介護事業で活用できる補助金・助成金一覧|人材確保や育成、設備の導入

介護事業の運営を円滑に進めるためには人材の確保や育成、設備の導入などが欠かせません。 必要な人材・設備を整えるためには、介護事業を対象とした補助金や助成金を上手く利用しましょう。そこで今回は、介護事業で利用できる補助金・助成金について解説します。


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介護事業で活用できる補助金・助成金【人材確保編】

介護事業所・施設の経営者が抱えている課題として、人手不足があげられます。介護事業を円滑に運営するためには必要な人材を確保しなければいけません。

ここでは、人材確保のための補助金・助成金の種類と内容をみていきましょう。

1. 介護・福祉人材確保緊急支援事業補助金

介護・福祉人材確保緊急支援事業補助金は、介護人材の確保と職場への定着を目的に利用できる補助金です。国からの補助をもとに、各都道府県の自治体が窓口となり、介護人材の確保・定着に向けた取り組みをしている市町村や事業者に対して助成を行います。

例えば、千葉県の場合、以下の補助対象事業に該当する取り組みをしている団体に対して補助を行っています。

<例>
・介護人材就業促進事業
小中高生や主婦、高齢者などを対象に、介護の魅力を伝える介護体験やセミナーを実施している市町村や事業者などを支援する。

・就業促進のための研修支援事業
介護現場への就労を希望する者を対象に、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などの受講料を助成。また、研修を実施(委託)する市町村に、研修にかかる費用を支援する。

・潜在有資格者等再就業促進事業
介護福祉士などの潜在有資格者に対し、介護の知識・技術を再確認するための研修や、他分野からの離職者を対象とした介護の職場体験など、介護分野への就業を支援する取り組みを実施している市町村・事業者に支援する。

参考:「令和4年度千葉県介護人材確保対策事業費補助金について(募集)」(千葉県)

2. 中途採用等支援助成金

中途採用等支援助成金は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用の拡大を図った場合に受給できるものです。

支援の内容は、以下のように区分されています。

助成コース 助成の概要 助成額
中途採用率の拡大 中途採用率を20ポイント以上上昇させた事業主に対して助成 50万円
45歳以上の中途採用率の拡大 以下の要件をすべて満たす事業主に対して助成
・中途採用率を20ポイント以上上昇
・45歳以上の労働者で10ポイント以上上昇させた
・当該45歳以上の労働者全員の賃金を前職と比べて5%以上上昇させた
100万円

申請するには、中途採用計画を管轄の労働局に提出する必要があります。中途採用計画は、計画初日の前日から6ヶ月前~計画初日の前日までに提出する必要があるため、注意しましょう。

提出した書類のとおりに中途採用を実施した後に採用ができれば、助成金が受けとれます。

中途採用計画をする前の年と実施した3年後の生産性を比較して、6%以上向上していた場合は、申請すれば追加で助成金を受給することも可能です。

ただし、対象となる労働者の雇い入れをしなくなった・中途採用の実施が難しくなったなど、雇用管理制度に変更が生じた場合は、すぐに届け出をする必要があります。

参考:「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」(厚生労働省)

3. 両立支援等助成金

両立支援等助成金は、仕事と家庭を両立させて働く労働者を支援するための制度です。支援に取り組んだ事業者に一定の金額が支給されます。

両立支援等助成金には5つのコースが用意されており、それぞれ下記のとおりです。

・子育てをする父親を支援する「出生時両立コース(子育てパパ支援助成金)」
・介護をしながら働く人のための「介護離職防止支援コース」
・仕事と育児を両立する人のための「育児休業等支援コース」
・不妊治療と仕事を両立するための「不妊治療両立支援コース」
・新型コロナウイルスの影響で休業が必要な妊婦のための「休暇取得支援コース」

休暇取得支援コースの対象期間は、令和2年5月7日~令和5年3月31日までとなっています。

参考:「事業主の方への給付金のご案内」(厚生労働省)

介護事業で活用できる補助金・助成金【人材育成編】

介護事業の安定した経営には、人材の確保だけでなく従業員の育成も重要です。従業員のキャリアアップを図ることで、仕事に対する意欲も高まります。

人材育成に活用できる補助金・助成金について見ていきましょう。

1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期契約社員・短時間労働者・派遣社員などの非正規雇用社員の正社員化への取り組みに対して支給される助成金です。

正社員雇用に向けて、非正規雇用社員の労働意欲を高めて従業員の確保を図りたい介護事業者向けの助成金になります。

助成金支給の対象となる従業員は、下記のとおりです。

・事業主に通算6ヶ月以上雇用されている有期契約社員
・事業主に6ヶ月以上雇用されている無期雇用労働者
・6ヶ月以上継続して同じ業務に従事している派遣労働者
・事業主が実施した有期実習型訓練を受講し終了した有期契約労働者等

また、正規雇用労働者になるために雇用された有期契約労働者等でないことも、助成金受給の条件になります。

キャリアアップ助成金には、正社員化コースだけではありません。人材育成コース・処遇改善コースなど8つのコースがあります。

キャリアアップ助成金を受給するためには、管理者を設置して3年以上5年以内の計画期間の設定が必要です。各コース実施日の前日までに計画を提出します。

参考:「キャリアアップ助成金」(厚生労働省)

2. 人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、職業訓練開発を実施した事業主を対象に訓練費用の一部を助成するものです。専門知識や技能を身につけるための人材育成を支援する制度になります。

職務に関連した専門的な知識と技能習得するための職業訓練等を計画に沿って実施した事業主に対して支給されます。

人材開発支援助成金には、特定訓練コース・一般訓練コースなど7つのコースがあり、机上研修や実施研修があります。

正社員の育成に活用できる制度であるため、介護職員のスキルアップに役立つでしょう。

参考:「人材開発支援助成金」(厚生労働省)

3. 業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた企業に対して助成金を支給する制度です。

生産性向上を目的に実施された設備投資や人材育成、教育訓練などにかかった費用の一部が助成されます。

助成額は、生産性向上にかかった設備等の費用に一定の助成率をかけた金額と、助成上限額を比較して安い方の金額が支給されます。

助成金支給の条件は下記のとおりです。

・賃金引上計画を作成し事業場内最低賃金を一定以上引き上げること
・引き上げ後の賃金を支払うこと
・生産性向上のための設備等を導入して業務改善をおこない費用を支払うこと
・解雇など賃金引上げ等の不交付事由がないこと

業務改善で取り入れた設備費用を助成する制度のため、通常の業務に伴う経費は対象外になります。

参考:「業務改善助成金」(厚生労働省)

介護事業で活用できる補助金・助成金【設備導入編】

介護事業所・施設でITの設備などを導入することで、介護職員の負担が軽減され、業務効率化や離職防止などの効果が期待できます。

ここでは、業務効率化に役立つ設備の導入支援に活用できる補助金・助成金を見ていきましょう。

1. 人材確保支援助成金(介護補福祉機器助成コース)

人材確保助成金の介護福祉機器助成コースは、介護福祉機器の導入により、従業員の負担軽減・離職率低下に取り組む事業者に対して、助成金を支給する制度です。

介護福祉機器は移動・昇降用のリフト・装着型移乗介護機器・体位変換支援機器・特殊浴槽などの導入費用が対象になります。

支給されるのは導入した設備費用の20%で、上限は150万円です。導入の結果、生産性が上がった場合に申請することで費用の35%が支給されます。

参考:「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」(厚生労働省)

2. 介護ロボット導入支援補助金

介護ロボット導入支援補助金は、介護ロボットを活用した生産性向上を通じて、職員の業務負担の軽減を図った事業者に対して支給されます。

介護ロボットとは、情報を感知・判断して動作をする3つの要素技術を持ち、利用者・入居者の自立支援や介護者の負担軽減を目的として作られたロボット機器を指します。

介護ロボットを導入することで、利用者・入居者の自立支援や従業員の負担軽減が可能です。

各都道府県が実施している制度であり、介護ロボットだけでなく、見守り機器の導入やITC導入も補助金支給の対象になります。

介護ロボットなどを導入し、都道府県に導入後の効果を報告することで補助金を受け取ることが可能です。

参考:「地域医療介護総合確保基金を利用した介護ロボットの導入支援」(厚生労働省)

3. ICT導入支援事業補助金

ICT導入支援事業補助金は、介護ソフトやタブレット端末導入を通じて、介護事業の効率化と従業員の負担軽減を図ることを目的とした制度です。

補助金を受け取るには、導入したソフトで介護のデータベースに情報提供を行うことや、システム導入後の実績報告を提出するなどの要件があります。

ICT導入支援事業補助金の金額・要件・申請期間は都道府県によって異なるため、事業所・施設のある自治体でしっかり確認をしましょう。

参考:「地域医療介護総合確保基金を利用したICT導入支援事業」(厚生労働省)

まとめ

介護事業に補助金や助成金を活用することによって、介護人材の確保・定着につながるほか、業務効率化にも役立ちます。

補助金・助成金を利用するためには、手続きや一定の要件があります。介護事業で補助金・助成金を利用する際は、しっかりチェックし、上手に活用していきましょう。