通所介護(デイサービス)の送迎減算とは?注意点を解説

通所介護の個別サービス計画で、送迎を決めているにもかかわらず送迎を行わなかった場合、送迎減算が適用されます。本記事では、通所介護の経営を検討している介護事業者向けに、送迎減算の概要と注意点を解説していきます。


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通所介護における送迎減算とは

通所介護における送迎減算とは、事業者が送迎を行わなかった場合に介護報酬の減算を行うものです。

通所介護では、送迎の有無を個別サービス計画に位置付けることとされています。片道もしくは往復で送迎する計画に記載されているにもかかわらず、送迎を行わなかった場合に当該減算が適用されます。では、通所介護における送迎減算の要件と単位数を見ていきましょう。

送迎減算の要件

通所介護の送迎減算は、事業所の従業員が利用者に対して居宅と通所介護事業所の間の送迎を行わない場合、片道につき適用されます。すなわち以下の場合も減算の対象となります。

・利用者自身が通う
・利用者の家族が送迎を行う
・通所介護以外の事業者が送迎を行う(訪問介護の通院等乗降介助など)

出典:「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(厚生労働省)
出典:「08留意事項通知-訪問通所」(厚生労働省)

送迎減算の単位数

通所介護における送迎減算の単位数は、片道につき-47単位、往復で-94単位です。これらの単位数に、地域区分ごとに定められた1単位の単価をかけて算出した値が送迎減算の金額です。

地域区分とは、地域によって異なる人件費の差を調整するため、1単位の単価を市町村ごとに区分けしたものです。たとえば地域区分で2級地とされている地域では、1単位の単価は10.72円と定められています。これに単位数をかけると、送迎減算の金額は片道で約504円、往復で約1,008円となります。

出典:「地域区分について」(厚生労働省)
出典:「介護給付費単位数等サービスコード表Ⅰ-資料2②」(WAM NET)

通所介護における送迎減算の注意点

送迎減算にはいくつか注意すべきポイントがあります。

・誰が送迎したかによって算定の可否が決まる
・送迎減算以外の減算や、ほかのサービス加算との兼ね合いにより算定の可否が決まる

上記について解説していきます。

事業所の従業員が送迎を実施していない場合に送迎減算の対象となる

事業所の従業員が送迎しているのか、していないかがポイントです。「利用者が自ら通う」「家族が送迎する」などの場合、事業所の従業員は送迎しておらず、減算の対象となります。

出典:「08留意事項通知-訪問通所」(厚生労働省)

同一建物等減算が適用される場合は送迎減算の対象にならない

同一建物等減算とは「事業所と同一建物に居住する者」または「事業所と同一建物から事業所に通う者(利用者)」にサービスを提供した場合、介護報酬を減算することです。

同一建物とは「同じ建物内の別のフロア」や「渡り廊下でつながっている建物」を指します。したがって「同一敷地内でも棟が別」である場合、「隣接していても道路を挟んでいる」場合などは同一建物とはみなされません。

同一建物等減算は、送迎減算の往復分と同じ単位数です。すなわち、94単位が同一建物等減算の単位数となります。なお、同一建物等減算と送迎減算は同時に適用されることはありません。同一建物内から通う場合、適用されるのは同一建物等減算のみです。

出典:「08留意事項通知-訪問通所」(厚生労働省)

通院等乗降介助も減算の対象となる

令和3年の介護報酬改定により、訪問介護における通院等乗降介助の見直しがありました。利用者の居宅が始点または終点となる場合は、目的地が複数あっても通院等乗降介助を算定できることになったのです。

これにより、通所介護利用中に体調を崩して通院する場合には、帰宅せずとも事業所から病院へ直接移送が可能になりました。一方で、居宅から通所介護事業所に送迎しているものの、病院への送迎は訪問看護事業者が行っているため、片道分は減算の対象となることに注意が必要です。

出典:「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(厚生労働省)

通所介護における送迎減算のよくある質問

送迎減算に関する注意点を知っていただいたところで、よくある質問を5つのケース別にご紹介します。

利用者を徒歩で送迎した場合は?

徒歩で送迎した場合は、送迎減算は適用となりません。車両で送迎しなければならない決まりはないからです。ポイントは「送迎を実施したかどうか」です。

このケースでは、徒歩での送迎に「車両を使用していない」というだけで、実際に送迎した実態はあります。したがって、送迎減算は適用されません。

出典:「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」(厚生労働省)

送迎の予定があったが結果的に送迎しなかった場合は?

送迎減算は適用されます。送迎は、個別サービス計画に往復か片道かを位置づけたうえで、事業所の従業員が行う必要があるからです。

たとえば個別サービス計画上、往復の送迎が位置づけられており、利用者の居宅まで車で迎えに行ったとします。しかし、利用者の体調不良や家族の都合などで結果的に家族が利用者を送迎した場合などは、事業所の従業員が送迎したことにはなりません。したがって、送迎減算の対象になります。

出典:「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」(厚生労働省)

別の事業所の従業員が送迎をした場合は?

送迎減算が適用されます。利用する通所介護事業所の従業者が送迎を行う必要があるからです。たとえば以下の場合を見てみましょう。

1)通所介護事業所Aに通う利用者の送迎を訪問介護員等が行った場合
2)通所介護事業所Aに通う利用者の送迎を通所介護事業所Bの従業者が行った場合

いずれの場合も、通所介護事業所Aの従業者は送迎していないため、送迎減算が適用されます。注意点として、事業所Bの従業者が事業所Aと雇用契約を結んでいる場合は、事業所Aの従業者とみなされます。したがって、事業所Bの従業者が送迎しても送迎減算は適用にはなりません。

出典:「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」(厚生労働省)

委託事業者が利用者の送迎を行った場合は?

送迎減算の適用とはなりません。送迎業務は「利用者の処遇に直接影響を及ぼさない業務」と位置づけられており、第三者へ委託が可能です。したがって、受託した第三者が送迎を行っても送迎減算の適用にはなりません。

出典:「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)」(厚生労働省)

通所介護事業所が提供する宿泊サービスを利用する場合は?

通所介護事業所の従業者が送迎を行っているかどうかで送迎減算の適用可否が決まります。宿泊サービスの利用有無は関係ありません。以下4つのケースを見てみましょう。

1)宿泊サービスを利用し、従業者が送迎を行った場合:送迎減算は適用されない
2)宿泊サービスを利用せず、従業者が送迎を行った場合:送迎減算は適用されない
3)宿泊サービスを利用し、従業者が送迎を行わなかった場合:送迎減算は適用される
4)宿泊サービスを利用せず、従業者が送迎を行わなかった場合:送迎減算は適用される

このように、宿泊サービスの利用有無にかかわらず送迎実績から適用の可否を判断します。そのため、徒歩で利用者の送迎を行った場合も送迎減算は適用されません。

出典:「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」(厚生労働省)

そのほか通所介護における減算一覧

通所介護には、ほかにも介護報酬上の減算があります。先述した送迎減算と同一建物等減算を含めた各減算を紹介します。以下で単位数と要件を見てみましょう。

<通所介護における減算一覧>

減算の名称 単位数 要件
定員超過利用減算 基本報酬の70%を算定 事業所で定めた一ヶ月の利用者数をサービス提供日数で割り、算出した人数が

一日の利用定員を超えた場合に減算となる

人員基準欠如減算 基本報酬の70%を算定 看護職員または介護職員の配置数が人員基準に満たない場合に減算となる
共生型通所介護における減算 基本報酬の90~95%を算定 障害福祉サービスの指定を受けている事業所が共生型通所介護を提供した場合に減算となる(介護保険の指定を受けていても、介護保険の基準を満たしているわけではないため)
同一建物等減算 1日につき94単位を減算 「通所介護事業所と同一建物に居住する者」または「事業所と同一建物から事業所に通う利用者」に通所介護を提供した場合に減算となる
送迎減算 片道につき47単位を減算(往復は94単位を減算) 通所介護事業者が個別サービス計画に送迎を位置づけているにもかかわらず、行わなかった場合に減算となる

まとめ

居宅と通所介護事業所間の移動にはさまざまな方法があります。徒歩や家族による送迎など、どのような場合に送迎減算が適用となるのか判断に迷うこともあるでしょう。その場合は、通所介護の従業員が送迎をしているかどうかを基本に考えます。

減算は、各サービスが定めている運営基準や人員基準等を満たしていない場合に算定するものです。要件を確実に把握し、適正に算定していきましょう。