ケアマネージャーの担当件数の目安・上限は?介護報酬への影響も解説

ケアマネージャーの担当件数を考えるときに、「できるだけ多く担当してもらえないだろうか」と思う介護事業所・施設の運営者は多いでしょう。 しかし、ケアマネージャーの担当件数には法的な上限が定められています。ケアマネージャーに仕事を割り振る際には、上限を考慮しなくてはなりません。 今回は、ケアマネージャーに対して適切に仕事を割り振れるように、ケアマネージャーの担当件数の数え方や上限について解説します。2021年に行われた介護報酬改定や、ケアマネージャーの担当件数の上限を上げる方法などについても解説していますので、ぜひご覧ください。


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ケアマネージャーの担当件数とは

ケアマネージャー(介護支援専門員)には、居宅ケアマネージャーと施設ケアマネージャーの2種類が存在します。

・居宅ケアマネージャー:居宅介護支援事業所などに勤務し、居宅サービス事業者との連絡・調整やケアプラン作成を行う
・施設ケアマネージャー:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)などに勤務し、利用者・入居者のケアプランを作成する

在宅介護を担当するか、施設介護を担当するかという違いはありますが、どちらのケアマネージャーであっても担当件数の数え方は同じです。要介護の利用者・入居者に対しては1名、要支援の利用者・入居者には0.5名として計算します。

単純に「介護事業所・施設の利用者・入居者1人=1件」で計算するわけではないので、担当件数を計算する際に間違えないよう注意しましょう。

参考:「居宅介護支援(参考資料)」(厚生労働省)

ケアマネージャーの担当件数の平均値

ケアマネージャーの担当件数は、ケアマネージャーの種類や勤務先などによって異なるため、一概にはいえません。

厚生労働省発表の「令和2年度介護事業経営実態調査」によると、介護支援専門員(常勤換算)1人当たりの担当人数は平均39.4人とされています。

参考:「令和2年度介護事業経営実態調査」(厚生労働省)

ケアマネージャーの担当件数には法定上限がある

介護事業所・施設の運営側としては、ケアマネージャーにできるだけ多く担当してほしいと思うかもしれません。しかし、ケアマネージャーの担当件数には法定上限があります。

ここでは、居宅ケアマネージャーと施設ケアマネージャーの担当件数の上限について解説します。

居宅ケアマネージャーの担当件数

在宅介護者向けに、ケアプランの作成や介護事業所との連絡・調整などを行う居宅ケアマネージャーの1人あたりの推奨担当件数は35件です。担当件数が40件を超えると、「逓減制(ていげんせい)」により介護基本報酬が減額されるため注意が必要です。

逓減制とは、居宅ケアマネージャーの担当件数が上限を超えると、上限以上の担当分については基本報酬が低くなる仕組みを指します。

ただし、一定の要件を満たすと、担当件数の上限を上げることが可能です。居宅ケアマネージャーの担当件数の上限については、のちほど詳しく解説します。

施設ケアマネージャーの担当件数

介護老人福祉施設などで介護サービスを提供する施設ケアマネージャーは、1人あたり100名まで担当できます。

ただし、100名というのはあくまで法的な上限です。担当件数が多くなるほどケアマネージャーが忙しくなり、心身ともに余裕がなくなってくるでしょう。利用者・入居者1人あたりに割く時間も短くなるため、サービスの質の低下が懸念されます。

「100名までならいくらでも任せて良い」と考えるのではなく、ケアマネージャーの能力や要介護者・要支援者の割合を考慮したうえで担当件数を決定しましょう。

【2021年の介護報酬改定】居宅ケアマネージャーの担当件数の変更点

2021年に質の高い介護サービスの提供を実現すること、多様な介護人材を確保することなどを目的に、介護報酬改定が行われました。その際、介護報酬区分の改定により、居宅ケアマネージャーの逓減制の適用範囲も変わっています。

2021年の介護報酬改定前まで、居宅ケアマネージャーの担当件数は「40件未満」「40件以上60件未満」「60件以上」の3つに区分され、基本報酬が決定されていました。

介護報酬改定後は、以下のいずれかに該当する居宅介護支援事業者に限り、「40件」の部分が「45件」に引き上げられます。

・ICT(情報通信技術)を導入・活用している
・事務職員を配置している

上記の要件に該当しない介護事業所は、介護報酬改定前の区分から変更ありません。

一方で、施設ケアマネージャーの場合は、介護報酬改定前と特に変わらず、担当件数は100人が上限です。

居宅ケアマネージャーの担当件数の上限を上げる方法

介護事業所の規模や利用者の人数などによっては、居宅ケアマネージャーの担当件数が40件では仕事が回らないこともあるでしょう。

そのような場合、ICT活用または事務職員の配置により、介護報酬を下げることなく担当件数を増やすことが可能です。

ICT活用または事務職員の配置とは、具体的には何をすれば良いのか、詳しく解説します。

①介護現場にICT(情報通信技術)を導入する

居宅ケアマネージャーの担当件数の上限を上げる方法のひとつが介護現場にICT(情報通信技術)を導入することです。具体的には、以下の取り組みがあげられます。

・介護ソフト・バックオフィスソフトなどのクラウド型ソフトウェアの導入
・タブレット端末・スマートフォンなど、PC以外の端末の導入
・医療介護情報共有システムの導入 など

介護現場へのICT導入を推進するために、地域医療介護総合確保基金による介護ソフトやタブレット端末の導入支援事業も実施されています。

ICTの導入はケアマネージャーの担当件数の上限を引き上げるだけでなく、介護職員の負担軽減や業務効率化などにも役立つものです。

たとえば、介護ソフトやバックオフィスソフトを導入すると、介護記録や申し送りなどの情報がデータ化されるため、情報共有がしやすくなります。

スマートフォンやタブレット端末などの持ち歩ける端末を導入すれば、業務の合間に介護記録をつけられるようになるので、介護記録の抜け漏れも防止できるでしょう。紙での記録とは異なり、保管場所を取らないというメリットもあります。

ケアマネージャーの担当件数の上限を上げる必要性を感じていなくても、ICT導入を検討する価値はあるでしょう。

②事務職員を雇用する

ケアマネージャーの負担軽減や業務効率化につながる事務職員の配置も、ケアマネージャーの担当件数アップに役立ちます。

事務員の勤務形態は、常勤でなくても問題ありません。ケアマネージャー1人あたり、常勤換算で1ヶ月24時間以上の勤務ができる事務職員を配置できれば、ケアマネージャーの担当件数の上限を引き上げられます。

また、必ずしもケアマネージャーと同じ介護事業所の内に配置しなくてはならないわけでもありません。同一法人内での配置でも条件を満たしたことになります。

まとめ

ケアマネージャーは、居宅ケアマネージャー・施設ケアマネージャーそれぞれで担当件数の上限が定められています。

居宅ケアマネージャーの場合、上限以上の担当分については基本報酬が減額されるため、上限人数内に抑えておくのが賢明です。

しかし、ICTを導入したり事務職員を配置したりすれば、担当件数の上限が上げられます。ICTの導入にあたっては、将来的なメリットや運用コストなども踏まえて検討してみると良いでしょう。