルパー2級修了者 |
10~20万円
|
ホームヘルパー1級修了者 | 5~10万円 |
介護職員基礎研修修了者 | 3~6万円 |
上記のように、無資格から受講する場合は10~25万円程度、専門資格をすでに取得している場合は3万円~20万円程度の受講費用となっています。
関連資格の取得を含めると、トータルで20万円程度の費用を見込んでおいたほうが良いでしょう。
介護福祉士実務者研修を取得する3つのメリット
介護職員に介護福祉士実務者研修を取得してもらうことによって、介護事業所・施設においてどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットを3つ紹介します。
介護福祉士国家試験の受験資格を得られる
介護福祉士国家試験は、介護福祉の専門的知識や技術を持つ人材を認定するための資格試験です。
試験では、介護の基本的な考え方や倫理観、高齢者の身体機能や心理状態などを問われ、合格者には国家資格として介護福祉士の資格が与えられます。
介護福祉士の資格を取得するには、主に以下の4つのルートがあります。
・福祉系高校ルート
・実務経験ルート
・経済連携協定(EPA)ルート
中でも、実務経験ルートで取得する場合、実務経験3年以上に加え、介護福祉士実務者研修もしくは介護職員基礎研修+喀痰吸引(かくたんきゅういん)等研修を修了していることが要件としてあげられています。
そのため、介護事業所・施設において介護未経験の職員のスキルアップを目指す場合は、実務経験ルートを想定したキャリアパスを検討しておくと良いでしょう。
喀痰吸引と経管栄養など医療的ケアを学べる
介護福祉士実務者研修を受けることで、介護職員は喀痰吸引と経管栄養などの医療的ケアを学べます。
ただし、受講したからといって、医療的ケアが実施できるわけではありません。医療的ケアを行うには、実務者研修を取得後、喀痰吸引等研修を修了し、「認定特定行為業務従事者」の交付を受ける必要があります。
交付を受けたあとに「登録特定行為事業者」として、都道府県に登録を受けている事業者・施設であれば、医師や看護師の指示をもとに、喀痰吸引と経管栄養を行えます。
介護サービスの質の向上につながる
介護福祉士実務者研修を受講してもらうことにより、職員全体のスキルアップにつながります。
スキルの高い介護職員がひとり配置されていると、ほかの介護職員にスキルや知識を教えることができるため、利用者・入居者に対して質の高い介護サービスを提供しやすくなります。
たとえば、医療ケアは介護業界の中でも非常に専門性の高いスキルです。医療ケアの資格を持つ介護職員を適切に配置することで、事業所・施設全体の介護の質全体を向上させることが可能です。
介護福祉士実務者研修の受講方法
介護福祉士実務者研修の受講方法として、主に以下のふたつがあります。
・養成スクールに通って修了を目指す通学コース
・自宅学習をメインとした通信+通学コース
通学コースは、カリキュラムの科目を養成スクールで学びます。一方、通信+通学コースは、テキストで一部の科目を学び、演習の際に通学をするスタイルとなります。
修了判定についてはコースによって異なるため、介護職員が受講する場合はどのような基準で判定されるのか、しっかり確認するよう指導しておきましょう。
介護事業所・施設は実務者研修の取得をどうサポートすべき?
介護事業所・施設において、介護福祉士実務者研修の受講をサポートすることで、介護職員が高度な介護技術や知識を有することができ、介護サービスの質を向上させます。
具体的には、受講費用の一部を補助することで、資格取得のハードルも低くなります。また、受講にあたっては数ヶ月単位の時間がかかるため、その間のシフトを調整することも重要です。
さらに、カリキュラムを修了した介護職員には、資格手当を付与することでモチベーションアップにつながります。
まとめ
介護福祉士実務者研修は、介護職員のキャリアパスを図る上で欠かせない資格といえます。介護福祉実務者研修を受講してもらうことにより、介護職員のスキルアップになるほか、事業所・施設全体の介護サービスの質を高めることにもつながります。
受講するには無資格者で6ヶ月程度かかるといわれています。介護事業者は職員の資格取得にあたり、受講費用の一部を補助したり、受講の時間を踏まえてシフトを調整したりなどして、サポート体制を整えておきましょう。