ケアプランデータ連携システムの導入方法・使用方法を徹底解説

居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間で行われるケアプランのやり取りをオンラインで効率化すべく、厚生労働省では、2023年4月から「ケアプランデータ連携システム」の本格稼働を予定しています。ケアプランデータ連携システムの導入によって、介護事業所ではどのような変化があるのでしょうか。 今回は、システム導入によるメリットや導入手順について解説します。


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ケアプランデータ連携システムとは

居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間では、毎月ケアプランの一部情報がやり取りされています。

ケアプランデータ連携システムは、厚生労働省が進める事業のひとつで、毎月やり取りが必要なケアプランの一部情報をデータで送受信できるシステムです。

介護事業者の負担軽減の取り組みの一環として行われるもので、2023年2月~3月にかけて自治体を限定したパイロット運用が実施され、2023年4月から本格稼働が予定されています。

連携できるデータの範囲は次のとおりです。

・居住サービス計画書(第1表・第2表)
・サービス提供票(第6表)
・サービス提供票別表(第7表)

システムを利用するためには、事業所が年ごとにライセンスを購入する必要があり、料金は1事業所あたり年間21,000円(税込み)となります。電子請求証明書と同じように、国保連合会に請求する介護給付費から差し引く形で支払うことも可能です。

また、令和5年度ICT導入支援事業により、システムを利用することで補助が受けられるため、導入を検討している事業所はチェックしておきましょう。

ケアプランデータ連携システムの導入で得られるメリット

ケアプランデータ連携システムを導入することで、介護事業者にはどのような変化があるのでしょうか。導入のメリットを5つ紹介します。

転記作業の工数が削減できる

従来のように、郵送により紙面でケアプランデータを受け取ったり、FAXにより受け取ったりする場合、手入力により転記する作業が必要でした。

ケアプランデータ連携システムを導入すれば、データを取り込むだけでデータの管理ができるようになるため、転記作業分の工数を削減できます。

書類のやりとりにかかる時間が短縮できる

ケアプランをやり取りにするにあたり、事業所に訪問する、もしくは書類を郵送やFAX、メールで送付しなければなりませんでした。

ケアプランデータ連携システムであればシステム上からデータを送付するだけで済むため、書類の準備や送付にかかる時間、仕訳にかかる時間が短縮できます。

誤入力・誤送信を防げる

ケアプランデータ連携システムを導入すれば、前述のように手入力による転記の作業をなくせます。受信したデータをそのまま保管できることから、誤入力といった転記ミスを防ぐことが可能です。

また、ケアプランデータ連携システムなら、データのあて先を帳票データから自動設定できます。メールやFAXのように誤送信が起こりにくいため、情報漏洩のリスクも軽減できるでしょう。

人件費や印刷費などのコストを削減できる

システム導入による業務効率化により、あらゆるコストの削減が期待できます。ケアプランを訪問により手渡ししている場合は交通費、郵送の場合は郵送費や印刷費、FAX送信の場合は通信費や印刷費の削減になるでしょう。

また、システムを利用した送受信により担当者の業務負担の軽減も見込めますので、人件費の削減にもなります。

厚生労働省の試算によると、年間のコストカット効果は約81万円(人件費を考慮しない場合は7万円)です。コストカットの実現により、設備投資の強化や人材定着のための施策などの重要な部分にコストを割り振ることができます。

参考:「ケアプランデータ連携システム」の概要等の周知について(情報提供(Ver.2))|(厚生労働省 老健局高齢者支援課)

実績や請求などの管理が楽になる

システム上でデータの送受信ができるようになれば、紙で保管する必要がなくなります。必要なデータをシステム上でまとめて管理できるため、書類を探す手間もなくせるでしょう。

また、データでの保管となるため、保管のための物理的なスペースも必要なくなります。データ管理業務の効率化もシステム導入によって実現できるでしょう。

ケアプランデータ連携システムの導入方法

介護事業者の負担軽減のために国主導で進められているケアプランデータ連携システムの利用ですが、その導入は各事業者の判断に委ねられています。

システムを導入したい場合、どのような環境や手続きが必要になるのでしょうか。ケアプランデータ連携システム導入の流れを4ステップに分けて説明します。

1.PCや介護ソフトを用意する

ケアプランデータ連携システムを利用するためには、PCや介護ソフトの準備が必要です。

まず、PCはWindows10以降のもので、インターネットに接続しているものを用意しましょう。

データの記入や確認に欠かせない介護ソフトは、厚生労働省のケアプラン標準仕様対応のものを使います。利用している介護ソフト、あるいはこれから導入する介護ソフトの対応の有無を確認しておきましょう。

なお、ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業者間のやり取りを想定したもののため、一方のみ環境が整っていてもデータのやり取りはできません。
介護支援専門員(ケアマネージャー)と介護サービス事業所の双方で導入が必要なため、連携先の対応についても事前に確認しておきましょう。

なかには、周囲の事業所がケアプランデータ連携システムを導入していないとかえって手間がかかってしまうため、システム導入に向けて様子見している事業所もいます。
そのあたりも踏まえて、慎重にケアプランデータ連携システムを導入すべきかも、検討していく必要があります。

2.利用申請を行う

ケアプランデータ連携システムを利用するためには利用申請が必要です。ケアプランデータ連携システムのWebサイトから利用申請の手続きを行います。

3.クライアントソフトをダウンロードする

申請が通ったら、公益社団法人国民健康保険中央会のWebサイトにアクセスします。そこからクライアントソフトをダウンロードし、準備した事業所PCへのインストールが必要です。

なお、クライアントソフトは原則、1つの事業所につき1台のPCにインストールすることになります。

4.電子証明書の確認を行う

次に電子証明書の確認を行います。まずは、電子請求受付システムの利用有無を確認しておきましょう。

介護報酬の電子請求受付システムを利用している場合は、電子証明書の発行は必要ありません。同じ電子証明書を使用してシステムを利用できます。

一方、介護給付費の請求業務を外部委託しているなどの理由で、電子請求受付システムを利用していない場合は、電子請求受付システムのWebサイトにアクセスし、利用申請します。申請手続きが通ったら、電子証明書をダウンロードして利用できるようにしましょう。

以上の手続きを行うことで、ケアプランデータ連携システムを利用できるようになります。

ケアプランデータ連携システムの使用方法

ケアプランデータ連携システムの導入によって、ケアプランの予定と実績のデータを送受信できるようになります。どのようにして連携していくのか、予定データの場合と実績データの場合とに分けて見ていきましょう。

ケアプランデータ(予定)の連携方法

ケアプランデータ(予定)は、居宅介護支援事業所のケアマネージャーが作成するデータです。ケアマネージャーは介護ソフトでデータを作成してCSVファイルで保存し、クライアントソフトにデータをアップロードします。

アップロードされたデータに自動で電子証明書が付与され、ケアプランデータ連携基盤より送信が行われる流れです。

ケアプランデータ連携基盤より暗号化され送信されたデータは、介護サービス事業者に送信されます。介護サービス事業者はクライアントソフトから最新情報を確認して、ケアプランデータの受信を行いましょう。

受信したケアプランデータ(予定)をダウンロードして介護ソフトに取り込み内容を確認します。

ケアプランデータ(実績)の連携方法

ケアプランデータ(実績)の流れも、基本的には予定データ送受信の流れと同じです。実績の場合は、介護事業者が介護ソフトを使用して実績データを作成し、送信します。

介護事業者はケアプランに基づく実績データを作成したらCSVで保存し、クライアントソフトにアップロードしてデータの送信を行いましょう。

ケアマネージャーは、クライアントソフトからデータを受信してダウンロードを行い、介護ソフトに取り込んで内容を確認します。

まとめ

ケアプランデータ連携システムが本格稼働することで、ケアマネージャーと介護事業者間のケアプランのやり取りがスムーズになります。とはいえ、周囲の事業所でシステム導入が進んでいないとかえって手間がかかるおそれがあります。システムを導入する際は、周りの事業所もシステムの整備が整っているかどうか、状況を踏まえたうえで準備をしていきましょう。