ケアマネジャーの役割とは?ケアマネが抱える業務や負担を解消する方法

居宅介護支援事業所を運営するにあたり、ケアマネジャーは重要な役割を担います。ケアマネジャーは、利用者一人ひとりに最適なケアプランを作成し、さまざまな福祉サービスや医療機関との連携を図るなど、支援の中心となる存在です。 しかし、近年は業務負担の課題が浮き彫りになり、今後のケアマネジメントの在り方についての検討が求められています。 今回は、ケアマネジャーの役割を改めて確認し、ケアマネジャーに関する課題や業務負担を解消するための方法についても解説します。利用者により良い支援を提供し、事業所運営を成功させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。


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ケアマネジャーの主な役割

法令上の規定によると、ケアマネジャー(介護支援専門員)の業務の在り方について下記のように明記されています。

法令上、「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な介護サービス等を利用できるよう市町村、介護サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとされている(介護保険法第7条第5項)。さらに、担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、提供される介護サービス等が特定の種類や特定の事業者等に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないとされている(介護保険法第69条の34第1項)。

つまり、ケアマネジャーの主な役割は、高齢者や介護が必要な方が適切な介護サービスを受けられるようにその家族と連携し支援すること、また、その家族の介護負担軽減に向けた支援をすることです。

具体的には、利用者の身体状況や生活環境、希望を把握し、それに基づいたケアプラン(介護サービス計画)を作成します。ケアプランは利用者が望む生活を実現するための目標や必要なサービス内容を明確にするもので、利用者やその家族と話し合いながら作成します。

また、訪問介護やデイサービス、福祉用具貸与などのサービスを円滑に受けられるようにサービス事業者と調整を行う業務もケアマネジャーの仕事のひとつです。さらに、計画通りにサービスが提供されているかを定期的に確認し、利用者の状態が変化した場合にはケアプランを見直して柔軟に対応します。

ほかにも、利用者やその家族からの相談・アドバイス、医療機関との連携、要介護認定調査など、業務内容は多岐にわたります。

引用:厚生労働省「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会中間整理 素案(たたき台)

居宅介護支援のケアマネジャーが抱える業務範囲と課題

利用者の在宅生活を支える上で、ケアマネジャーは不可欠な存在です。しかし、介護業界では、ケアマネジャーの在り方が大きな課題となっており、その役割や業務内容についてさまざまな問題が指摘されています。

以下は、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」において、ケアマネジャーが業務過多に陥っている現状と課題を踏まえて、この度整理された表です。

業務項目 主な事例 対応例
法定業務 ケアプラン作成、モニタリング、サービス調整 利用者のニーズに基づいてケアプランを作成し、定期的に訪問・評価をし、サービスの提供状況を確認する。
要介護認定申請代行、介護保険に関する相談 必要書類を用意し、役所への申請手続きを支援。介護保険の利用方法や内容を説明する。
保険外サービスで対応しうる業務 郵便物の発送・受取、書類作成、代筆・代読、救急搬送の同乗など 介護保険外のサービスとしてケアマネジャーが対応。あるいは、民間サービス事業者を紹介。
他機関につなぐべき業務 外出や買い物など日常生活支援 介護保険外のサービスとして地域のボランティア団体や民間サービス事業者を紹介。
福祉サービスの利用や利用支払いの手続き、預貯金の引き出し・振込、財産管理 市町村や地域包括支援センター、社会福祉協議会と連携。(成年後見制度や日常生活自立支援事業の利用へつなげる。)
入院・入所中の着替えや必需品の調達 病院や施設と連携し、社会福祉協議会や知人の協力を仰ぐ。
徘徊時の捜索 利用者の家族や友人などに捜索への協力を仰ぎ、その後の対応は警察等へつなぐ。
死後事務 高齢者終身サポート事業者等を紹介。
対応困難な業務 医療同意

 

参考:厚生労働省「令和6年12月12日ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会

ケアマネジャーは利用者や家族から「介護」に関わる幅広い相談や依頼を受ける立場にあります。そのため、上記のように法定業務にとどまらず、介護保険外のサービスへの対応を求められるケースが少なくありません。

このような業務が増加することで、ケアマネジャーの負担が大きくなります。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーが抱える業務負担を解消する方法

先述した通り、ケアマネジャーは本来業務以外の、いわゆるシャドーワークも抱えていることで、業務負荷が増えている現状にあります。

今後、個々の利用者に適切なケアマネジメントを提供していくためにも、ケアマネジャーの業務負荷を軽減する必要があります。

例えば、ケアプランデータ連携システムやテクノロジーを活用することで、業務負担の軽減が見込めます。

また、一部の業務を市町村や民間の事業者などに依頼することもひとつの手です。

買い物やゴミ出しの支援はNPOやボランティア団体に任せ、福祉サービスや財産管理は、市町村や地域包括支援センター、社会福祉協議会に協力を要請します。そのほか、死後事務は、高齢者終身サポート事業者に依頼することが可能です。

まとめ

ケアマネジャーの役割は、高齢者や介護が必要な方、そのご家族が適切な介護サービスを受けられるように支援することです。しかし、居宅介護支援のケアマネジャーは、法定業務以外の業務負担が大きい点や、人手不足などによる課題を抱えています。

居宅介護支援事業所の運営を成功させるために、ケアマネジャーの役割や課題を理解し、適切な対策を講じましょう。


この記事の監修者

斉藤 正行

1978年に奈良県生駒市で生まれる。
2000年3月に立命館大学卒業後、コンサルティング会社に入社し飲食業のコンサルティング、事業再生等を手がける。
その後、介護業界に転身し、老人ホーム会社の取締役運営事業本部長、デイサービス会社の取締役副社長を経て、2013年8月に 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。
2018年6月に法人種別・サービス種別の垣根を超えた介護事業者の横断的組織である一般社団法人全国介護事業者連盟の 設立に参画、2020年6月に理事長に就任。
そのほか介護団体・法人の要職等を兼任し、介護業界の発展に心血を注いでいる。


この記事の監修者

清水 勇希

弁護士/株式会社あかり保証 代表取締役
1995年京都府宇治市生まれ。立命館大学法学部を首席で卒業後、司法試験に合格。北浜法律事務所を経て、2022年10月にリット法律事務所を開設。弁護士として、介護法務、医療法務、不動産法務等に注力。2024年7月、「身元保証業界を変えたい」「身寄りのない高齢者の方に、信頼かつ安心のあるサービスを提供し、一番頼りになる存在となりたい」と思い、株式会社あかり保証を創業。代表取締役に就任。
若くして数々の資格を取得し、弁護士として活躍する傍ら、株式会社エアトリの社外監査役、医誠会国際総合病院の倫理審査委員会外部委員など、多岐にわたる分野でその手腕を発揮している。