【2023年最新版】介護現場のBCP対策に活用できる補助金・助成金まとめ

BCPとは事業継続計画のことで、災害や事故などの緊急事態に備えるために作成するものです。BCP対策で必要なものをそろえるには費用がかかりますが、行政はBCP対策に活用できる補助金を用意しています。 補助金を活用することで、充実したBCP対策が可能となるでしょう。この記事では、介護事業者向けにBCP対策に活用できる補助金・助成金を紹介します。


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BCP対策とは?

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)のことです。BCP対策とは、災害や事故などの緊急事態が発生した場合に、事業を継続させるために取るべき対応のことを指します。

BCPでは、従業員の安全確保やシステムの復旧、物流・供給網の確保など、さまざまな観点から対策をとります。また、自然災害や事故などの緊急事態だけでなく、サイバー攻撃やテロなどのセキュリティ上のリスクにも対応することが大事です。

BCP対策に取り組むことで、災害や事故が発生した後、早期に事業を復旧・継続できるよう備えます。これによって売り上げの低下を防いだり、顧客や取引先からの信頼を失ったりする可能性が低くなります。

またBCP対策により、事業活動に潜む潜在的なリスクを把握し、事前に対策を講じてリスクを最小限に抑えられるのもメリットです。BCPマニュアルの策定は2024年度から介護業で義務化されるため、早い段階から作成しましょう。

なお、ここで紹介するものは2023年4月現在のデータを参考にしています。

BCPマニュアルの策定については、以下の記事でも詳しく解説しています。

BCPマニュアルとは?必要性や策定する際の手順・ポイントを解説

BCP対策で活用できる東京都の「BCP実践促進助成金」

東京都と東京都中小企業振興公社は、BCPの策定を後押しするために「BCP実践促進助成金」を設けています。BCPの実践に必要な設備・物品の購入を支援し、中小企業、団体のBCP実践を促進することを目的としています。

助成率 助成限度額
中小企業者等 1/2 1,500万円(下限額10万円)
小規模企業者 2/3以内 1,500万円(下限額10万円)

助成金の対象となる事業者

助成対象事業者は、東京都内で1年以上事業を営んでいる中小企業者や中小企業団体で、以下のいずれかの条件を満たした事業者です。

・公社が実施するBCP策定支援事業による支援
・中小企業庁「事業継続力強化計画」の認定

出典:「BCP実践促進助成金の概要」(東京都庁)

助成金の対象となる経費

助成金の対象となる経費には以下が挙げられます。

・自家発電装置、蓄電池、太陽光パネル
・安否確認システム、グループウェア
・感染症対策の物品(マスク、消毒液など)
・従業員用の備蓄品(非常用の食料・飲料、簡易トイレ)
・土嚢、止水板、制震・免震ラック、飛散防止フィルム
・耐震診断
・転倒防止装置
・データバックアップ専用のサーバ(NAS)、クラウドサービスによるデータのバックアップ
・BCPの補完として実施する自社業務の基幹システムのクラウド化
・衛生用品、医薬品、工具

ドキュメントの制作費や教育費、関連性のない消耗品、保険料などは助成対象外となるため注意しましょう。

申請方法

BCP実践促進助成金の申請の手順は以下のとおりです。

・BCP策定
・申請予約
・申請
・審査会
・交付決定
・事業実施
・完了報告
・完了検査
・助成金額確定
・助成金請求
・助成金支払い

上記の手順のうち、「審査会」「交付決定」「完了検査」「助成金額確定」「助成金支払い」は、行政側が行う手続きとなります。令和4年度の場合、申請スケジュールは以下のとおりでした。

予約受付期間 申請受付期間 交付決定日 助成対象期間
6月募集 令和4年6月16日~6月21日 令和4年6月24日~7月4日 令和4年9月上旬 交付決定日~令和5年1月
10月募集 令和4年9月26日~9月29日 令和4年10月3日~10月12日 令和4年12月上旬 交付決定日~令和5年4月
1月募集 令和4年12月20日~12月23日 令和5年1月11日~1月19日 令和5年3月上旬 交付決定日~令和5年7月

出典:「BCP実践促進助成金の概要」(東京都庁)

各自治体によるBCP対策の補助金・助成金

各自治体によってBCP対策の補助金や助成金の内容が異なります。ここでは、以下の3つの地方自治体からBCP対策の補助金・助成金を紹介します。

・東京都江戸川区
・静岡県焼津市
・新潟県長岡市

【東京都江戸川区】

助成対象 BCP(事業継続計画)の策定にかかる経費を助成

・助成金の申請を行った年度内に策定できる計画が対象

・策定前に助成金の申請書を提出し、交付決定を受けることが必要

 

助成対象者 ・中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条に規定する中小企業者

・江戸川区内に本社を有する区内事業所であること

・前年度の法人住民税及び法人事業税を完納していること。(個人事業者の場合は住民税及び個人事業税を完納し、開業届の写し、または直近の確定申告書の写しが必要)

・公序良俗に反せず、東京信用保証協会の保証対象業種であること

・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する風俗営業等を営む事業者でないこと

助成金額 助成対象経費の1/2以内(千円未満切り捨て)で、20万円が上限
助成対象経費 ・コンサルタントによる指導に要する費用(コンサルタントは、商業・法人登記をしている法人または開業届を提出している個人事業者に限る)

・内部研修の実施にかかる講師派遣等の費用

・外部研修の参加費用

申請方法 電話連絡の上、申請書類を受付窓口に提出。以下の申請書類をそろえる

 

・助成金交付申請書

・事業所概要

・事業計画書

・経費の明細書または見積書の写し(経費が発生する場合)

・前年度の法人住民税、法人事業税納税証明書(個人の場合は住民税納税証明書、個人事業税納税証明書)

・開業届の写し、または直近の確定申告書の写し(個人事業者の場合)

出典:「事業継続計画(BCP)の策定にかかる助成金」(東京都江戸川区)

【静岡県焼津市】

補助対象 ・BCP策定の啓発を目的としたセミナー、勉強会等を開催する事業

・BCP策定に当たり専門家から指導及び助言を受ける事業

・BCP策定をフォローアップする事業

補助対象者 ・中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者、中小企業等協同組合法第3条に規定する中小企業等協同組合または水産業協同組合法第2条に規定する水産業協同組合

・主たる事業所または事務所が市内にあること

・市税を完納または徴収猶予を受けていること

補助金額 補助率は補助対象経費の4/5以内の額。補助上限は8万円
補助対象経費 補助対象事業に要する経費のうち、講師謝金、講師旅費に要する費用
申請方法 公式HPから申請書様式をダウンロードし、事業開始日または令和5年3月1日のいずれか早い日までに提出(郵送の場合は必着)。先着順で受け付けし、募集枠に達した時点で終了

出典:「BCP策定支援事業補助金について」(静岡県焼津市)

【新潟県長岡市】

補助対象 BCPや事業承継に関する取り組みのみが対象。通常の試算表等作成費用やその他給付金等の申請代行に伴う代行費用などは対象外
補助対象者 市内に主たる事業所を有し、申請時に同一事業を1年以上営む中小企業者。

・長岡市がんばる地域企業基本条例(令和2年4月1日制定)に掲げる地域企業である会社または個人。ただし、資本金等または役員構成において大企業と一定基準の関係にある中小企業は含まない。また長岡市事業継続・事業承継計画策定推進補助金交付要綱に定める業種(農林漁業、金融・保険業の一部、宗教法人など)も補助対象外

補助金額 補助率1/2、上限額が30万円(BCP型)
補助対象経費 ・税理士や金融機関等の支援機関への業務委託料等

・BCP等策定に関する研修の受講料、または研修を実施する際の講師謝金等

・その他の補助対象事業に関連する経費

申請方法 以下の必要書類を令和5年4月1日から令和6年1月31日までに産業支援課へ申請

・補助金交付申請書と会社案内、パンフレット等(自社の事業がわかるもの)を用意する

出典:「BCP・事業承継・経営改善補助金(事業継続・事業承継計画策定推進補助金)」(新潟県長岡市)

BCPに関連する補助金・助成金

ここでは、BCPに関連する補助金・助成金について解説します。

IT導入補助金

IT導入補助金制度とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に活用できる補助金のことです。IT導入補助金制度には、通常枠(A類型・B類型)、デジタル化基盤導入枠、セキュリティ対策推進枠の3つがあります。

実施主体は一般社団法人サービスデザイン推進協議会で、経済産業省と中小企業基盤整備機構が同協議会を監督しています。

通常枠
種類 A類型 B類型
補助額 5万~150万円未満 150万~450万円以下
補助率 1/2以内
補助対象 ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費

 

種類 セキュリティ対策推進枠
補助額 5万円~100万円
補助率 1/2以内
補助対象 サービス利用料(最大2年分)

 

種類 デジタル化基盤導入類型
補助額 (下限なし)~350万円
補助率 3/4以内あるいは2/3以内(機能要件に応じて異なる)
補助対象 ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費

出典:「IT導入補助金について」(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)

テレワーク促進助成金

テレワーク促進助成金は、テレワークを行うために必要な機材やツールなどを支援する助成金制度で、東京しごと財団が管轄しています。

補助額/補助率 ・事業所の規模が30人以上999人以下の場合、助成金の上限が250万円、助成率が1/2

・事業所の規模が2人以上30人未満の場合、助成金の上限が150万円、助成率が2/3

補助対象 ・常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等

・都が実施するテレワーク東京ルール実践企業宣言制度に登録し、「テレワーク推進リーダー設置」表示のある宣言書がWebサイト上で発行されていること(実績報告時まで)

申請方法(2023年分は同年4月現在、募集されていない) ・一般コースは郵送、電子申請(Jグランツ)

・非正規社員拡充コースは郵送のみ

出典:「テレワーク促進助成金(令和4年度)」(公益財団法人 東京しごと財団)

まとめ

BCPは災害や事故などの緊急事態が発生した場合に、事業を継続させるために取るべき対策のことです。各地方自治体はBCPを後押しする補助金制度を用意しています。BCP対策を充実させるために、BCPの補助金制度を活用してみてください。